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 累計発行部数5500万部を超える伝説のクルママンガ『頭文字D』。クルマ好きの若者たちはこれを読み、古き良きスポーツカーに昂り、峠へと繰り出した。2020年には新装版も発売され、連載終了からおよそ10年が経過しようとしている現在でもその熱は冷めやらず、当時のクルマたちは中古車市場においても高い人気を誇る。

 本稿では、同作に登場した人気車をピックアップし、連載当時は詳しく語られなかった、各車の仕様(グレードやボディカラー)、カスタマイズ、チューニングの変遷などを紹介していく。今回は、藤原拓海のハチロクと対をなす、プロジェクトD・ダブルエースのRX-7(FD3S型)を取り上げる。作品序盤ではドライバーの高橋啓介とともにいったいどのような成長を重ねていったのか?

文/安藤修也
マンガ/しげの秀一


■イエローカラーと社外リアスポが目立つ仕様

 高橋啓介は、主人公である藤原拓海と人気を二分するほどの名キャラクターだ。当然、その愛車であるRX-7(FD3S型)も高い走行性能を誇る、歴代国産車でもトップクラスの名車である。同FD3S型は、RX-7としては3代目モデルで1991年のデビューだが、今見ても美しく整ったボディラインが特徴で、希少なロータリーエンジンを搭載と、非常にキャラが立っている。ドライバーが啓介でなかったとしても、きっと強力なライバル車としてハチロクの前に立ちはだかったに違いない。

 そんなFDが初めて作中に初めて姿を現すのは、Vol.1「ハチロク買おーぜ」のラスト。兄である高橋涼介のFC(FC3S型RX-7)を後に従えて、秋名山へやってきたシーンである。当時すでに群馬県内では知られた存在の高橋兄弟と赤城レッドサンズではあったが、この時はまだ愛車にそれほど手を入れていないように見える。

 まず目立ったのは、大きめのリアスポイラーだ。翼端版を支柱にした立体的なタイプで、ボディ全高をも上回っているほど高いが、抑揚のあるFDのボディラインには似合っている。その他、エアロでは、純正っぽいリップスポイラーが装着されているが、純正パーツは黒かったので、啓介はボディ同色に塗装し直しているようだ。当時、RX-7にかぎらず、愛車の黒樹脂パーツをボディ同色にする走り屋は多かった。

 さらに、ピアスボルト付きの5本スポークホイールを装着していて、ボディカラーはイエローだ(と後に判明する)。ボディサイド前方には各種ブランドのステッカー、リアフェンダー上部には「RedSuns」とチーム名のステッカーを貼っているのは兄のFCと同様だ。ちなみに、後継作となる『MFゴースト』では、愛弟子の諸星瀬名も愛車のスープラを同色のイエローにしている。

■GT-Rも打ち破ったテクニック重視チューン

 プロジェクトDのダブルエースということで、作品後半はハチロクと同等にバトルを重ねるFDだが、前半でもそれなりに露出が多い。この初登場シーンからすぐに(まだ乗員不明の)ハチロクと突然のバトルを繰り広げることになり、これが『頭文字D』としても初バトルになる。このバトルシーンも含めて確認できるのは、バケットシートを搭載していることと、アフターメーカー製であろう太めのマフラーを採用していること。シフトノブは交換されていない。

 この作品恒例のバトル前のスペック表示だが、作中ではこの後のハチロクとの正式なバトル時に記載されている。「スポーツマフラー/電気式ブーストコントローラー/シーケンシャルアダプター/スポーツコンピューター/設定ブースト 1.0kg/cm2/MAX出力 350ps(推定)」となっていて、この時点ではそれほどハードチューンはなされておらず、純粋に啓介のテクニックで速さを表現してきたのだろう。

 Vol.66「高橋啓介に死角なし!!」では、赤城山において、後輩であるケンタ(のS14シルビア)と練習走行をしているシーンが描かれているが、ここでリアスポイラーが若干低くなったことに気づく。従来同様、純正パーツではなく、翼端版が支柱となっているものの、後方へ傾斜し、高さは低くなっていて、よりRX-7ライクになった印象だ。また、同時にホイールも変更されていて、ディッシュタイプに5つ穴が空いているようなデザインになっている。

 この装いで、妙義ナイトキッズの中里毅のR32型スカイラインGT-Rとバトルすることになるのだが、バトル前のスペック表を見ると、「MAX340ps」となっており、前のハチロクとのバトルの時より10psほど下がっている。これは兄、涼介がハチロクとのバトル時にマックスパワーを下げてバランス重視のセッティングにしたことをうけて、あえてデチューンに踏み切ったものと思われる。結果、「4WD + 395ps(チューン済み)」のGT-Rを見事に打ち負かすのである。

■FDオーナーの読者が楽しめる細かな改良点

 次に装備が変わったのは、赤城山にランエボ専門チーム「エンペラー」が遠征に来ると決まった日の昼間のシーン。前日に拓海が須藤京一のランエボへ無謀なチャレンジをしてエンジン大破したため、啓介が拓海を励ましにバイト先のガソリンスタンドへ来訪した際に(まったくいいやつである)、FDのリップスポイラーが低くブ厚くなっているのがわかる。パーツ的には見分けがつきにくいものだが、明らかに純正品より主張が激しくなっている。

 前述のリアスポイラーやマックスパワーなど、このようにちょこちょこと装備を変えていくのも高橋啓介のFDの特徴であり、きっと高速域では違いが出る改良なのであろう。このあたりは読者で、特に実際にFDに乗っていたというオーナーだった人にとっては同作品を楽しめたポイントのひとつだったのではないだろうか。

 なお、この装備で臨んだ「エンペラー」戦、ランエボIVを駆る岩城清次とのヒルクライムバトルのシーンは一切作中で描かれておらず、「それまで見たこともないような聞いたこともないようなコースレコードで決着した!!」とナレーションのみ記載される。そして兄の涼介と須藤京一とのバトル決着後に、啓介も勝利していたことが語られる。なんともイカす演出である───(後編へ続く)。

■掲載巻と最新刊情報


頭文字D(1) (ヤングマガジンコミックス)
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MFゴースト(15) (ヤングマガジンコミックス)
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