もっと詳しく

<p>中学生の9.1%がヤングケアラー 大阪市が支援に乗り出す過酷な家庭環境の実態</p><p>中学生の9・1%がヤングケアラー 大阪市が支援に 過酷な家庭環境の実態 大阪市では家庭へのヘルパー派遣など支援の拡充を進める一方、専門家は柔軟な対応が可能な民間からの支援のメリットを強調。官民が連携して子供や家庭に寄り添う必要性を訴えている。</p><p>子供でありながら家事や家族の介護、世話などに従事する「ヤングケアラー」。端からは家族思いの子供と見えるかもしれないが、背景にはそうせざるを得ない複雑な家庭環境…</p><p>厚生労働省によると、ヤングケアラーとは大人が担うべき家事や家族の世話などを日常的に行う子供たちを指す。背景には家族の疾患や障害、高齢介護など、どの家庭でも起き得る問題があるケースが多いものの、社会問題として認識されるようになったのは近年のことだ。 朝日生命保険が昨年9~10月にインターネットで実施し、男女2630人の有効回答を得た調査では、ヤングケアラーという言葉について、「聞いた経験がない」、または「意味が分かっていない」とする回答が約4割と、認知が進んでいないことが明らかになった。家族の世話が重荷となっている子の発見や支援の遅れが懸念されている。 大阪市ではヤングケアラーの実態を把握するため、令和3年11月~4年1月に、市立中学校の1~3年生5万1912人を対象に調査を実施。4万5268人から有効回答を得た結果、ヤングケアラーに該当する生徒の割合は9・1%となり、3年3月の国の全国調査で、中学2年のうち「世話をしている家族がいる」と答えた5・7%を上回った。 ケア頻度は「ほぼ毎日」が約半数 市の調査結果では、ヤングケアラーがケアをする家族は「弟・妹」、「祖母」、「祖父」の順に多く、内容は「話し相手」や「見守り」、「年下のきょうだいの世話、遊び相手」などと続いた。その頻度はほぼ毎日とする回答が約半数に及び、費やす時間は1時間未満が最多。中には8時間以上との回答もあった。 問題は役割の責任や負担の重さにより、子供たちが勉強や部活に十分な時間を使えず、友人との交流も希薄になるなどの影響が出てしまうことだ。 市によると、ヤングケアラーは他の生徒に比べ、欠席の日数や遅刻、宿題忘れの回数が多い傾向があった。市が支援を検討するある生活保護受給世帯でも、精神障害のために金銭管理が難しい母親を心配し、知的障害のある高校生と中学生のきょうだいが不登校になっているといい、市の担当者は「学校での調査では拾い切れないヤングケアラーが一定数、存在している」とみる。 このため、市では福祉事業者やケアマネジャーらが訪問先の家庭などでヤングケアラーの存在に気付くための周知・啓発を実施。令和5年度からは、100世帯を対象に1週間当たり1回程度、家事や育児を手伝うヘルパーを派遣するなど、直接的な支援にも乗り出す。 民間団体や企業が行政を補完 ヤングケアラーの実態調査に取り組む大阪歯科大の濱島淑恵(よしえ)教授は令和元年にNPO法人「ふうせんの会」を立ち上げ、代表理事としても活動する。 同会ではヤングケアラーの当事者たちが体験を共有しあう集会を開いたり、元ヤングケアラーがLINE(ライン)などを通じて当事者の相談に応じたりする「ピアサポート」を実施。賛同した介護施設運営会社「チャーム・ケア・コーポレーション」(大阪市)が会場や物品の提供などで活動を支えている。 濱島氏は「ヤングケアラーは家族のケアから解放された後も成長の過程で勉強や友達づくり、就職を諦めた影響が長く続く。息の長い支援には企業の参画が欠かせない」と訴えている。(山本考志)</p>