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<ドラマ『リエゾンーこどものこころ診療所ー』第1話レビュー 文:赤山恭子>

自らも発達障害=凸凹(でこぼこ)を抱える児童精神科医&研修医が、生きづらさを持つ子どもと親にまっすぐに向き合う感涙必至の医療ヒューマンドラマリエゾン-こどものこころ診療所-

1月20日(金)に放送された第1話は、診療所にやってくる悩める親子に寄り添う医師たちの誠実な姿が描かれた。

誰もがそこはかとなく生きづらさを感じている今、かわいた心を潤してくれるような、心温まるドラマが誕生した。

(※ここから先はネタバレを含みます。)

◆児童精神科の院⻑・佐⼭卓のもとに現れたのは…

郊外にある児童精神科「さやま・こどもクリニック」の院⻑・佐⼭卓(⼭崎育三郎)は、発達障害などで⽣きづらさを抱える⼦どもと、その家族たちの診察を⾏っていた。

一方、⼤学病院の⼩児科で研修中の遠野志保(松本穂⾹)は、重⼤な医療ミス一歩手前の事態を起こしてしまう。

ショックでがく然とする志保が向かった先は、幼い頃に親に内緒で通っていた⼩児科・⼼療内科の「りえ・こども診療所」。院⻑の佐⼭りえ(⾵吹ジュン)を心のよりどころにしていた志保だったが、数年ぶりに訪れたそこは「さやま・こどもクリニック」へと変わっていた。

志保が訪れた「さやま・こどもクリニック」ではクリスマス会の真っ只中。しかし、参加していた患者・⻑⾕部未依(佐藤恋和)が道路に⾶び出し、トラックに轢かれかける。

間一髪のところで外傷は負わなかった未依だが、念のため大きな病院で検査をすることに。付き添うことになった志保は、発達障害の未依の振る舞いに過敏に反応し、注意する未依の母親の姿に心を痛める。

実のところ、志保は自分自身が発達障害ではないかと疑っており、未依の取る行動が他人事ではなかったのだ。

その後、「さやま・こどもクリニック」に戻った志保は、自分が発達障害ではないかという思いを佐山に吐露し、診断をしてほしいと直談判する。

◆夢を諦めようとする志保に「凸凹に当てはまる生き方が必ずある」

本作で主演を務めるのは、山崎育三郎。郊外にある児童精神科「さやま・こどもクリニック」の院長・佐山卓を演じている。

総合病院を実家に持ちながら、叔母が営んでいた小さなクリニックを引き継いでいる佐山は、やさしい眼差しと口調で患者たちに寄り添う。

自身も発達障害を抱えている彼は、クリニックに来る患者たちについて「彼らの特性を僕らは“凸凹”と呼んでいる」と話す。

障害や病気とひとくくりにレッテルを貼るのではなく、決して親や本人がダメなわけではないと佐山は親身に説明する。

それは発達障害自体になじみがない視聴者に対しても、その内容を知っていくきっかけにもなる丁寧さであり、かつスムーズな作品の導入となっていた。

そして、ヒロイン・遠野志保役には松本穂香が抜擢された。

佐山とともに発達障害の子どもに向き合っていくことになる研修医として、物語のキーとなる。志保も発達障害と佐山から診断を受ける。

おっちょこちょいやミスの連続で、これまで肩身の狭い生き方をしてきた志保を、松本が不安定な表情で体現。彼女が置かれていた状況、思いが手に取るように伝わり、だからこそ何かの拍子に志保の顔がパッと輝くと、こちらまで笑顔になってしまう。

本作における明るさは、松本の笑顔が担う部分が大きい。

第1話では、自分自身が発達障害ではないかと疑った志保が医者になる夢を諦めようとするシーンがあった。その際、佐山が「凸凹に当てはまる生き方が必ずあるはずだ」と志保に訴える。

「痛みを抱えているからこそ、人に寄り添えることだってあるはずだ。だから、医者になることを今諦めることはないと思う」と、これまでのやさしい口調ではなく、意志を持った強い眼差しで志保を説得する。

きっと佐山自身も迷い、立ち止まり、幾度も考えたからだろうと思わせる背景が、山崎の真摯な演技からもみてとれた。

山崎といえば、これまでミュージカル俳優としてはもちろん、映像でもコメディからシリアスまで巧みに演じ分けてきた俳優だ。

人の感情を揺さぶる大胆な演技が持ち味でもあるが、本作では信念を持ち、心に静かな火を灯し続ける、穏やかな医者として新境地を拓いている。

患者に寄り添い「うん、うん」とうなずく姿から、これから彼自身もどのような成長を志保と遂げていくのか。ひいては山崎や松本がどのような芝居を見せてくれるのか――そんな変化を見届けることも毎話の楽しみになりそうだ。

『リエゾンーこどものこころ診療所ー』は、自身も課題を抱えている児童精神科医が、子どもやその家族と向き合っていく、一見やわらかい雰囲気ながらも骨太なドラマ。

凸凹な登場人物たちが自分にはまる生き方をどう見つけていくのか、佐山院長と志保研修医の活躍に期待したい。(文:赤山恭子)