F1、NASCARへのワンメイク供給など超高性能で高級イメージがあるBBSホイールだが若手ドライバーやモータースポーツ初心者、ジェントルマンドライバーに人気のVITAレースに2022年からホイール供給を開始した。そのきっかけは思いがけないものであったが、結果として意義深きチャレンジとなっている。
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■エントリーから本物を
「VITA用のホイールを作ってもらうことは可能ですか?」。きっかけは、このひと言からだった。藤波清斗は新規に立ち上げた『KF MOTORSPORT』の監督兼アドバイザーとして、2022年からVITAレースに参戦。
このチャレンジに向けて、自身がサポート受けるBBSジャパンに打診を行なった。「VITAに有名ホイールメーカーが参戦するとなると話題性も生まれるし、そもそも需要があると思っていたんですよね。でも、ある意味では無茶を言ったなと」
BBSジャパン ブランドマネジメント室の田原裕樹氏は当時を回想する。「話をいただいたのが2021年のスーパーGT第2戦富士のタイミングでした。面白い話だとは思いましたが、翌年の春に間に合わせるにはハードルが高すぎる。まずは物理的に供給が可能かどうかを精査しました」
鍛造のレーシングホイールを開発するには圧倒的に足りない時間。しかし、とある発見で状況は好転する。「サイズ的に流用できそうな金型が見つかりました。それを使用したうえで調整を進めれば、間に合うかもしれないと」。
結果として、BBSジャパンでは開幕戦にホイールを用意するだけではなく、事前のテストに重量や剛性の異なる数種類のプロトタイプを持ち込むなど、素早い対応を見せ監督である藤波を驚かせた。
新興チームであるため、藤波もVITAに乗り込みテストを行なったが、その出来栄えにさらに驚くこととなる。「想像以上のものが出来上がってきました。最終的には軽さを優先したものを採用しましたが、それでも剛性感も抜群ですし、BBSならではの粘りある特性も持ち合わせていました」
「若手ドライバーも初乗りで他メーカーのホイールとの違いを的確に指摘しましたからね。最初から良いものを知るという、いい機会ともなっています」
塚田海斗が筑波サーキットとモビリティリゾートもてぎにて開催されるVITA Trophyにおいて勝利を重ねたことによって、チームへの関心と相まって、ホイールについての問い合わせも増え続けた。
ただし、田原氏によると、初年度ということもありこれまで関係性のあったチームへの供給にとどまったそうだ。
「F1やNASCARへのワンメイク供給などもあり、ありがたいことに注目を集めていますが、我々はメイド・イン・ジャパンで製品を仕上げていますので、国内も疎かにしてはいけないという思いがあります。その中で、エントリーレースについても、提供できる範囲でやってみようという流れとなりました。レースですから、成績も踏まえて打診も増えてきましたが、現時点ではまだ幅広く供給するには至っていません」
「今後ライバルが使うことになったとしてもいいものはいいものなので、VITAレースにはメリットがありますよね」。本来であれば独占的に使用したいはずだが、監督の藤波にそう言わせてしまうほど、VITA用BBSホイールには魅力と性能が詰まっている。
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■VITAレース BBSホイール使用チーム(2022年)
No. | Machine | Driver |
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13 | ORC☆サウンドキッズVITA | 高野理加 |
24 | ENEOS☆BBS☆VITA-01 | 見崎清志 |
50 | BRM VITA | 塚田海斗 |
51 | BRM VITA | 井川直樹 |
52 | BRM VITA | 植田勇毅 |
■VITA TROPHY RACE SERIESチャンピオン
塚田海斗のBBSファーストインプレッション
■初乗りでも感じられる軽さと粘り
VITAに初めて乗った際に、BBSに履き替えたらタイムがポンと上がったんです。その違いは本当に分かりやすかったです。走り出しから軽さが感じられますし、やっぱりすごかったのが、タイヤが潰れていった後のホイールが粘ってくれる感じ。懐がとても深いです。それから、圧倒的に見た目がかっこいいですよね。モチベーションが上がりますし、いい緊張感ももたらしてくれます。
■BBS Japan
https://bbs-japan.co.jp
autsport 2023年1月27日発売 No.1581より転載