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 運行休止中となっていた西鉄バス北九州の北九州~別府・大分線「ゆのくに号」の路線廃止が決定となった。運行休止で事実上の廃止と受け止めていたが、正式に路線廃止がアナウンスされたことで「ゆのくに号」は名実ともにその歴史に幕を下ろすことになる。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)

■正式廃止の理由は?

3列シート運賃1700円均一の時代もあった「ゆのくに号」
3列シート運賃1700円均一の時代もあった「ゆのくに号」

 西鉄バス北九州によると、運行終了日は2023年3月31日で路線廃止は翌4月1日付。現在すでに運行を休止しており、運休状態のまま路線廃止に至ることになる。

 同社の説明によると「近年、ご利用の少ない状況が続いており、運行維持のために様々な施策を講じてまいりましたが、収支改善が見込めないことに加え、労働力の確保が困難な状況が続いているため、これ以上の運行継続は困難と判断いたしました。

 これまで、ゆのくに号を永らくご利用、ご愛顧いただきましたお客さまに感謝申し上げますとともに、運行終了によりご不便おかけいたしますことをお詫び申し上げます」としている。

 コロナ騒動で他の路線とともに一斉に減便体制に入り、幹線高速バスが復活してもなお、ゆのくに号だけは運休状態が続いた。

■一時は復活を遂げたものの…

 路線開設当初は北九州側は西鉄バス北九州が、大分側は3社が参入し共同運行をしていた。4社体制時は運行会社によっては3列シート車が投入されていて、旅行時間に融通が利くのであれば3列シート車を選択して乗車したこともあったが、いずれにしても乗車率は低かった。

PA上に設けられた行橋今川バスストップでの乗降はほとんどなかった
PA上に設けられた行橋今川バスストップでの乗降はほとんどなかった

 福岡市と違い、北九州市ではすでに車社会が浸透していることもあるため、東九州自動車道が開業しても大分方面には自家用車で行く人が多かったものと思われる。

 大分側の3社が相次いで撤退し、西鉄バス北九州単独で路線を維持していたものの、コロナによる運休からの復活は遅かった。運賃値下げやキャンペーンを行ったものの、1社体制での運行のため完全に北九州市側からの利用しか考慮していないダイヤ構成になってしまった。

 当初から予想されていたJRの特急ソニックに完敗し、反転攻勢も難しかったのはコロナのためだけではなく、運転士不足も大きな要因になったようだ。

■対北九州は難しい?

 福岡県での目的地や最終到着地としての北九州市の地位は非常に低く、やはり福岡市でないと乗らないという現実が表れた形だ。

キャンペーンの内容を窓に貼って宣伝はしたものの…
キャンペーンの内容を窓に貼って宣伝はしたものの…

 現在、北九州市を発着、もしくは経由する西鉄が運行や運行支援に関与するの定期の高速バス路線は非常に少なく、福岡、福岡空港、北九州空港、長崎、東京、名古屋、岡山だ。先日、鳥取線が廃止されたので夜行便は東京・名古屋・岡山だけだ。

 九州島内で福岡県外に出ることができるのは、長崎県営バスが運行する長崎行きのみという状況で、本州方面はすべて福岡市からやってくる路線が北九州市を経由する形だ。

 西鉄バス北九州が路線廃止を正式にアナウンスしたことで、同社が単独で運行する定期都市間高速バス路線は消滅した。

■問題の根本は運転士不足

 実際には運転士不足が最も深刻な問題なのだろうが、すでに運休をしていて事実上の廃止路線をわざわざ正式に廃止発表するのは、同社の危機感の表れではないだろうかと予測する。西鉄バス北九州に限らず多くの事業者が同じ悩みを抱えている。

各都市へ高速バスで結ばれている大分
各都市へ高速バスで結ばれている大分

 根本的な解決策は運賃値上げによる運転士の待遇改善と、運賃値上げに見合う旅客サービスの向上だが、すでに身の回りの多くのものが値上げラッシュであることはご承知の通りだ。バス運賃もご多分に漏れず値上げラッシュの最中だ。

 これによりどこまで改善されるのかは未知数だが、経済再生がおぼつかない中での物価上昇は消費を押し下げてしまうことにもなりかねず、頭の痛い問題だ。バス事業者だけではもはやどうすることもできないのは明らかで、政治や行政の制度的あるいは構造的な改革や後押しも今後は必要になるだろう。

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