新たな技術規則が導入され、前年までとはまったく異なるマシンが誕生した2022年シーズンのF1。マシンの特徴やシーズン中のアップデート、ドライバーのパフォーマンスなどから、各チームの戦力を振り返る。第2回となる今回は、コンストラクターズ選手権4位のアルピーヌ、5位のマクラーレンだ。
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2022年、レッドブル、フェラーリ、メルセデスのトップ3の直後で激しくコンストラクターズ選手権4位の座を巡る戦いを演じたのが、アルピーヌとマクラーレンだ。
シーズン序盤、好調だったのはアルピーヌだった。結果には現れなかったが、第2戦サウジアラビアGPと第3戦オーストラリアGPでフェルナンド・アロンソは予選でメルセデスをしのぐスピードを見せていた。
アルピーヌの好調なパフォーマンスを支えていたのが、序盤戦で投入した空力のアップデートだった。レギュレーションが大きく変更された2022年は、空力に関してさまざまなアプローチがとられた。その結果、フロントウイング、ノーズ、サイドポッドはチームによってすべて異なるなかでシーズンが開幕。
そんななかで、アルピーヌが目をつけたのは、テストから好調だったフェラーリのサイドポッドだった。2022年のレギュレーション変更で2021年と最も大きく違うのは、もちろんディフューザーだが、じつはサイドポッド周りも大きく変化していた。2021年までは許されていたサイドポンツーン入口脇に取り付けられていたポッドウイングが2022年は禁止されたからだ。
現在のF1マシンの空力で重要なのは、前方から流れてくる空気をいかに整流して後方に送るかだ。2021年まではポッドウイングが大きな役割を果たしていたが、2022年からはサイドポンツーンがそれに代わった。フェラーリとレッドブルがそのことをきちこんと理解していたのに対して、メルセデスは『ゼロポッド』という真逆の方向へ進んで苦しんだ。
開幕後、フェラーリのアイデアをいち早く取り入れたのがアルピーヌだった。開発の方向性を見誤らなかったアルピーヌは、シーズン中に投入したアップデートがことごとく当たった。予算制限が課せられているなかで、じつに効率よくマシンを進化させることに成功した。
残念だったのは、車体の進化にパワーユニットの信頼性が追いついていけなかったこと。これは、フェラーリ同様、開発が凍結される前にまずは性能向上を優先したスペックを投入したからだろう。
ドライバーズ選手権ではエステバン・オコンのほうがひとつ上だが、パワーユニットの信頼性に足を引っ張られなければ、アロンソが確実にチームメイトを上回っていたはず。表彰台のチャンスもあっただけに、アロンソ本人もこの結果には満足していないだろう。
マクラーレンも空力的にはアルピーヌに匹敵するほどの進化を遂げていた。ランド・ノリスが第4戦エミリア・ロマーニャGPで3位表彰台を獲得するなどして、ドライバーズ選手権でアルピーヌのふたりを抑えて、ランキング7位となった。
ただし、開幕前のテストでブレーキに根本的な問題を抱えていることが発覚。2022年のレギュレーション変更によって、ブレーキに関連するコンポーネントが変更され、冷却へのアプローチを変更しなければならなくなっていたが、マクラーレンはこのアプローチがややアグレッシブだったため、対策を講じるまでは比較的気温が高いサーキットで苦戦を強いられた。
ブレーキの問題は対策を講じられ、その後解決するが、その対応によってマシンはフロントヘビーとなったと思われる。こうした状況に対応できなかったのがダニエル・リカルドだった。そんななか、チームの総得点の7割以上を稼いだノリス。トップ3チームのドライバーにもひけをとらないパフォーマンスだった。