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旧モデルオーナーは怒った? 喜んだ? 「そこまで変えるか!?」な激変モデル

 モデルチェンジによってクルマの見た目が変わるのは当然のこと。しかし、時にはあまりに変化が大きく、ホントに同じシリーズなのかと疑ってしまうクルマもある。今回は、モデルチェンジでの変化がすさまじく、先代のオーナーどころか一般のファンにまで衝撃を与えたクルマを紹介する。果たしてその大胆変更は吉と出たのか、それとも……?

文/長谷川 敦、写真/スバル、トヨタ、Favcars.com、ホンダ、三菱自動車

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シリーズ最大の大変革! でも“クラウンに見えない”という声も 「トヨタ 16代目クラウン」

旧モデルオーナーは怒った? 喜んだ? 「そこまで変えるか!?」な激変モデル
2023年に発売が予定されている16代目トヨタ クラウンセダン。4ドアセダンでありながら、ルーフ後方の形状などにクロスオーバーSUVモデルの面影も見える

 1955年に初代モデルが発売されたトヨタ クラウン(当初はトヨペット・クラウンの名称で販売)。以降は国産高級4ドアセダンを代表するモデルとして、70年近い年月を過ごしてきた。

 しかし、近年は4ドアセダンの需要が減っているのも事実で、たとえクラウンであってもその影響からは逃れられない。そのため、2022年にシリーズ通算16代目にあたる新型クラウンが発表されるまで、シリーズ消滅の危機さえささやかれていた。そんな心配をよそに、大々的な発表会とともにベールを脱いだ新型クラウン。だが、その姿は別の意味で衝撃を与えた。

 新世代のクラウンは「クロスオーバー」「セダン」「スポーツ」「エステート」の4モデルで展開されることになり、クランの根幹とも言うべきセダンが残ることは明らかになった。しかし、肝心の新型クラウンセダンのルックスはSUV寄りに変化していて、先代までのイメージは完全に断ち切られている。

 セダン人気の陰りは確かなことであり、クラウンがこの先も生き残っていくにはこうした変革もやむを得ないのかもしれない。その証拠に、先陣を切って発売されたクラウンクロスオーバーの受注は好調と聞く。しかし、一方では「伝統の箱型セダンを守ってほしかった」との声もあり、新型クラウンは「クラウンに見えない」と言われているのもまた事実だ。

 ともあれ、クラウンがこれまでとまったく異なるクルマになったのは間違いなく、それが今後どんな変化をもたらすのか注目していきたい。

マイナーチェンジでこれだけ変わる? 「スバル 2代目インプレッサ」

旧モデルオーナーは怒った? 喜んだ? 「そこまで変えるか!?」な激変モデル
2代目スパル インプレッサの最終形態。2度のフェイスリフトでこの顔つきになり、ようやくファンから支持されるようになった。前&中期型のオーナーは涙目に?

 続いて登場するのは、マイナーチェンジにもかかわらず顔つきが2度に渡って大きく変わり、オーナーを困惑させたスバルの2代目インプレッサだ。

 スバル インプレッサはスポーツ志向の強い4WDモデルをラインナップしたドアセダン&5ドアハッチバックで、世界ラリー選手権(WRC)でも活躍を演じている。そんなインプレッサの2代目モデルが登場したのが2000年。丸型のヘッドライトを持つ通称「丸目」フェイスでデビューした。

 初代から2代目への変更もかなり大きなもので、まずはここで賛否両論が巻き起こった。とはいえ、この時点で2代目であり、まだインプレッサというクルマのイメージも確立していなかったとは言える。

 だが、やはり賛より否の声が大きかったのか、2代目インプレッサは2002年のマイナーチェンジで大幅なフェイスリフトが実行された。

 マイナーチェンジ後の2代目インプレッサはヘッドライトの造形が大きく変わり、今度は「涙目」と呼ばれる顔つきになった。しかしまたしてもこの涙目は賛否両論を呼び、2005年には2度目のフェイスリフトが断行された。

 3代目となる2代目インプレッサ(ややこしい?)のヘッドライトは通称「鷹目」。涙目とはかなり印象の異なる顔つきに変わり、ついに多くの高評価を獲得した。

 この鷹目の意匠は3代目インプレッサにも引き継がれることになり、迷走したインプレッサのデザインもようやく落ち着き先を見つけた。この混乱に巻き込まれた当時のオーナーには少々気の毒な話ではある。

サイバースポーツがなんでこうなった!?  「ホンダ 3代目CR-X」

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スペイン語で「太陽」を意味するサブネームが与えられた3代目ホンダ CR-Xデルソル。太陽の光を受けるべく、電動オープントップが採用されたのもシリーズ初

 ホンダ CR-Xというクルマを覚えているだろうか? 初登場は1983年。4ドアセダン・バラードの派生型スポーツモデルがバラードスポーツCR-Xだった。バラードのイメージを残しつつ、コンパクトにまとめられた3ドアアハッチバックボディのデザインは人気を集め、1987年デビューの2代目CR-Xのスタイルも初代の延長線上にあった。

 この時期のCR-Xのキャッチコピーは「サイバースポーツ」で、たしかに“サイバー”なイメージが強かった。

 そうした流れのなかで1992年リリースされた3代目CR-Xは、それまでのコンセプトを大きく変え、電動オープントップを装備した2シーターオープンスポーツカーへと変貌。ボディフォルムに先代の面影はなかった。3代目CR-Xには新たに「デルソル(太陽)」のサブネームも与えられ、先代までのイメージからの脱却が図られた。

 変わったのはフォルムだけではない。電動オープントップの搭載などによって重量が増え、従来のCR-Xが最大の武器としていた軽快でキビキビ走れるという特徴も薄れてしまった。

 こうした変化がユーザーには敬遠されて販売台数は低迷。そして1999年に生産が終了となる。CR-Xシリーズもこのデルソルが最後のモデルになった。これは大幅なモデルチェンジの失敗例と言えるだろう。

恐くなった? でも売れました! 「三菱 デリカD:5」

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2019年のビッグマイナーチェンジで顔つきが大きく変わった三菱デリカ D:5。右が通常バージョンで左がアーバンギア。やっぱりかなりいかつい顔をしている

 三菱自動車のSUV・デリカD:5は、2007年にデリカシリーズの5代目を意味する「D:5」の名称とともに販売が開始された。本来は商用トラック&ワゴンで始まったデリカにも多数の派生車種が生まれているが、D:5は乗用ミニバンだったデリカスペースギアの後継にあたる。

 そんなデリカD:5は比較的コンサバティブなルックスで登場し、以降は大きな変更を受けることなく販売が続けられていた。そしてD:5としては初めての大型マイナーチェンジが行われたのが2019年2月。ここでデリカD:5はマイナーチェンジにもかかわらずかなり大きく変身することになった。

 ビッグマイナーチェンジによってD:5の顔つきはかなりいかつくなり、これにはやはり賛否両論が巻き起こった。その変化は三菱が推し進めていた「ダイナミックシールド」に沿ったもので、他社モデルを含めて近年の流行の一種とも言えた。

 そして気になるビッグマイナーチェンジ後の売れ行きだが、2019年の販売台数は2万85台で、2018年の1万3502台を大きく上回った。その後は新型コロナ流行や半導体危機の影響を受けながらも堅調なセールスを重ねている。つまりデリカD:5のビッグマイナーチェンジは成功だった。

レクサスの名称に引っぱられた? 「トヨタ 3代目ソアラ」

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3代目トヨタ ソアラ。初代~2代目のスタイルが一連の流れのなかにあったのに対し、この3代目では大胆なモデルチェンジを敢行。ファンに衝撃を与えた

 一時期は国産高級スポーツクーペの代名詞にもなっていたトヨタ ソアラ。1981年に登場すると、クオリティの高い造形や車体構成、そしてパワフルな直6エンジンなどが注目され、一気に人気モデルの地位に駆け上がった。

 その人気を後押しにして1986年にリリースされた2代目ソアラは、先代のイメージを継承しつつ、より洗練されたスタイルが当時のバブル景気とシンクロし、初代を超える人気モデルになった。この2代目ソアラが先代の後継車種であることは、ひと目見ただけで明らかだった。

 そして3代目が登場するのが1991年。このモデルからソアラシリーズでは初めて海外でも販売されることになり、その影響もあってスタイルはまったく新しいものへと変化した。なお、海外ではソアラの名称を使用せず「レクサス SC」として販売された。

 手堅さのなかにもしっかり個性があったのが2代目までのソアラだったが、この3代目ではヘッドライトの意匠が大きく変わり、全体のシルエットも丸みを帯びたものへと変化してモデルチェンジを強調している。このデザインを評価する声も多かったものの、やはり「ソアラに見えない」との声はあり、それだけが原因ではないにせよ、販売成績は先代や先々代に比べて落ちてしまった。

 ソアラは続く4代目(2001年)でまた大きくスタイルを変え、やがて国内でもレクサス SCの名称に統一されることになる。これによってソアラの名称はトヨタのラインナップから消滅した。

 初代と2代目の印象が強烈で、さらに後期はレクサス SCのイメージが強くなったことで、現在でもソアラと聞くと、初代、あるいは2代目を思い出す人が多い。これはある意味モデルチェンジの難しさを示しているとも言える。

 クルマの大胆なモデルチェンジは、販売を伸ばすのが大きな目的ではあるが、同時にそれまでのシリーズを愛好していたユーザーを見捨てることにもつながりかねない。それでも多くのメーカーが“冒険”してしまうのは、常に進化と躍進を求める製造者の宿命なのかもしれない。

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