2022年11月22日、日本でも発売が始まったフォルクスワーゲン(VW)のコンパクトEV SUV「ID.4」。2050年までのカーボンニュートラル達成を目指すVW本気の次世代BEVを自動車評論家 岡本幸一郎が試乗チェック!
●VW ID.4のここがポイント
・次世代のBEV専用プラットフォーム「MEB」を採用。77.0kWhモデルの航続距離は最大561km
・リアにモーターを配した後輪駆動で、切れ角増大で最小回転半径5.4mを実現。ポロより小回りが利く!
・こだわった高い空力性能で電費向上に貢献。加えて防音対策により、走行時の静粛性が高くて快適
※本稿は2022年11月のものです
文/岡本幸一郎、写真/VOLKSWAGEN、ベストカー編集部 ほか、撮影/奥隅圭之
初出:『ベストカー』2022年12月26日号
■RRで走りにもこだわるID.4
2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言しているフォルクスワーゲンは、電動車ブランド「ID.」シリーズを立ち上げ、すでに海外では何台もラインナップしている。
そのなかで日本に最初に上陸したのは、世界戦略を念頭において開発されたコンパクトSUVの「ID.4」だ。
内燃エンジンを搭載するフォルクスワーゲン全車がFFベースのところ、ID.4が採用するEV専用開発のMEBプラットフォームは、リアモーターで後輪を駆動するのが特徴だ。
駆動用バッテリーは前後の車軸間にレイアウトされており、全長のわりに長いホイールベースと短いオーバーハングを実現している。
サイズとしてはコンパクトSUVに属するものの、アスリートのように筋肉質なプロポーションも効いて意外と大きく見える。
「自然」から着想を得たという流れるようなデザインにより、わずか0.28という優れたCd値を達成したのもたいしたものである。
サイズのわりに室内空間は広々としていて床面もフラット。荷室容量も543~1575Lとタップリ確保されている。
インテリアの遊び心のある色使いとデザインも、既存のフォルクスワーゲン車とは雰囲気がだいぶ違う。
ゴルフ8でも話題になった最新世代のインフォテイメントは、使いこなすにはちょっと慣れが必要なものの、機能は非常に充実している。
後席はヒップポイントが高めなおかげで見晴らしがよい。足元もセンタートンネルがないので広々としている。
「ローンチエディション」に標準装備される大開口のパノラマサンルーフが、さらに開放感を高めてくれる。
海外にはほかのバリエーションもあるのだが、日本に導入されたのはいずれもRWDで、出力とバッテリー容量を抑えた「Lite」と、今回試乗した高性能版の「Pro」の2種類。
「Pro」の最高出力は150kWで0→100km/h加速タイムが8.5秒と、けっして速さが自慢のEVではないが、発進加速はけっこう俊敏だ。
低速から中速域にかけての伸びやかで力強い加速フィールはなかなか気持ちがよい。
バッテリー容量が77kWhで、WLTCモード航続距離が最大561kmと長いのも魅力だ。
引き締まった足まわりにより、2トンをゆうに超える車両重量を感じさせないフットワークの身軽さもID.4の持ち味。
後輪駆動で重量配分もリアよりであるせいか、ターンインの感覚も一連の内燃エンジンをフロントに搭載して前輪を駆動するフォルクスワーゲン車とは別物だ。
運転支援システムも最先端のものが採用されていて、前出の「ローンチエディション」なら同一車線内全車速運転支援システム“Lane Assist”が標準装備されるのがありがたい。
充電についても、90kW以上の高性能な急速充電器が使える専用のネットワークを整備予定というのも魅力的な話。
オマケに内容のわりに価格も控えめときた。フォルクスワーゲンの売れ筋EVは、なかなか気になるニューカマーだ。
●フォルクスワーゲンID.4 主要諸元
・グレード:Pro Launch Edition
・全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm
・ホイールベース:2770mm
・車両重量:2140kg
・パワーユニット:リア 1モーター
・最高出力:204ps
・最大トルク:31.6kgm
・バッテリー容量:77kWh
・一充電走行可能距離:561km
・価格:636万5000万円
投稿 またもEVの黒船が襲来! VW超本気の新型コンパクトSUV ID.4はぶっちゃけ「アリ」なのか? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。