ヒョンデ・モータースポーツの新代表に就任して以来、初めてWRC世界ラリー選手権の週末を過ごしたシリル・アビテブールは、トヨタ勢の後方でティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデi20 Nラリー1)がポディウムフィニッシュを果たした後、「3位は悪いスタートではない。しかし、優勝と選手権タイトルのために戦うという大きなビジョンを見失ってはいけない」と述べた。
約1年に及んだ代表不在のなか実質的にチームを率いていたジュリアン・モンセ副代表に替わり、2023年からヒョンデ・シェル・モビスWRTの新しいチーム代表に就任したアビテブール。2020年以来のWRCタイトルの獲得を狙う韓国のブランドは体制を新たに、1月19~22日にモナコとフランスで開催された開幕戦『ラリー・モンテカルロ』に臨んだ。
既報のとおり2023年シーズンの開幕ラウンドとなった同イベントは、トヨタのセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が“モンテマイスター”の称号を体現する完勝で、前人未到のラリー・モンテカルロ9勝目をマーク。チームメイトで新王者のカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が続きTOYOTA GAZOO Racing WRTがワン・ツー・フィニッシュを飾った。
ヌービル、ダニ・ソルド、新加入のエサペッカ・ラッピの3台体制でシーズンのオープニングイベントに臨んだヒョンデは、チームのエースであるヌービルが3位表彰台を獲得した。また、このベルギー人はGRヤリス・ラリー1勢が圧巻の速さを見せるなか、ふたつのステージでベストタイムを記録している。
この初陣を終えた後アビテブールは、「我々は強いドライバー、勇気づけられる瞬間、長い一日、そしてたくさんの仕事など私自身にとっても、チームにとっても消化しなければならないことがたくさんあった」と語った。
「開幕戦での表彰台獲得はうれしいが、優勝まではまだ45秒ある。(優勝したセバスチャン・)オジエはこの週末を通してベンチマークとなる存在で、それが私たち全員にとってより強くなるための刺激となるはずだ」
「自分たちに何が足りないのかを理解し、それに対して答えを出さなければならない」
「最終的にはもっとペースが必要だ。我々はクルマのセットアップに積極的になろうとしていたが、今にして思えばもっと早い時期にこれをやるべきだった。そうすればさらにダイナミックに走れただろうし、クルーももっと自信を持てたはずだ」
■ハイブリッドシステムにトラブル。「何が起こったのか理解する必要がある」
ヌービルが表彰台を確保した一方、ソルドとトヨタから移籍してきたラッピの両名はトリッキーなコンディションのなか苦戦を強いられた。
彼らは週末を通してヒョンデi20 Nラリー1のフォームを改善することを追求し続け、ベテランのソルドはハイブリッドのトラブルでパワーが制限されていたにもかかわらず、デイ3のSS15でトップ5タイムを記録するなどパフォーマンスを向上させた。また、ラッピは新しいクルマに慣れながら確実に走行を重ね、貴重な収穫を得てチームメイトに次ぐ総合8位でラリーを終えている。
「ティエリー(・ヌービル)はチームとセットアップ、そしてタイヤに対して断固とした態度で臨み、力強い週末を過ごした」とアビテブール。
「ダニ(・ソルド)とエサペッカ(・ラッピ)にとっては、トリッキーなコンディションのなかでの貴重な学びの週末となった。ふたりとも日ごとに進歩しているのが分かってうれしい」
「ただ残念ながら、ダニのマシンでは(土曜日に続いて)ハイブリッドシステムの問題が再発してしまったので、同種のトラブルを防ぐために何が起こったのかをチームとして理解する必要がある」