アメリカのセントロ社が初の燃料電池トラックをCES2023で公開すると発表した。2023年に米国と欧州で発売予定の6×4大型トラック(セミトラクタ)だ。
あまり馴染みのない会社かもしれないが、小型商用EVとして国内で初めてナンバーを取得したHWエレクトロの「エレモ」は同社の小型車がベースで、実は日本国内を走っている。大型燃料電池トラックの国内導入はどうなる?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Cenntro Electric Group・Antric GmbH・「フルロード」編集部
初の燃料電池大型トラックを出展予定
アメリカのセントロ・エレクトリック・グループは水素燃料電池を採用した同社初の大型セミトラクタ「ロジマックス H864」(Logimax H864。以下「LMH864」)を2023年のCESで公開すると発表した。
CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)は毎年1月にアメリカのネバダ州ラスベガスで開催されている世界最大規模の家電・電子機器の見本市で、近年は自動車メーカーの出展も目立っている。2023年はプレスデイを除いて1月5日から8日まで開催される。
ナスダック市場に上場し、アメリカと中国に拠点を置くセントロはバッテリー電気(BEV)商用車と代替燃料技術のスタートアップで、日本ではHWエレクトロが販売するBEV小型商用車「エレモ」のベース車である「メトロ」シリーズなどを開発している新興自動車メーカーだ。
CESで公開予定のLMH864は、同社としては初めての大型トラック(アメリカのトラック区分で最も重い「クラス8」トラック)であり、また同社初の水素燃料電池トラックでもある。CESではLMH864を中心にゼロエミッション商用車のフルラインナップを展示するそうだ。
今のところLMH864について公開されているのは、総重量25トンの燃料電池車で、6×4駆動のセミトラクタであるということ。車両は短距離から長距離輸送までこなせるように設計したという。
搭載する電動モーター(複数?)は、再生可能燃料である水素を使った燃料電池で駆動する。燃料電池は水素と酸素を反応させることで電気を作り、副産物として水のみを排出するシステムだ。
LMH864の発売時期は2023年の第3四半期。最初にアメリカ市場とヨーロッパ市場に投入するとのことで、残念ながら日本市場は含まれていない。とはいえ、小型商用車のメトロが日本市場に導入されているだけに、日本での展開にも期待がかかる。
脱炭素輸送をグローバルに
セントロ製のBEV商用車は公共サービスやラストマイル輸送など様々な用途で活用され、北米とヨーロッパ、日本を含むアジア諸国など25か国に展開されている。
スケーラブルで非中央集権的な生産と、スマートな運転ソリューションの提供を掲げる同社は、ゼロエミッション商用車のフルラインナップを目指している。また7月にはBEV商用車を補完するために、電動カーゴバイクを製造するドイツ企業にも出資した。
電動カーゴバイク(「バイク」といっても低速の貨物用電動4輪車だが)の「アントリック・ワン」を製造するアントリック社は、ドイツのボーフム大学からスピンオフした企業。セントロはドイツで同社のバイクを製造し、グローバルに展開する予定だ。
商用車メーカーがカーゴバイクの製造に乗り出す理由として「モノとサービスの輸送において万能の車両は存在しない。広範な用途に対応するためには、広範な車両を揃える必要がある」と説明する。
このように商用輸送の脱炭素化にコミットしているいるセントロは、これまで小型~中型のBEV商用車の開発を行なってきた。しかし、大型車では要求されるエネルギー密度が高く、バッテリーより有利とされる燃料電池を採用した。
セントロの会長兼CEOのピーター・ワン氏は、LMH864に関して次のようにコメントしている。
「私たちはBEV商用車のラインナップ強化に注力していますが、大型車によるヘビーデューティな輸送や長距離輸送、短い充填時間が必要な輸送などの用途では水素燃料電池が最適な技術になると信じています。
LMH864の航続距離と充填時間はディーゼルトラックと同等です。このため長距離輸送や重量物輸送、あるいはエネルギー消費が激しいのに充電できる機会が限られている輸送などに適したトラックとなります。
セントロはLMH864によりゼロエミッションのサステナブル車両に新しい選択肢を提供します。電動車両のフルラインナップと共にCESでこの車両を紹介する日を楽しみにしています」。
CESのセントロブース(西ホール5840)ではLMH864がセンターに展示される予定で、併せて「ロジスター」シリーズなど電動の商用車の全ラインナップを展示する。
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