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<p><特報>新手法で情報流出阻止へ 進化する公安警察</p><p><特報>新手法で情報流出阻止へ 変わる公安警察 警視庁公安部は一昨年、ロシア通商代表部職員が情報窃取を狙い、日本の先端技術保有企業の社員に接触を図る不審な動きを覚知。企業側に情報提供し、漏洩を未然に防いだ</p><p>テロやスパイ、過激派組織などを取り締まる公安警察がカウンターインテリジェンス(防諜)で新手法を取り入れている。摘発だけでなく企業にスパイの手口などを伝える活動…</p><p>テロやスパイ、過激派組織などを取り締まる公安警察がカウンターインテリジェンス(防諜)で新手法を取り入れている。摘発だけでなく企業にスパイの手口などを伝える活動やサイバー攻撃の相手国を名指しして公表するなど情報流出阻止を積極化。背景にはサイバー攻撃の激化や経済安全保障の重要性の高まりがある。今年は広島で先進7カ国首脳会議を控え、諜報活動や妨害行為の激化が予想されるなか、新手法を活用して対峙(たいじ)する。 ドラマで発信 警視庁公安部が昨年11月に公開したのんさん、筧利夫さん出演のドラマ。先端技術を扱う中小企業が、公安部の警察官とともに情報窃取などを狙う外国スパイに立ち向かうストーリーだ。警視庁の公式ユーチューブチャンネルで公開され、全3編の再生回数は14万回を超えた。 公安部は令和3年から経済安保の一環として、日本の最先端技術の海外への情報流出やサイバー攻撃を防ぐため、企業へのアウトリーチ(訪問支援)活動を展開。過去のスパイ事件やサイバー攻撃などの捜査の蓄積を生かし、具体的な手口を解説、個別相談にも応じている。昨年末までに延べ3100社を訪問した。 企業側から「社内教育で使える映像コンテンツが欲しい」との要望を受け、公安部が過去に摘発したスパイ事件や最新の動向を参考にドラマを制作。企業側からの評判も上々という。 情報発信の強化 過激派や右翼、カルト、テロ、外国諜報機関などの捜査や情報収集に当たり国家の安全と秩序を守る公安警察。捜査の秘匿性は極めて高く、一般にはなじみが薄い。近年では国家を背景にしたサイバー攻撃や民間企業を狙ったスパイ活動など、日本の最先端技術を狙った手口も巧妙化し、経済安保対策が重大な懸案となっている。 警視庁公安部は一昨年、ロシア通商代表部職員が情報窃取を狙い、日本の先端技術保有企業の社員に接触を図る不審な動きを覚知。企業側に情報提供し、漏洩を未然に防いだ。外国のスパイ活動が疑われる事例を摘発前に企業側に伝えるのは極めて異例だが、一度流出した情報は取り戻すことが不可能。経済安保の重要性が高まる中で、最先端技術の流出防止を重視した流れの一環とみられる。 大規模なサイバー攻撃についても、被害拡大防止等の観点から捜査などで突き止めた攻撃実行者や背後にいる国を特定した上で名指しして公表、非難する「パブリック・アトリビューション」も積極的に活用している。警察幹部は「数年かけて摘発しても情報が全て取られてからでは遅い。スピード感が必要になっている」と話す。 時代に合わせて進化 こうした情報発信をこれまでしていなかったわけではない。テロ対策として、爆発物の材料となる薬品などがテロリストに購入されるのを防ぐために、ポスターを掲示したり、動画を配信したりしてきたほか、事業者を対象にした講習会も実施し連携を深めてきた。 だが近年では、組織に属さず単独でテロ行為に及ぶ犯罪者「ローンオフェンダー」や、「陰謀論」にはまり、社会に影響を与えるような過激な行為に走るなどの新たな治安の脅威も出現。政府機関などを対象としていたかつての犯行グループに対し、現在は国民や企業なども狙われており、より多くの人へ危険性を周知していく必要性が生じている。 警視庁幹部は「国益と国民を守るという公安警察の目的は変わらないが、対策の手法や連携方法は、時代と新たな脅威に合わせて柔軟に対応していく必要がある」と語った。(大渡美咲) ◇</p>