グラフィックスカードの価格は2020年を境にエントリーでも3万円、ミドルレンジは5万円、ハイエンドになると10万円越えが当たり前という世界線になってしまいましたが、そもそもなぜグラフィックスカードの価格が大きく高騰しているのか理由と2023年にはどのような価格動向になるのか予想を解説していきます。
2020年から1.2倍程度にまで価格高騰したグラフィックスカード
グラフィックカードはゲーミングPCの中で最も高価なパーツとなっており、最近では様々な要因が重なって更に値段が上がっています。
例えば、NVIDIAのGeForce RTX 3060 Tiは発売当初は49800円で販売されていたものの、登場から2年が経っても1.2倍高い59980円で販売、RTX 3080も発売当時は87000円が最安値で登場していましたが、こちらも発売から2年以上かつ新モデルのRTX 4080が登場しても10万円と強気な価格が維持されています。
今回はそんな価格高騰が続いているグラフィックカードについて、そもそもなぜグラフィックスカードの価格高騰が起きているのか理由と2023年にはどのような価格動向になるのか予想を解説していきます。
グラフィックスカード価格高騰の理由
物流費、資材費、研究開発による製造単価の高騰
グラフィックカードの製造にはGPUダイの製造のみならず、グラフィックカードの基板と電源回路そしてGPUクーラーから外箱まで多くの工程を得て消費者に届けられますが、そのすべての工程においてコストが上がっている事が一つの要因と考えられています。
肝心なGPUダイについてはTSMCやサムスンなどのファウンドリーで製造が行われていますが、TSMCでは2021~2022年までに30%の値上げをし、サムスンも同様に2022年後半から20%の値上げを実施しています。
この値上げの原因には半導体製造に必要な希少金属やガスの価格高騰も含まれており、半導体製造で必要な希少ガスであるネオンガスの供給は70%がウクライナからと言われています。また、その製造拠点はマリウポリ、オデーサなどロシアによる軍事侵攻の影響を大きく場所であるためネオンガス価格は20倍にまで膨れ上がっていると言われています。
ほかにも、TSMCやサムスンが研究開発を進めている3nmや2nmなど最先端プロセス開発に向けた研究開発費確保なども値上げ内容に含まれていると見られています。
GPUの高性能化に伴い電源や冷却系統のコストが増大。
2020年頃に発売がされたGeForce RTX 3000シリーズでは上位モデルは消費電力が300Wを超えるなどRTX 2000シリーズに比べると消費電力が大きくなっています。
そのため、必然的にグラフィックカードに載せるコンデンサーの数やスペックは引き上げる事になりコストを上げる要因になります。また、消費電力が増えると発熱も増えるため大量の銅やアルミを使った巨大なGPUクーラーを搭載する必要があり製造コストが大きく高騰してしまっていると考えられます。
保証交換の費用についても消費電力が増えコンデンサーなど部品点数が増えれば必然的に壊れやすくなるため保証交換対応の件数が増える事に加え、製品のコストも高くなっているため不具合が起きる毎に必要なコストも大きく跳ね上がっています。
日本限定:円安、ドル高
グラフィックカードはアメリカに拠点を置くNVIDIAやAMD、Intelから供給が行われているため、例え生産地が中国や台湾だとしても支払はドル決済が基本となります。そのため、円安ドル高となれば必然的に日本でのグラフィックカード価格は高くなります。
『グラボの定価』NVIDIA GeForce RTX 3000シリーズの定価一覧
注意点として、グラフィックカード価格は1ドル105円台だった頃に発売された製品でも、1ドル131円の2023年1月では発売当時より値段が下がっているなど為替相場とグラフィックカード価格は完全にはリンクしていない例もあります。
2023年はグラフィックスカード価格は下がるか? 下がる見込みはあまりなし
物流費と資材費は高騰したまま。
グラフィックカードと業種は違うものの、自動車ではトヨタが物流費や資材費に関して2023年中も高止まりするとして営業利益を下方修正していますが同じ事はグラフィックカードにも言えます。
特に物流費については原油高が続いている他、銅やアルミなど基本的な材料から希少金属までありとあらゆる材料の価格は高止まりしたままとなっているため依然としてグラフィックカード製造コストは高いままとなりそうです。
TSMC・サムスンなどは製造価格を強気で維持
グラフィックカード用のGPUダイを製造するTSMCやサムスンに関しては2020年から2022年にかけて値上げを行っていますが、両社は2023年は価格の維持または更なる値上げを行う可能性があり、グラフィックカード価格が下がる要素は全く見当たらない状況です。
NVIDIA、AMD共に売上高を維持する必要性
2023年はアメリカをはじめ世界各国の中央銀行が利上げに踏み切る事で景気後退の懸念があります。そのため、NVIDIAやAMDでは収益性の高いサーバー・データセンター向け製品について企業が投資を渋る事やコンシューマー向けのグラフィックスカードについても景気後退から売上高が下がると予測を立てています。
通常であれば売上高が落ちるのであれば製品の値下げに踏み切り販売数を稼ぐ方法が取られるのですが、NVIDIAやAMDとしては売上高と収益を維持する必要もあるためグラフィックスカードについては今まで通りの価格を維持すると考えられています。特にNVIDIAにおいてはRTX 3000シリーズの在庫が積み上がっても頑なに大きな値下げは行っていないため『売れていないから値下げ』と言うパターンは成立しないと考えられます。
グラフィックスカードの買い時はいつなのか?
いつまで経っても値下げが行われないグラフィックカードですが、このままゲーミングPCは諦めてPlayStation5などコンシューマー機に移るのも手ですが、グラフィックカードの買い時を探している人は以下のタイミングを参考にしてみてください。
頻繁にグラフィックカードを買い替える人は目星のGPUが発売されてすぐ
グラフィックスカードの定価自体が高騰している場合、必然的に中古価格も新品相場に合わせる形で高値での取引が行われる場合が多いです。
実際に、GeForce RTX 3080の中古相場を見てみると、RTX 4080など最新世代GPUが登場しているにも関わらず平均落札価格は7.2万円ほどに設定されており、新品価格が10万円で販売されていたことを考えると残価率は7割を超えとなっています。
しかも、これは初期に購入がされたRTX 3080でもここ最近購入されたRTX 3080でもほとんど価格差が無いため頻繁にグラフィックスカードを買い換えるのであれば目星のグラフィックスカードが発売されてすぐに購入し、次世代モデルが発売されたら下取りに出して買い換えるという方法が最もコストパフォーマンスと満足度の高い購入方法になると言えます。
長く使う人は大型連休前、特にお盆期間に購入
グラフィックスカードを頻繁に買い換えない方、例えば2023年現在もGTX 1060で耐えている方など一つのグラフィックスカードを長く使う方は可能な限り最新モデルを安く買うことがおすすめされます。
最新モデルを安く購入するたに狙うべきポイントは、パソコンパーツ店のセールなどが開催される大型連休前が狙い時といえます。特にお盆期間中は秋にCPUやGPUの最新モデルが発表、発売されることが多く、これを見越して年末年始やゴールデンウィーク時より値引き幅が大きくなる傾向にありますので、待てるのであれば夏季連休に狙うことと良いといえます。
予算が厳しいなら中古GPUを買うのも手
予算に限りがある場合は中古のGPUを買うのもひとつの手です。中古のGPUを購入するメリットは何より、新品のGPUよりも安価に購入することできることです。比較的新しいモデル(例:RTX 3000シリーズやRX 6000シリーズ)でも中古というだけで新品価格の7割以上安値で販売がされており、オークションや販売店次第では製品に付与されている保証期間も有効な場合があります。
また、比較的古い中古のGPUでは最新GPUと比べて性能は劣りますが、一般的なゲームやアプリケーションにおいては十分な性能を発揮します。特に、ゲームプレイや動画編集などのタスクには、過去のGPUの中でも十分な性能を持つものがあります。
マイニングで酷使された中古グラボが危険な理由。欲しい場合の安全策を紹介
ただし、中古のGPUを購入する際には、商品の説明や商品の状態をよく確認し、販売元が信用できるか、またトラブル発生時には対応するなど手間とリスクは確実に増えます。
すぐに買えるかは分かりませんが、新型PS5と言われている『CFI-1200』のエントリーがAmazonで開始されていますので、欲しい方は早めのエントリーする事がオススメです。
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