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1937年7月3日、哲学者の三木清は電車のなかで、ひとり憑(つ)かれたようにしゃべっている人を見かける。政治批判に文明批評、その口調はまるで演説だ。乗客たちが見て見ぬふりをきめこむなか、哲学者はそっと耳を傾ける。夜、日記にこう書いた――「狂人の真似(まね)をしなければ、正しいことが云(…