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作家で参院議員の猪瀬直樹氏が、選挙直前に起きた「セクハラ騒動」を報じた朝日新聞と同紙が有識者としての見解を求めた政治学者の三浦まり氏(上智大教授)に名誉を毀損されたとして、1100万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁(中島崇裁判長)で21日行われた。

訴訟で朝日新聞と三浦氏は、猪瀬氏が参院選に立候補予定だったことから、「本件記事は公共性・公益性があるものとみなされる」などと争う意向を示し、請求棄却を求めた。

朝日新聞社を訴えた猪瀬氏

訴状によると、セクハラ騒ぎは、参院選公示10日前の6月12日、JR吉祥寺駅前の公道で維新が街頭演説会を開催した際に起きた。全国比例に立候補予定だった猪瀬氏は、東京選挙区の候補予定者だった海老澤由紀氏らと登壇していた。

猪瀬氏が海老澤氏を紹介する際に五輪選手の名前と間違えた後に、猪瀬氏が改めて海老澤氏の名前を言い直し、海老澤氏も自身の名前を示そうとタスキの上部付近を触れ、猪瀬氏もこれに続いて触れたが、この時の一連の動作が「セクハラ」と報じられた。

訴状では「海老澤氏の胸(乳房)付近に手を当てたことはなく、肩に手をやったのは紹介の際に親愛の情を示したもの」との主張し、海老澤氏も自身のブログで「胸を触っていないし、仮に当たっていたとしても、それはたすきをたたいた結果であり、変に触る意図は全くないことは明白」とセクハラ疑惑を否定している(詳しくは提訴当時の記事)。

y-studio /iStock

この日は猪瀬氏本人も出廷し、意見陳述を行った。猪瀬氏は「衆人環視の場で、演説中にセクハラを行うなど、常識で考えても全くもってあり得ない話だ」と改めて憤慨。「朝日新聞が本件を報じた後、全国紙のお墨付きを得たと認識したインターネット上の匿名の発信者たちは、セクハラと決めつけるツイートをさらに拡散した」と振り返った。

さらに、トップ当選が見込まれた選挙情勢が一気に苦戦し、自身は辛うじて当選したものの、海老澤氏が3万票差で次点に終わったことを踏まえ、「天下の全国紙が虚偽の報道によって候補者の社会的評価を低下させ、得票を減らすことが許されるならば、今後も選挙の立候補予定者を誹謗中傷の標的とし、その当選を妨害することが頻繁に起きる恐れがある」と強調した。

これに対し、朝日側は報道により猪瀬氏の社会的評価が下がったことは認めたものの、判例も引用しながら、名誉毀損は、①公共性がある②公益性がある③真実または相当性--の3点が認められる場合は成立しないという法理を指摘。

その上で、猪瀬氏が立候補予定者であるため①②に相当すると主張。③の記事の内容、真実性についても、朝日は「原告(猪瀬氏)の応援演説の際に海老澤氏の体に複数回触れたことに批判がわき起こっているという、事実を踏まえ、政治におけるセクハラの観点から三浦氏に取材し、その問題点についての見解を求め、掲載したものだ」と猪瀬氏の訴えに反論。問題のシーンの動画を見た三浦氏が「映像では胸に触れていたように見えました」と述べた事実は“真実”で、三浦氏の論評は公正なものだったと主張した。三浦氏は出廷しなかった。