路線バスの特に車内後方を見渡すと、車両によって同じ位置のシートが1人掛けの時と2人掛けの時がある。一人掛けシートは最近の風潮に則りプライベート感を重視した「サービス」の一環なのだろうか。シート配置に差が出る事情はいかに!?
文・写真:中山修一
利用者の多い路線はコレ!?:ラッシュ型
バス事業者が車両を納入した後で独自にシート配置をアレンジしている……のではなく、実は1人掛けも2人掛けも各車両メーカーが用意している純正の内装で、発注段階でどの配置にするか選べる仕組みになっている。
最近のノンステップ/ワンステップ車で、車両後方の1〜2段高い床面に一人掛けシートを左右に2つずつ配しているものは「都市型ラッシュ」や「ラッシュ型」と呼ばれる内装バリエーションだ。
その名の通り、ラッシュ時間帯の利用者が比較的多い路線向けの内装で、車両奥の通路面積を広げて、立ち席客が後方まで無理なく入れるよう、シート4つ分を1人掛けにしている。
この後方一人掛けシートにはプライベート感があり、真っ先に埋まるほど人気の高い場所だ。ただし、あくまで乗車定員を仕様の限界まで確保するための工夫で、プライベート重視で設定しているワケではなさそうだ。
バランスの取れた配置:都市型
ラッシュ型で1人掛けになっている後方4つのシートを2人掛けに変えたものは「都市型」と呼ばれ、まとまった数の利用者がいる都市部の路線に適した内装とされる。
後方通路が狭くなる分、ラッシュ型に比べ都市型のほうが定員が数名少ない。数名程度とあまり差がないのは、立席数が減る代わりに着席人数が増えるためだ。
現行モデルのいすゞエルガを例にすると、ホイールベース5,300mmの車で、ラッシュ型の定員81人(座席22人+立席58人+乗務員1人)に対して都市型は定員79人(座席27人+立席51人+乗務員1人)だ。
都市型は通勤通学時間帯の輸送力と日中の快適性を両立させた、バランスの良い配置と言える。
なお、車体の長さが短いタイプでは、ラッシュ型の内装と同等でも「都市型」としている車種が一部にある。
ローカル路線の定番?:郊外型
比較的長い距離を走る路線では座席数の多い車両が理想的。そんなニーズに応えるべく用意されているのが「郊外型」の内装だ。
郊外型は2人掛けシートの配分が多めで、車両後方だけでなく前方にも2人掛けシートを置いているのが特徴だ。
最近の低床車では、車椅子スペースの2脚分は跳ね上げ式の1人掛けシートになっているのが基本であるが、その部分を跳ね上げ式2人掛けシートに置き換えて着席人数を増やしたメーカーオプションもある。
都市型だったら都市専用ってこと?
都市型やラッシュ型と名のつくだけあって、こういった内装のクルマは人口の多い都市部に限って使われるのだろうか? 軽く動向を探ってみると、決してそうでもない。
1日に5本くらいしか便数のないローカル路線バスにも、1人掛けシート主体のラッシュ型に近い内装の車両がフツーに使われている。
ここでバス車両の履歴を調べてみると何となく事情が見えてくる。バス車両は同じ事業者の中で転属する場合がある。
車体番号やナンバープレートを確認すると、元々は利用率の高そうな地域の営業所に投入されたクルマであることが結構多い。
また、都会で使われていた車両を中古で購入して運用する地方の事業者もごく一般的に見られるため、ラッシュ型内装の路線車が閑散路線を走る光景はそれほど珍しくない。
反対に、超混雑路線に郊外型内装の車両が使われる例は、積み残しや乗降時に遅延する問題が出てしまう可能性が高く、かなりレアケースと思われる。
1人掛けと2人掛け……車種が同じでも内装に違いが出るのは、最初に車両を投入する路線の需要が深く関係しているわけだ。
投稿 路線バスのなぜ!! シート配置と種類はありすぎるワケ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。