大雪による立ち往生。できれば遭遇したくない事態だが、日本の道路では毎年のように発生している災害でもある。もし車内に閉じ込められたらどうするか。JAFが行った実験も踏まえ、命を繋ぐために忘れちゃならないことを解説しよう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/JAF、Adobestock(トビラ写真=sgonin@Adobestock)
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■エンジンをかけっぱなしにするなら寝てはいけない
大雪で立ち往生してしまい、数時間は車内で過ごさなければならない。そんなときの大敵は二つ。ひとつは一酸化炭素中毒、もうひとつは寒さだ。
「毛布や防寒グッズがないためクルマのエンジンは切れない」。そんなときは一酸化炭素中毒を心配する必要がある。EVならば心配はないが、内燃機関自動車でエンジンをかけっぱなしにすると、周囲の雪でマフラーが目詰まりを起こし、排気ガスが車内に還流することがあるためだ。
過去にJAFが行ったテストでは、マフラーが目詰まりを起こすと1時間もしないうちに一酸化炭素濃度が300ppmに達する。それに反比例して酸素濃度は低下し、30分程度で13%台にまで落ちた(通常は21%程度)。意識が朦朧としてチアノーゼを起こすレベルだという。
これを防ぐにはどうするか。定期的に窓を開けて換気を行い、もし外に出られるならばマフラーやドア(脱出路確保のため)周辺の雪掻きをする必要がある。いずれにしろ、エンジンをかけっぱなしにするならぐっすり眠ってしまってはいけない。スマホのタイマーをかけて、30分おきに大音量が鳴るようにセットしたり、冬キャンプの必需品である一酸化炭素チェッカーを携行するなど、対策を考えよう。
ちなみにエンジンをアイドリングさせていると、1時間に0.8~1リットル程度のガソリンを消費するという。燃料計を見てガス欠の恐れがあるなら、20分間エンジンをかけて40分間は切るといったケチケチ策も考えよう。
■毛布とカイロがあれば氷点下でもなんとかなる
幸運にも寝袋や毛布などがあるという場合は、上記の一酸化炭素中毒を避けるためにエンジンを切ることを考えたい。防寒グッズの種類によって、エンジンを切った車内でどのくらい耐えられることができるのか? これについてもJAFが実験を行っている。
JAFでは「A:ダウンジャケット+ジーンズのみ」「B:A+毛布+使い捨てカイロ」「C: A+冬用寝袋」「D: A+エマージェンシーシート(アルミ箔でできた緊急保温具)」という4つのパターンで実験を行った。2月の長野県菅平で車内温度を25℃に設定したトヨタ ヴェルファイヤを用意し、スタートと同時にエンジンを切って被験者の様子を観察した。
深夜11時、外気温-10.2℃で実験スタート。車内温度はみるみる下がり、2時間45分後には1.8℃を記録した。ここでAのダウンジャケット+ジーンズが寒さに耐えられず脱落。実験開始後30分ですでに相当寒かったというが、最後は足先の感覚がなくなってきたという。
実験開始後4時間が経つと、車内温度は-1.4℃まで低下したが(外気温-11.1℃)、5時間半が経過したところで、Dのエマージェンシーシートが脱落した。最初は暖かかったがシートが全身を覆えないため顔や足先が冷えてしまったという。アルミに通気性がないため汗をかくことも、冷えに繋がったようだ。
外気温は朝6時45分に-13.2℃まで下がったが(車内の最低温度は-7℃)、残る「B:毛布+使い捨てカイロ」と「C:冬用寝袋」は夜を明かすことができた。とはいえ快適だったわけではない。Bの被験者はカイロの存在に助けられたが、カイロが貼れない足先や鼻は寒かったという。一方Cは実験開始直後こそ余裕を感じたが、4時間が経過したあたりからは寒かったという。こちらも寝袋で覆えない顔の寒さを訴えていた。
被験者の体質などにもよるので断定はできないが、毛布に使い捨てカイロ、寝袋などがあれば、車内が氷点下になってもなんとかやり過ごせることは分かった。逆にダウンジャケットとジーンズのみでは3時間すら厳しいため、クルマのエンジンはかけざるを得ないだろう。
いかがだろうか。クルマの立ち往生は遭遇しないことが一番だが、万一の際は除雪道具や防寒グッズが生死を分ける。雪国ドライブを予定している人は、頭の隅に入れておこう。
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