伝統のル・マン24時間レース、そして3年ぶりに復活した富士6時間レース含め、2022年シーズンは全6戦の熱闘が繰り広げられたWEC世界耐久選手権。シリーズは先ごろ、その舞台裏を41分に編集したハイライト動画を公開した。タイトルは『Unmasked!』。直訳すれば「マスクを脱いだ」ということで、コロナ禍から復帰し“平常”へと回帰したシーズンであったことを強調している。
車載カメラ、無線、そしてピット・ガレージの様子など「その瞬間」の裏側を捉えたシーズン中の秘蔵映像に、スタジオでのインタビューによる回想が挿入されていく構成のこのハイライトでは、盛り上がった名場面だけでなく、かなり“気まずい”シーンの数々も目撃することができる。
たとえば、第3戦ル・マンでLMGTEプロの首位争いを演じていたシボレー・コルベットC8.RとLMP2の接触シーンでは、コルベットをガードレールに追いやってしまったAFコルセのフランソワ・ペロードが、チームオーナーのアマト・フェラーリとともにコルベットのピットを訪れ、謝罪と事情説明をするシーンを見ることができる(もちろん、音声込み)。
四面楚歌の状況ながら説明責任を果たすペロードと、それを受け止めるコルベット側のスタッフの無念の表情は、見る者の胸を締め付ける。
また、TOYOTA GAZOO Racingの小林可夢偉と、アルピーヌ・エルフ・チームのマシュー・バキシビエールが接触した第4戦モンツァの表彰式開始直前の控室にもカメラは潜入。両陣営が互いを見る目、そして微妙な距離感はまさに“一触即発”の緊張感にあふれている。
このシーンに挿入されるインタビューでアルピーヌのニコラ・ラピエールは「モンツァのポディウムでの彼ら(トヨタ陣営)の態度は、ちょっとばかり“悪い敗者”のそれだったね。このことが僕らのモチベーションを上げ、彼らを困らせてやろうという思いを強くさせた」と回想しているのも興味深いところ。
ほかにもスパ戦で同士討ちを演じてしまったポルシェのドライバーが互いに状況を確認する様子、同じくスパの最終ラップに接近戦を繰り広げるLMGTEプロのポルシェとフェラーリを「トラックリミット違反だろ!」と言わんばかりの大きなリアクションで見守る両陣営の様子、ル・マンのスタートでアクシデントに巻き込まれた瞬間のユナイテッド・オートスポーツのピットの様子など、ファンなら「よくこの瞬間を撮影していたな」と感心してしまう映像のオンパレードとなっている。
なお、動画内のインタビューには、トヨタの平川亮も登場している。
参戦メーカー増大で盛り上がること必至な2023シーズンを前に、まずはこの映像で2022年を振り返ってみてはいかがだろうか。