新規定に基づき開発されたLMDhマシンがGTPクラスにデビューを果たした2023年IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦デイトナ24時間レース。4メーカーによって争われた新時代開幕戦を制したメイヤー・シャンク・レーシングのオーナー、マイク・シャンクは、レースのほぼ4分の3にわたって続いていたギヤボックスの温度の問題があったにも関わらず、60号車アキュラARX-06を完走させることができたのは「ものすごくラッキーだった」と振り返った。
1月28〜29日にかけてデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで行われたこのレースでは、トム・ブロンクビスト/コリン・ブラウン/エリオ・カストロネベス/シモン・パジェノーがドライブする60号車アキュラは、いくつかのドラマを乗り越えながら、新生GTP時代の初優勝を手にした。
「このようなことが起こる確率は、5%か10%くらいだろう」とレース後にシャンクは語った。
「これはとても大きな仕事で、チームの全部門から200人が参加して実現したことなんだ」
「すべてがうまくいき、レースに勝ち、ウェイン・テイラー(レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポート)とともにワン・ツー・フィニッシュを決めるなんて……本当にすごいことだ」
「ものすごいストレスだったよ。我々のマシンは一晩中ギアボックスに問題があり、直せなかったんだ。我々は、それがブローするまで走らせることにしたんだ。でも、ブローはしなかった。ものすごくラッキーだった」
シャンクによると、ギヤボックスの温度上昇は200周目ごろから「深刻な」問題となり、その結果、ピット作業を延長して、リヤデッキとエンジンカバーを外し、フルードを追加したのだという。
「本当に深刻だったんだ。私の隣に座って温度をモニターしているスタッフが持ってきた温度計測テープには『90℃』と表示してあり、我々はそれを見るのを止めたんだ」
「ダメならそれまでだ。ただ、そうはならなかった。ギヤボックスとフルードの量をなんとか保ち、文字どおりレース中ずっと直そうとしていたんだ」
カストロネベスは、チームがドライバーたちにその深刻さを伝えていなかったため、レースの大半はこの問題に気づいていなかったという。
「ピットでタイムロスしていることを聞かされ、ギヤボックスがどうのこうのと言われるまで知らなかったんだ」とカストロネベス。
「答えを知りたくなかったし、運転しているときに頭の中に何かを入れたくなかったから、チームには聞かなかった」
「チームがやってくれたことは完璧だった。車内では何も感じなかったよ」
ブロンクビストも「幸運にも、コース上で走行しているときに影響が出るようなことはなかったんだ」と付け加える。
「その点は良かったんだ。でも、終盤にはバッテリーの問題もあって、ピットでマシンを止めることができなかったから、エンジンをかけ続けなければならなかった。それが少しストレスになったね」
「HPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)がやってきたことだ。これが最初のレースなんだ。同じレギュレーションになり、全員が同じ目標に到達しなければならなかった。同じパワー、同じウエイトで走るなか、僕らは最高の仕事をした」
「このプロジェクトに参加したすべての人に脱帽するよ」
■新・再生可能燃料に関する問題にも的確に対処
さらに、2台のアキュラ、そして他のGTPクラスのライバルたちは、エンジンオイルへと希釈する再生可能燃料を80%ブレンドしたVPレーシングの新燃料の導入により、オイル・フラッシュ(交換)を行う必要があった。
「レース中にエンジンオイルを交換したんだ」とシャンクは説明した。
「それは、それほど悪くない作業だった。 我々はレース中ずっとそれに対処することができたし、それを行う時間もあった」
HPD社長のデビッド・ソルターズは、11月下旬からこのオイルの状況を把握しており、その管理を支援するための人員を派遣したと説明した。
「このクルマには、本当に素晴らしい再生可能燃料が使われている。それにはさまざまな特徴があり、我々がいま学んでいることのひとつは、燃料のオイル希釈が起こるということなんだ」
「これは新しいもので、これまで誰も試したことがないものだから、何とかしなければならない」
「トレーラーにはエンジンの開発責任者がいて、彼はこの件を注視しているんだ。また、特別にこれをモニターするための機器も用意して、混乱しないようにしている」
「どうやら、我々は失敗しなかったようだ。ピット作業でいくつかトラブルがあり、いつもは簡単に(オイルを)充填できるところがそう簡単にはいかなかったが、それがレースというものだ」
「新しい技術的なチャレンジがあり、それに対応しなければならなかったということだ」
シャンクも「問題があることは分かっていたが、我々のマシンは本当に速かったし、10号車(WTR)もそうだった」と付け加えた。
「最後の1時間で何かを成し遂げたかったが、ちょっとした(バッテリーの)問題があったし、我々のクルマにとっては本当に難しいレースだったよ」
「レースを見ていれば、おそらく我々が誰よりもピットレーンにいたことが分かるだろう」
「我々は賢明な方法で、それを行った。我々は戦略を理解していたし、いつカウルを外してどんな作業をすれば(ポジションをロスせず)コースに戻ることができるかを知っていた。だから、ここまでのすべての努力をムダにせずに済んだのだ」