1月22日、WRC世界ラリー選手権の2023年シーズン開幕戦『ラリー・モンテカルロ』競技最終日のSS15~18が行われ、デイ1のSS1からトップの座を守り抜いた“モンテマイスター”ことセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合優勝を飾った。日本人WRCドライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合6位でフィニッシュしている。
昨季2022年に導入されたラリー1規定下において、WRCではプラグイン・ハイブリッドラリーカーで争われる“新時代”が到来した。その2年目のシーズンが今年も伝統のラリー・モンテカルロで開幕している。
モナコとフランスの2カ国に跨って開催されるこのイベントでは地元出身のオジエが強さを見せており、これまでに通算8勝をマーク。これは昨シーズンのオープニングイベントでオジエを破って優勝したセバスチャン・ローブと並び大会最多記録だ。
19日(木)に開幕した今大会でもオジエの速さは群を抜き、競技初日にチュリニ峠で行われたSS1を皮切りにデイ2のSS5までステージウインを重ねてみせた。そのオジエ/ヴァンサン・ランデ組を僅差で追っていた僚友エルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)がタイヤトラブルで後退すると、モンテ最多勝男はデイ3では後続との間に充分なマージンができたためリスクを取らない走りにシフトした。
一方、競技3日目はディフェンディングチャンピオンであるカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)がシリーズ8冠王者に代わってステージベストを連発し、総合2番手を争うティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)を引き離すと同時に、オジエとのギャップを20秒縮めその差を16.0秒とする。
首位オジエ、2番手ロバンペラ、3番手ヌービルのトップ3オーダーで迎えた競技最終日は39歳のフランス人が先制パンチを繰り出し、2番手タイのタイムを記録した新王者を2.7秒突き放した。続くSS16ではロバンペラが逆襲。オジエから1.5秒の貯金を奪ってみせたが、SS17でふたたびオジエがステージ優勝を飾った一方、ロバンペラは勝田に次ぐ3番手で6.7秒遅れたため、その差は23.5秒に拡がった。
最終決戦の舞台となったSS18のパワーステージでは、先に出走したロバンペラが暫定ベストを記録。対するオジエはスプリット1、スプリット2ともに4.0秒、最終的には4.7秒遅れてステージ5番手に留まった。しかし、総合ではオジエが18.8秒差で見事優勝を飾り、ラリー・モンテカルロ最多優勝記録を更新する通算9勝目をマークしている。なお、2022年最終戦『ラリージャパン』からオジエのコドライバーを務めているランデにとっては記念すべきWRC初優勝となった。
■勝田貴元、最終パワーステージであわやのダメージ
オジエとロバンペラによるトヨタのワン・ツー・フィニッシュの背後ではデイ2以降、表彰台圏内でラリーを進めたヌービルが総合3位でフィニッシュした。デイ3のSS12とSS13でベストタイムを刻んだヌービルはトヨタGRヤリス・ラリー1勢が席巻した今大会で唯一、他陣営によるステージウインを記録している。
総合4位はトヨタのエバンスだ。ラリー1カーでの初優勝を目指したウェールズ出身の彼はステージ優勝こそSS6の1度きりだったが、計10回ものステージ2番手タイムを記録する安定感をみせていただけに、デイ2でのパンクが痛かった。
ヒョンデから古巣Mスポーツ・フォードWRTに復帰したオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)は総合5位でフィニッシュ。前日のデイ3はパワーステアリングに問題を抱え、最終日もマシンに不具合があるなかでの走行となったが、粘りの走りでトップ5入りを果たしている。
そのタナクと0.1秒差で最終SS18に臨んだ勝田は、同ステージでGRヤリス・ラリー1の左リヤにダメージを負ってしまう。その後「マシンに異常があったためスロットルを開けることができず」レーシングスピードを出せなくなった勝田だが、辛くもライバルに逆転を許さず総合6位フィニッシュを決めた。
総合7位はベテランのダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)、総合8位にはトヨタから移籍したエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)が入った。総合9位は新型シュコダ・ファビアRSラリー2に「藤原とうふ店(自家用)」のロゴを掲げて今戦に臨んだ、トクスポーツWRT2のニコライ・グリアジンだ。今季からデリバリーが開始されたファビアRSラリー2は、このWRC2デビュー戦でクラス初優勝を飾っている。
WRCの次戦第2戦『ラリー・スウェーデン』は2月9日から12日にかけて、北欧スウェーデンのウメオを拠点に開催される。ラリー・スウェーデンはシーズン唯一のフルスノーラリーだ。