虐待を受けた男児が描いた絵を紹介する安永智美さん
鉛筆を握れない、椅子に長く座れない…。そんな子どもの小さな変化に、心の大きな傷が隠れている可能性があるという。性暴力を含め、児童虐待の相談に応じ、少年少女の立ち直りを支援している専門家が、暴力から子どもを守り、救うため、周りの大人に気づいてほしい「SOSサイン」について語った。
福岡県警の出先機関「少年サポートセンター」のスタッフとして活動する県警少年課課長補佐の安永智美さん(59)は11月26日、「子どもの健やかな成長を願って~幼少期の忘れもの~」と題し飯塚市内で講演した。
「幽体離脱ができるんだよ」
「私は幽体離脱ができるんだよ」。過去に講演した小学校で、こんな感想文を寄せた5年女児がいたという。安永さんは、ある直感が働いた。自分の精神バランスを保つため、「心と体を引き離している可能性がある」と。女児に話を聞いたところ、的中した。
女児はこう打ち明けた。「髪の毛をなでられた瞬間、魂が体から抜け出すの。私は好きな歌を歌って(行為が)終わると、魂がまた体に戻るんだよ」。実父から性的虐待を受けていた。
被害は5歳の時にさかのぼる
「すてきな女性になるためのレッスン。ママに言ったら悲しむからだめだよ」と父に言い聞かされていたという女児の被害は5歳の時にさかのぼる。女児は「ママを悲しませたくない」と我慢するうち、自己同一性を失う「解離性障害」とみられる症状を起こしていたようだ。
ほかにも「パパとのお姫さまごっこをやめたい」(小学2年女児)、「まずい飲み物を飲まされる」(5歳児)などの訴えが確認された。全て性暴力からの救いを求めるSOSサインだったが、周囲が気づけず、虐待通告されなかった。
何度も細かくは聞かない
行動に表れるサインもあるという。加害者の下半身を触らせられた児童は鉛筆を握れなくなり、性被害を受けた別の児童は下半身の痛みで椅子に座れなくなった。それなのに「学習障害(LD)」や「注意欠陥多動性障害(ADHD)」と決めつけられるケースもあった。
「お姫さまごっこはすてきだね」などと被害に無理解な接し方をすれば、子どもは相談をやめてしまいかねない。打ち明けてもらうには、まずは子どもの言葉によく耳を傾けること。根気よく待ち、話し始めたら何度も細かくは聞かない。「今までつらかったね」とねぎらいの言葉を添える「心配りも必要」とした。
あなたを守るために私がいる
加害者との心理的な距離によって「被害を打ち明ける割合が異なる」という調査結果も説明した。他人からの被害では9割に上ったのに対し、家族など身近な人からの被害では2割にとどまる。被害を打ち明けることで「家族がバラバラになる」「(養育を放棄され)施設に入れられる」といった理由が挙げられた。
安永さんは、子どものサインに敏感になると同時に、体操服で隠れる体の部位は他人に触らせてはいけない「プライベートゾーン」であることや、早すぎる性行為は心身を傷つけるといった「被害者にも加害者にもならないための指導も大切」と強調。家庭では子どもに対し「大人に心配をかけていい。あなたを守るために私がいる」と小さな頃から相談できる関係を築くことが不可欠と説いた。
(長松院ゆりか)
虐待に関する相談は、福岡の筑豊地区ではイイヅカコミュニティセンター2階(飯塚市飯塚)の「飯塚少年サポートセンター」で受け付ける。0948(21)3751。平日(年末年始除く)の午前9時~午後5時45分。
被害言えない背景に「手なずけ支配」
性暴力を受けた子どもが被害を打ち明けられない背景について、飯塚病院小児科の田中祥一朗医師は、加害者が巧みに被害者の心をつかんで手なずける「グルーミング」を指摘する。
加害者は家族など身近な人が多いといい、被害を打ち明ければ、他の家族が「悲しむ」「恥ずかしがる」などと被害者に罪悪感や羞恥心を意識させるといった手口で関係をコントロールしていくという。「相談までに10年以上かかった人が1割いた」とする調査結果も紹介した。
引用元: ・5歳から実父に性的虐待…小5の女児「幽体離脱ができるんだよ」 [愛の戦士★]
悲しい
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