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本当のところを知りたい!! 「クルマにまつわる都市伝説」はウソかマコトか?

 定期的なオイル交換やタイヤの空気圧チェックなど、クルマを扱ううえで気をつけたいことは多い。しかし、そうしたクルマに関するノウハウにも都市伝説めいた話はある。ということで、今回はクルマにまつわる都市伝説をいくつかピックアップし、その真偽を検証していきたい。

 都市伝説と言っても、タクシーに乗ったずぶ濡れのお客さんがいつの間にかいなくなっていた――といったオカルト的なものではないのでご安心(?)を。いや、なかにはオカルトめいた話もあるかも……?

文/長谷川 敦、写真/スバル、日産、Newspress USA、写真AC

燃料やオイルの都市伝説

●格安ガソリンは水で薄めてある?

 最初に紹介するのはガソリンに関する都市伝説で「格安スタンドで給油されるガソリンは水で薄めてあるから安い」というもの。20年以上前から囁かれているこの都市伝説、果たして本当なのか?

 答えはもちろんウソ。格安販売店は大手石油会社のチェーンからは独立した存在であり、そのフットワークの良さを生かしてさまざまなルートで安くガソリンを調達することで低価格を実現しているのだ。そもそも、ガソリンと水は混ざり合わないので薄めるのは無理。

 この都市伝説が流布されたの原因には、かつてアルコールを大量に混ぜた粗悪ガソリンが問題になったことが考えられる。しかし現在格安店で販売されるガソリンの品質に問題はなく、水で希釈~が格安店にとって迷惑な都市伝説なのは間違いない。

本当のところを知りたい!! 「クルマにまつわる都市伝説」はウソかマコトか?
ガソリンの価格は地域や店舗によってかなりの開きがある。そんななか、格安スタンドは平均よりも低い価格で販売を行っているが、品質に問題があるわけではない

●オイル交換は半年に一度

 エンジンオイルは定期的な交換が必要なのは事実だが、問題はそのサイクル。おそらく多くの人が「理想は半年、あるいは5000km走行ごと」と考えているだろう。これは本当であり、本当ではないとも言える。

 実際、近年までは半年/5000kmごとにエンジンオイルを交換することが推奨されていた。だが、エンジンの精度とオイルの品質が向上した現在では、1万km走行ごとの交換で問題ないと考えているメーカーも多い。

 アナタが年代モノのクルマに乗っているならマメなオイル交換がお薦めだが、現代車なら例えば3000kmごとなどの頻繁なオイル交換は不要。あまりに頻度の高いオイル交換は、環境負荷を増やし、自分のおサイフにも優しくない。

エンジン回りの都市伝説

●エンジンブレーキはエンジンの負担大

 フットブレーキの負担を減らして効果的に減速を行うためのテクニックのひとつにエンジンブレーキがある。これは車速とエンジン回転数の差を利用して速度を落とす技術であり、長い下り坂などで有効だ。

 そんなエンジンブレーキだが、これを多用するとエンジンに負荷が加わって寿命を短くしてしまうという都市伝説がある。果たしてこれは本当なのだろうか?

 結論から言えばこの都市伝説もほぼウソ。マニュアル車でシフトダウンを行う際に、アクセルをふかしすぎるとエンジン回転数が一気に上がってオーバーレブとなり、エンジンが壊れるという可能性があるが、これは一般道で使用するエンジンブレーキとは次元の異なるものだ。

 だいたい、電子制御される現代車では、エンジンブレーキのためにアクセルを戻すとエンジンへの燃料供給も絶たれるため、エンジン回転数が上がりすぎになることはまずない。エンジンに負担をかけない配慮は必要だが、それよりも適切な減速を行って事故を防ぐほうがはるかに重要だ。

本当のところを知りたい!! 「クルマにまつわる都市伝説」はウソかマコトか?
下り坂でなおかつカーブが連続する区間ではフットブレーキを多用しがちだが、エンジンブレーキをうまく併用すればディスク/ドラムブレーキの負担を減らせる

●最近のクルマは慣らし運転がいらない

 かつて新車には「一定期間の慣らし運転が必須」と言われていた。この慣らし運転とは、新車のうちはアクセル&ブレーキやハンドル操作を“優しく”行い、各部分、特にエンジンの構成部品を馴染ませてから本格的な使用に移行するというもの。

 数多くのパーツから組み立てられている自動車には、こうした慣らしを行うのが自然とも思えるが、実は現代のクルマは以前からは考えられないほどの高い精度で組み上げられているため、特に慣らしを行わなくても本来の性能を発揮してくれるケースも多く、「慣らしは不要」と言いきるメーカーもあるほど。

 だが、メーカーや車種によっては慣らし走行を推奨している場合もあり、それはタイヤでも同様だ。つまり結論は「車種によっては慣らしが必須ではないが、できればやったほうがいい」と言ったところ。また、初めて乗るクルマに対する“人間側の慣らし”も必要なのは事実。やはり新車を導入してしばらくの間はおとなしく乗るのが良さそうだ。

タイヤの都市伝説あれこれ

●タイヤの空気圧は高めがよい

 一般車に装着されるタイヤには指定空気圧がある。空気圧のチェックや調整を行う際にはこの指定空気圧に合わせるのが基本だが、以前は「タイヤ空気圧は指定より少し高めにしておくと良い」と言われていた。いったいこれはなぜ?

 タイヤの空気圧は走行を繰り返す、あるいは長期間停車していても徐々に低下してしまう。だからこそ定期的なチェックと補充が必要なのだが、「だったら、あらかじめ少し高めにしておけば次の補充までのサイクルを伸ばせる」との理由で高めの空気圧に設定するケースがあった。

 また、空気圧を高くしておくとタイヤの接地面積が減って転がり抵抗も減少し、結果的に燃費が良くなるといったメリットも謳われていた。それが空気圧高め都市伝説の理由だ。

 しかし、現在ではこの都市伝説は否定されている。タイヤは本来の指定空気圧で最高の性能を発揮するよう設計されていて、たとえ燃費が向上したとしてもその数値はごくわずか。それよりも接地面積の減少による走行安定性の低下や、段差を乗り越えた際などのタイヤ破損リスクが増加するデメリットのほうが大きい。

 タイヤ空気圧は指定値で調整し、こまめなチェックと補充を行うのが王道と言える。

本当のところを知りたい!! 「クルマにまつわる都市伝説」はウソかマコトか?
タイヤの空気圧は推奨値より高めに設定しておくと、次回の補充までの期間を伸ばせることに加えて燃費も向上するといった都市伝説があった。果たして真偽は?

●ハイグリップタイヤの燃費は悪い

 近年は環境に対する意識の高まりから燃費に優れたエコタイヤに注目が集まっている。エコタイヤとは、先にあげた転がり抵抗を低減しつつ、必要なグリップ力も確保したタイヤのこと。

 エコタイヤで燃費性能が向上するのは事実だが、残念ながらノーマルタイヤに比べて劇的に変化するということはない。これは同時に「グリップ力の高いスポーツタイヤの燃費がそこまで悪くはない」ということも意味している。

 ゴムを溶かして路面に密着させるレース用タイヤならいざ知らず、市販品のハイグリップタイヤは燃費性能も十分に考慮されている。もちろん、エコタイヤより燃費は良くないが、それはオーナーの考え方ひとつで十分に納得できる差でしかない。愛車のタイヤは自分の志向やサイフと相談して選ぼう。

本当のところを知りたい!! 「クルマにまつわる都市伝説」はウソかマコトか?
高性能車両には標準で、あるいはオプションとして販売されているハイグリップタイヤ。路面追従性がアップし、安全も高まるのがハイグリップタイヤの利点だ

その他の都市伝説

●新車の値引きはメーカー直営店のほうが大きい

 クルマを購入する際に重要なポイントになるのが価格と値引き率だ。この値引きに関しては、昔から「メーカー直営ディーラーのほうが別会社経営店より大きい」という都市伝説がある。

 この都市伝説はある面で正解と言える。クルマを販売するにあたって、車体本体の他に移送や各種サービスなどのコストが加わるが、こうした点においてメーカー直営店が有利なのは間違いない。都市部はともかく、地方では移送コストも直営店と別会社で差が出てしまうのは事実だ。

 つまり実際の交渉では、メーカー直営店のほうがより大きな値引きを期待できる。とはいえ、購入後のメンテナンスやリセールなどにおいて地元企業が経営する販売店が有利になるケースも多く、値引き率だけで購入店を決めるのは早計なのもまた事実だ。新車を買う際はくれぐれも慎重に考えたい。

●青いクルマは事故率が高い

 かつて出版されていた色に関する本での記述が発端となって広まった都市伝説に「青いクルマは事故率が高い」がある。この本には実際のデータも引用されていて、青いクルマの事故は他の色に比べて多かった。

「やはりこの都市伝説は真実なのか!」と、思いたくなるかもしれないが、事故データが収集されたのは50年近く前の海外であり、現在の日本とは大きく交通事情が異なっている。

 とはいえ青いクルマは黄色や白のクルマに比べて見にくくなるのは本当のこと。だから事故率は高くなるのも当然と言えば当然だが、それよりもドライバーの注意次第で事故率はいくらでも変化する。また、青いクルマに乗ったドライバーが単独事故を起こした場合、明らかにそれはクルマの色のせいではない。

 事故の原因とクルマの色に相関関係があるというのは昔から言われているが、それよりも運転者や歩行者の注意不足が原因になることのほうがはるかに多い。だからあまり気にせず、好きな色のクルマに乗ろう。そして安全運転を忘れずに。

本当のところを知りたい!! 「クルマにまつわる都市伝説」はウソかマコトか?
自動車事故に関する都市伝説のなかでオカルト色が強くないのが青いクルマの事故率だが、確実なデータであるわけではないのがいかにも都市伝説といったところ

 ここまで見てきたように、クルマにまつわる都市伝説は意外なほど多く、今回紹介していないものもたくさんある。皆さんは、どんな都市伝説を聞いたことがありますか?

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