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 バスは一般的に乗用車とは異なり搭載される機器が多いため、それぞれの専門分野の会社が作っている。これまでにレゾナントシステムズを取材した記事をいくつか書いたが、今回はそんなノウハウと想いを幼稚園バスの安全に込めた機器類だ。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
取材協力:富士急行・フジエクスプレス・富士急バス・レゾナントシステムズ

似たようなデザインのスピーカーが多い

 今回、富士急行の協力で実現したスカニア・バンホールのダブルデッカー車に取り付けられたレゾナントシステムズの機器類取材だが、多くの場所に取り付けられている外部出力装置(要はスピーカー)を見てみると、概して同じようなデザインであることがわかる。

 もちろん、取り付ける場所や防水の仕様により違いはあるのだろうが、機器類の規格化と汎用化はコストを下げたり、統一感を持たせたりできる等のメリットがある。

大型バスと同じクオリティーを幼稚園バスに!

 しかし、今回紹介する幼稚園バスの置き去り防止装置は、現在大型バスで使用され事業者が認めた業務用機器をもとに開発されている。よって開発コストを抑えることができるほか、これまで長年にわたり一般のバスで使われてきた耐久性や実績がそのまま生かされるという安心が最大のメリットだ。

そもそも原因は何なのか?

 幼稚園バスの置き去り事故の原因は幼稚園の管理体制やシステムといった、言い訳にならない根本的な原因である場合を除くほかは、たいていがヒューマンエラーであることが多い。

 現役の幼稚園教諭に一般論としての流れを聞いた。園バスには運転手のほかに付き添いの教諭などが添乗している場合がほとんどだ。手順としては乗車した園児の人数と降車した園児の人数をカウントして一致すればOKという単純なものだ。

 これさえしっかり行っていれば理論上、置き去りはありえない。もちろん、カウント間違いはあり得るので二重、三重のチェックが入る。

信頼しあっているからこそのエラーも

 担任の教諭が出席を取った際にクラスでの欠席者を確認をする。あらかじめ欠席の連絡が来ている場合は問題はないが、それがない場合は直ちに職員室へ行き遅れて連絡が来ていないかどうか、園バスに添乗した教諭等に当該欠席園児が乗車したかを確認する。

 乗車したのにクラスにいないとなると、取り残されている可能性があることからすぐに園バスに確認に行く。乗車していないのであれば無断での欠席となり保護者に確認の連絡を入れる。

 起こりうるエラーの第一はここで、忙しい担任に代わり副担任が一連の業務をこなすこともあり、相互確認不足からくる「思い込み」により「確認はした」とお互いに信じているケースだ。

 これは園内のシステムを確立し、統括する責任者を置くことで解決できそうだ。 実際に多くの幼稚園ではそうしている。

園バスでは?

 この間に最近は小さめの車両になった園バスは、1回で園児を運ぶことはできないため複数のルートで往復している。すべての運行が終了した際には運転手が最終の車内点検・確認するのが普通だ。

デモ機ではエンジンの状態や待機状態が再現できる

 ここで第二のエラーが起こりやすい。園バスの運転士が車内点検と確認を忘れる、あるいは毎日行う慣れから点検を行ったと思い込むといった具合で、あの狭いワンボックスカータイプの園バスでも気が付かずに不幸な事故が起こってしまう。

プロ用汎用機器を生かす!

 レゾナントシステムズでは、大型バスに採用されている信頼性のある機器類を生かして回路や仕組みの設計を行った。単なる警告を発するシーケンスだけでは、手元で解除されてしまえばおしまいだ。

 そこで非常にアナログ的ではあるが、物理的に車内を点検・確認しないとリセットできないようにした。

 園バスの運転手は比較的高齢者が多いことから、同社の音声技術を生かして具体的に何をするのかが音ではなく音声で発せられる。単純なアラームとは違うところがミソだ。

 その確認を怠ると強烈な音量で警報音が発せられる。記者もデモ機で聞いたが、あれでは園内の全教諭に聞こえることだろう。

ダブルデッカー車運転席に取り付けられた運転士注意喚起用のスピーカー

 もちろん、大型バスとは違う点にも留意した。大型バスの電源は直流24ボルトなので、ワンボックスタイプの乗用車を利用した園バスの12ボルト車にそのまま取り付けても電圧不足で動作しない。

 一方で小型のマイクロバスタイプでは24ボルトなのでそのまま使える。このように幼稚園の事情により異なる電源の違いにも対応できるように複電圧に対応している。

すべては園児の安全のため

 同社では日本全国から施工を受け付けるが、ここでもバス事業者との協力関係を生かして、地方でもバス整備工場等の施工可能な場所を紹介したり手配したりする。

 後付けで乾電池内蔵で面ファスナーテープででも設置できそうだが、大型バスと同様にプロの施工が必要な理由は、装置自体のエラーを防ぐためだ。プロの配線は断線の可能性を排除し、電源の取り方や接地方法を検討して誤って大電流が流れないように保安することにより、確実に動作し誰にでも安全な装置を提供する同社の考えでもある。

 直流12ボルトは乾電池でたったの8本分の電圧だが、鉛蓄電池から車内で短絡(ショート)して大電流が流れると電気火災が起きるほどの実は怖いレベルの話なのだ。

 同様の機器を開発しているメーカーは多いはずだが、とにかく1台でも多くの園バスに1日も早く同様の機器が設置されて、安心して幼稚園に通えるようになってほしいと願うばかりだ。

投稿 園バスの置き去り事故から子どもを1000%守れ!! 最新の防止システムと連携チェックで二度と許さんっ!!自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。