レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコは、2026年以降のパワーユニット(PU)プランについて近いうちに決定する予定であると語った。2026年からF1には新世代パワーユニットが導入される予定となっており、レッドブルは、自社のパワーユニット部門レッドブル・パワートレインズ(RBPT)での参戦を登録している。一方、現在レッドブル・パワートレインズに技術支援を行っているホンダ・レーシング(HRC)も、マニュファクチャラーとしての登録を行った。
ホンダが2021年末でF1活動を終了することを決めたことにより、レッドブルは自前のパワーユニットでF1に参戦し続けるため、レッドブル・パワートレインズを立ち上げた。一方、2025年まで開発が凍結された現仕様のパワーユニットについては、HRCが引き続きサポートすることが決まっている。
その後、HRCは12月12日に行った2023年モータースポーツ活動計画発表において、2026年以降のF1パワーユニット製造者登録を行ったことを明らかにした。F1再参戦が決まったわけではなく、F1の研究を加速していくための判断であるとHRCの渡辺康治社長は説明している。また、その際に、現時点で2026年以降の話をレッドブルと行う計画はないとも述べた。
12月15日にFIAが発表した2023年F1エントリーリストによって、レッドブルグループのエンジン製造者の名称が『ホンダRBPT』に変更されることが明らかになった。2022年の登録は『レッドブル・パワートレインズ』であったが、次シーズンにはホンダの名前が復活することになる。
ホンダがF1への関与を再び深めるように見えるなか、2026年以降、レッドブルがどのような形でパワーユニット活動を行うのかに注目が集まっている。
ドイツの『Auto Motor und Sport』によるインタビューのなかで、レッドブル・パワートレインズで自社エンジンの開発が始まり、ホンダは独自にマニュファクチャラー登録を行ったとことについて、「なぜ別々の道を歩んでいるのか」と聞かれたマルコは、次のように答えた。
「いろいろなことが起きて緊迫した状況だった。2年前にホンダが(F1からの)撤退を発表した時点では、我々には何ひとつなくなるものと思われた。ホンダは既存のエンジンの供給すら望んでいなかったのだ。だが、我々は徐々に現在の協力関係へと変化させていくことができた」
「それと同時に、自分たちの将来を守るため、自社のエンジンファクトリーを立ち上げた。新たに建設したファクトリーにAVLの最新のテストベンチと測定器を備えた最先端の施設だ。ホンダのさくらのファクトリーも同様だ。2026年に誰が何をするかということについては、状況が複雑だ。ホンダは電気の部分だけをやるものと思われていたが、共通項に達しなかった。だがどうなるかはこれから見ていこう。決定はまもなく下されるだろう」
他のパートナーと組むことは考えられるかという質問に対し、マルコは「状況を見ていこう」とのみ答えた。
自社で一からF1エンジンを作ることは「信じられないほどチャレンジングなことだ」とマルコは言う。
「それでも我々にはエンジン責任者としてトップの人材が揃っていることが助けになっている。ベン・ホジキンソンがチームを率いており、今や約300人の優秀なスタッフが集まり、多くがエンジン製造における経験を持った人々だ。メルセデスだけではなく、フェラーリ、ルノー、コスワースからも人材を引き抜いた。素晴らしい専門知識と経験を備えたチームになった」
「新レギュレーションではふたつの要素が決定的に重要になる。バッテリーとソフトウェアだ。今のところ、宣伝文句を信じるなら、どの自動車メーカーも最高のバッテリーを作っている。実際の位置関係がどうなのかは、まだ分からない。自社にバッテリー製造の体制がないのであれば、他に頼るしかない。それを可能にするOEMは存在する。OEMとのパートナーシップを構築することで、そのノウハウを自分のレーシングプロジェクトに組み込むことができるだろう」
ホンダが独立したパワーユニットマニュファクチャラーとしてF1活動を再開すると決めた場合に、アルファタウリの買収を申し入れてきたとしたら、それに応じるか、と質問されたマルコは、そのシナリオを否定した。
「ホンダが復帰するなら、彼らはトップチームと手を組む必要がある。アルファタウリはそういう存在にはなり得ない。レッドブルから離れ、我々との相乗効果を失い、別のエンジンを搭載するとなればなおさらだ。私が聞くところによると、アウディからルノーに至るまで、すべてのエンジンマニュファクチャラーがセカンドチームを持つことを望んでいるという。そうなるとホンダに残される選択肢は多くはない」