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<p>災害に備え製薬会社、BCP改善急ぐ 原薬調達や在庫分散</p><p>災害に備え製薬会社、BCP改善急ぐ 原薬調達や在庫分散 医薬品原料は中国の生産シェアが高い。2019年には中国当局が環境規制を理由に現地メーカーに抗生剤原料の生産を停止するよう命令したため、製品をつくれなくなった苦い経験がある。</p><p>南海トラフ巨大地震などの災害が想定される中、被災地に必要な医薬品を迅速に届けるため、各製薬会社が事業継続計画(BCP)の改善を急いでいる。製薬業界は阪神大震災…</p><p>南海トラフ巨大地震などの災害が想定される中、被災地に必要な医薬品を迅速に届けるため、各製薬会社が事業継続計画(BCP)の改善を急いでいる。製薬業界は阪神大震災や東日本大震災での教訓を積み重ねてきた。原薬などの原材料調達ルートの複数化、工場の被災に備えた在庫の分散、医療現場の情報把握などがポイントで、平時からの準備が重要となる。 「被災地で目薬や洗眼薬の需要が高まっている。急いで送ってほしい」 平成23年3月の東日本大震災発生時、現地からロート製薬にこうした声が続々と寄せられた。「がれきの撤去や倒壊した家屋の片づけなどの作業で砂ぼこりが舞い、目に異物や細菌が混入する環境だった」と同社の担当者は振り返る。 持病のある被災者が日常的に服用している薬が手に入らなければ、生命にかかわる事態になりかねない。製薬会社は、糖尿病薬、高血圧薬、抗精神病薬などさまざまな薬を生産し、供給する必要に迫られる。 業界団体の日本製薬団体連合会(日薬連)と日本製薬工業協会(製薬協)のマニュアルでは、製薬会社ごとに災害時に提供を求める医薬品を割り当てている。たとえば塩野義製薬には、感染症薬やステロイドを中心とした医薬品の供給を要請している。 医薬品を生産する上で、まず必要なのが原材料となる原薬や化学物質の調達だ。塩野義の場合、重要な納入業者に平時から現地監査を実施し、製造プロセスの安全性評価やリスク確認を行っている。 同社によると医薬品原料は中国の生産シェアが高い。2019年には中国当局が環境規制を理由に現地メーカーに抗生剤原料の生産を停止するよう命令したため、製品をつくれなくなった苦い経験がある。同社は「原材料生産の国内回帰や海外からの調達ルートの分散が急務」とする。 自社工場が被災した場合のBCPも用意しなくてはならない。住友ファーマは、停止した機能ごとに復旧に向けた課題を洗い出し、計画を立てているという。小野薬品工業は「安定供給に影響が出ないよう在庫確保に努めている。代替生産ができるよう外部委託業者との連携にも取り組んでいる」と説明する。生産拠点や在庫の分散も進めなければならない課題だ。 さらに、被災地の詳しい需要や、製品を被災地に運ぶ輸送路が寸断されているなどの情報も入手する必要がある。医薬品の提供先となる医療機関や避難所、自治体の情報収集に関しては、製薬会社が契約している特約店(医薬品卸)が担っているという。 「過去の経験から、災害情報は特約店に集まる。輸送網の状況については配送業者と密に連絡をとりながら適切な配送計画を検討する」(住友ファーマ)</p>