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 かなり古い家電を処分するときにリサイクル料金が必要になることがある。これは2001年より施行された「家電リサイクル法」により、廃棄された家電をリサイクルするために決められた料金を支払うことが義務付けられているからだ。

 これと同様にも乗用車も処分するときにリサイクル料金が必要となる。その仕組みについて解説しよう。

文/藤田竜太、写真/AdobeStock(メイン写真=petovarga@AdobeStock)

■2005年から施行された自動車リサイクル法

クルマはいつかは廃車となってしまうが、車体はリサイクルされる。そのためにリサイクル料金の支払いが義務化されている(gelog67@AdobeStock)
クルマはいつかは廃車となってしまうが、車体はリサイクルされる。そのためにリサイクル料金の支払いが義務化されている(gelog67@AdobeStock)

 自動車メーカーの工場からラインオフされたピカピカの新車も、永遠に使い続けることはかなわず、いつかは使用済み自動車として廃車になる運命にある。
経済産業省と環境省の資料によると、令和元年度の国内の使用済自動車発生台数は336万台。

 これらの使用済み自動車を確実にリサイクルするため、2005年の1月から自動車リサイクル法が施行され、ユーザーは新車を購入するときにリサイクル料金を支払うことが義務づけられた。

 リサイクル料金の額はクルマの種類、エアバッグ類の個数、カーエアコンの冷媒の種類などによって1台ごとに異なるが、例えば去年登場した日産のフェアレディZ(ZR34)の場合、1万700円となっている。

 車種ごとのリサイクル料金は、各自動車メーカーのホームページで確認できるが、軽自動車やコンパクトカーで、7000円から1万6000円。普通乗用車で1万円~1万8000円が目安。

■リサイクル料金の内訳

シュレッダーダストやエアバッグ類、フロン類の処分料金がリサイクル料金の大部分を占める(GarkushaArt@AdobeStock)
シュレッダーダストやエアバッグ類、フロン類の処分料金がリサイクル料金の大部分を占める(GarkushaArt@AdobeStock)

 その内訳は、シュレッダーダスト、エアバッグ類、フロン類の処分料がメイン。シュレッダーダストは、使用済自動車から有用な部品や鉄などの金属資源を回収した後に残る樹脂、ゴム、ガラスなどの粉砕クズのこと。

 これが全体の約17%を占めるが、このシュレッダーダストの約75%は、樹脂やウレタンなどの可燃物なので、これらは熱回収リサイクルに回され、残りの約25%の金属やガラスなどの不燃物のうち、ガラス片などはタイルなどの材料に再利用される。

 リサイクル料金のうち、およそ6割がこのシュレッダーダストの処分料だ。そしてエアバッグの処分料が約2割。このエアバッグの処分料にはエアバッグ本体と事故時にシートベルトを瞬時に固定するシートベルトプリテンショナー含まれている。

 なお事故車などで、すべてのエアバッグとシートベルトプリテンショナーが作動していることが確認された個体は、エアバッグ類の料金が不要になる。

 最後のフロン類の処分料が約17%。エアコンが効かなくなってしまったクルマでも、明らかにカーエアコンの配管やゴムホースに裂傷や穴開きがある場合や、コンデンサーが破損していない場合を除き、フロン類回収業者が取外回収作業を行なうので、フロン類の処分料は免除されない。

 これらの処分費用に加え、リサイクル料には130円の「情報管理料金」(使用済自動車の適正処理の状況を電子管理するために要する費用)と、290円の「資金管理料金」(リサイクル料金の収受及び管理・運用に要する費用)も含まれている。(使用済自動車引取時は410円)

■リサイクル料は新車購入時に支払う そして手放せば帰ってくる

リサイクル料金は財団法人 自動車リサイクル促進センターが管理し、資金運用される(siro46@AdobeStock)
リサイクル料金は財団法人 自動車リサイクル促進センターが管理し、資金運用される(siro46@AdobeStock)

 こうしたリサイクル料金は、前述の通り原則として、新車購入時に支払うことになっている。

 そしてリサイクル料金を支払ってあるクルマを他の人に売る場合は、次の所有者の方から、車両価格に加えてリサイクル料金相当額を受け取る権利がある。
その後オーナーが何人変わっても、最終的にクルマが処分されるまでは、資金管理法人=財団法人 自動車リサイクル促進センターが管理し、資金運用される仕組みだ。

 行政や行政直系の公益法人による資産運用というと、運用失敗→巨額損失というのが定番だが、クルマのリサイクル料金の運用に関しては、「日本リサイクルシステム」のホームページに、次のような説明が掲載されている。

 『預託金はその運用方法が法律で制約されています。資金管理業務規程に規定された運用の基本方針に基づき、元本確保を前提として安全確実に管理します。具体的には、運用対象資産は国債を中心とした債券とし、満期保有を原則とします。(上記の考え方から、株式は運用対象にしていません。)

 年度毎の運用計画は資金管理業務諮問委員会(自動車リサイクル法で設置が義務付けられており、専門家や消費者代表等で構成されている中立の第三者委員会)の審議を経て策定し、四半期毎・年度毎の管理・運用状況は資金管理業務諮問委員会に報告し、公表します』

 一応、元本確保を明記しているが、運用失敗、損失=国民負担というのは、お上の常套手段なので、自動車ユーザーとしては、リサイクル料の管理が確実に行なわれているか、つねに目を光らせておく必要があるだろう。

■自動車のリサイクル率はなんと99%

エンジン、トランスミッション、ドアやフェンダーなどの外装部品、電装品など中古部品として再利用される(edojob@AdobeStock)
エンジン、トランスミッション、ドアやフェンダーなどの外装部品、電装品など中古部品として再利用される(edojob@AdobeStock)

 ちなみにクルマのリサイクルは非常に優秀で、エンジン、トランスミッション、ドアやフェンダーなどの外装部品、電装品など中古部品として再利用される再使用部品が20~30%。

 壊れたエンジン、触媒(貴金属)、バッテリー(鉛)、タイヤ、非鉄金属など、資源としてリサイクルが可能な部品は、「再資源部品」として活用され、これが全体の約15%。

 その他、専用のシュレッダーにかけて、鉄と非鉄金属に分類され「素材サイクル」となり、これがおよそ45%。

 最終的に埋め立て処分等に回されるのは、クルマ1台分のうち、わずか1%程度しかないので、リサイクル率は99%といわれている。

 また自動車リサイクル法を導入したことで、クルマの不法投棄も、かなり減少し、制度導入前(2004年)に比べ、40分の1以下になったというのも大きな成果といえるだろう。

【画像ギャラリー】なんとリサイクル率99%の自動車部品(4枚)画像ギャラリー

投稿 なんとフェアレディZのリサイクル料金は約1万円!! この金額の算定方法とは?自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。