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四角いヘッドライトに横基調のグリル。今見るとちょっとズングリしたスクエアなボディフォルム。1980〜90年代に登場したちょっと地味な欧州セダン。でも今、そんなシブいセダンがタマラナク気になる!

1980〜90年代のカクカクしたサルーンが今、とっても新鮮!

趣味車の中で何がシブいかって、何の変哲もない4ドア・セダンに優るものはないだろう。それも特に快速系ハイパフォーマンス・モデルってわけでもなく、誰もが唸らされる美しい姿を誇るってわけでもなく、“脱いだらスゴイんです”的隠れゴージャスなインテリアなどを持つわけでもなければ、最新鋭にも歴史的モデルにも遠いほどほどに古臭い頃合いで、いつまでもどこまでもどうしたってフツーであり、“蓼食う虫も好き好き”じゃないけどどういうわけか愛してしまった人以外には価値らしい価値を感じてもらえないような、そんなセダンこそがベスト。

いや、そういういい方をすると悪し様に罵ってるように誤解されるだろうけど、それは違う。そうしたクルマ達からは、選んだオーナーの“コイツのよさは俺が解っていればいい”という秘めたる熱い想いが、じんわりと、けれどとても強く伝わってくる。クルマというのは他人の目を気にしながら虚栄心や御機嫌伺い混じりで選ぶものじゃなく、自分自身の価値観で選ぶもの。そうした極めて真っ直ぐで真っ当な考え方やすっぱりと潔い姿勢が、激シブ以外の一体何だっていうのだ?

熱心に愛されるクルマには愛される理由というものが必ずあるわけだが、ここに登場する3台のヤングタイマー世代のヨーロピアン・セダンは、間違いなく地味ではあるが、愛される理由に明確な説得力がある代表格。そこに気づくことができたら、この“地味系”ヨーロピアン・セダンが一気に“滋味系”であるように感じられるはずだ。

デルタ譲りの4WDサルーン

1980年代のランチアと聞いて誰もが思い浮かべるのはデルタ。それもバリバリのラリー系だろう。その影に隠れた小型セダンが一番に出てくる人は稀だ。

プリズマはゴルフの対抗馬として小さな高級車を目指したデルタのセダン版。小さな高級セダンだ。スタイリングはハッチバックから派生したモデルとは思えないほど違和感のない仕立て、ジウジアーロの仕事ならではの綺麗に調和のとれたものである。しかも極めてランチアらしいノーブルな雰囲気。そりゃもうパッと見が地味めに感じられても無理がない。というか、むしろ意図的に落ち着いた方向を目指したことは間違いない。インテリアの上品な雰囲気からも、そうした意図が窺える。真の品格を備えた者は抑制を効かせるぐらいでちょうどいい、とばかりに。それはモータースポーツで勝ち星を得ることとは別の、ランチアのもうひとつの大切な側面だったのだ。

【写真13枚】デルタ譲りの4WDセダン、ランチア・プリズマの詳細を写真で見る

もちろんプリズマにも高性能モデルはあった。デルタと同じフルタイム4WDシステムを持つ、インテグラーレだ。とはいえ、自然吸気2.0L 4気筒の115PS。リア・デフにはロック機構が備わり、生活4駆としての色合いが強かったりもする。と聞けば大したことないのかと思われるだろうし、実際に速さはほどほどだったが、そちらはデルタにオマカセ。このクルマの持ち味は、激しさとは対極にあるかのような素直で優雅な身のこなし。地味といえば地味だけど、所作が“上品”という言葉の方が相応しい。そういうクルマも、最近、ないのだよね。

(中編フォルクスワーゲン・ジェッタに続く)

【Specifications】ランチア・プリズマ・インテグラーレ
■全長×全幅×全高:4180×1620×1385mm
■ホイールベース:2475mm
■トレッド(F/R):1410/1405mm
■車両重量:1180kg
■エンジン:直列4気筒DOHC
■総排気量:1995cc
■最高出力:115PS/5400rpm
■最大トルク:16.6kg-m/3250rpm
■サスペンション(F&R):ストラット
■ブレーキ(F&R):ディスク
■タイヤ(F&R):185/60HR14

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