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2022年の国際政治を振り返ると、やはりウクライナに対するロシアによる侵攻が大きな関心を集めた。ただしその影で見過ごされがちなのは、21世紀の世界秩序を決定すると言われる米中の対立が、今年に入ってさらに深化してしまったことだ

アメリカは中国をどう認識しているのか(farosofa /iStock)

アメリカ人学者「対中認識の4類型」とは?

たとえばアメリカによる半導体関連の経済制裁が地味ながら着実に進んでいること(参考)であり、さらに気になるのは、それと同時に、批判を受けながらも保護主義政策も進めていることだ(参考)。

そのような中で今後の米中関係について気になるのは、アメリカの対中戦略に関する議論や識者たちのグループ分けはどうなっているのか?という点だ。

最近発表された、実に興味深いレポートがある。カリフォルニア州立大学デイビス校の社会学専門のデビッド・マッコート准教授がまとめたもので、現在のアメリカにおける識者たち100人余りにインタビューを行い、その「対中戦略のスタンスの違い」を4つの派閥に分類したものだ(中国を知る:関与と戦略的競争の間のアメリカの中国ウォッチャー)。

マッコート氏は「独自につけたラベルである」と断ってはいるが、その4派閥をそれぞれ紹介しつつ、そこから全体的に見えてくる戦略的な課題や、日本にとっての戦略面での示唆について考えてみたい。

①「関与派」は少数派に転落

第一の派閥が「関与派」(the Engagers) である。これはニクソン政権の国交正常化からオバマ政権後期まで(1970年代〜2010年代中旬)米国の中国ウォッチャーたちの間では主流となっていた派閥であり、具体的には「中国に関与してともに発展し、自由化・民主化させよ」と説いてきた人々だ。

もちろんトランプ政権や現在のバイデン政権では主流派から追い出されてはいる。歴代の中国専門家や元外交官のような実務家に多く、どちらかといえば長期的に米中関係を楽観視している人々が多いという。

具体的には、クリントン政権で国務省の官僚を務め『中国:危うい超大国』(日本放送出版協会)という本も出しているスーザン・シャークや、『中国の領土紛争』(勁草書房)で北京の歴代の対外紛争を詳細に検証したテイラー・フレイヴェルなどがいると指摘されている。この派閥の人々は「これまでの関与は失敗ではない」と主張するパターンが多く、決め台詞は 「だったら、他に選択肢はあったのか?」 となる。

実際にソ連と対抗するという地政学的な事情やその後の世界経済の発展という経緯を考えると、彼らの存在意義はあったし、いざ紛争の危機があった時の「ホットライン」の必要性や、現在の競争的な環境においても米中の外交「関係」が続くことを考えると、「知中派」や「中国専門家」としての長い経験は米国にとって不可欠なものだ。ただし現在彼らの発言や主張は完全に少数派となった。

②バイデン政権を仕切る「戦略的競争派」

11月、対面では初となった米中首脳会談(ホワイトハウスFacebook)

第二の派閥は「戦略的競争派」(the Strategic Competitors) であり、現在のバイデン政権下では多数派であり主流となっている。

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