ハースの空力責任者を務めるアロン・メルビンは、F1マシンの開発において風洞の使用を禁止することが、実際にチームのコスト削減につながり、F1の将来にとっていいことになるのかどうか疑問を呈している。
風洞の使用をやめるかどうかは、現在各チームで議論が行われているところだ。これはチームが行うインフラ開発のうち最大のもののひとつであり、将来のパフォーマンスの根幹となるものだ。近年のコンピューターモデリングソフトウェア(CFD-数値流体力学)は、風洞のルーティン機能の多くを実行でき、2030年までに風洞使用を全面禁止するという話も出ている。
これはF1によるカーボンニュートラル推進の一環だ。グリッド上の既存の10チーム中8チームが支持しているが、マクラーレンとアストンマーティンは双方とも、最近になって新たな風洞施設の建設に投資している。そしてハースの空力責任者メルビンも、風洞使用の禁止がF1にとって進むべき正しい道なのか疑問を投げかけている。
「費用対効果という点では、賢明なことだとは思わない」と今週メルビンは、『Racingnews365』の独占インタビューで語り、風洞の運営にかかる年間の推定コストは1チームあたり100万ポンド(約1億6000万円)だと言及した。
「レギュレーションがあるのはいいことで、CFDの機能の限界に挑戦する後押しになる。だからバランスを変えるようなレギュレーションは大いに歓迎する。風洞がなくても、安全で速いマシンを作ることは確かに可能だ」
「しかしこの業界は非常に優れた風洞実験ができる。禁止する必要があることではない。投資水準をもっと低いところまで、段階的に引き下げればいいのは確かだ」
メルビンの考えでは、環境問題の点から風洞を禁止する議論も和らぐ可能性があるという。
「環境責任に関する最も効果的な議論は、完全かつ包括的な議論だ。だから風洞だけを取り上げるべきではない」
「高いレベルの脱炭素で持続可能な電力は、実現可能に近い」
メルビンは、風洞実験を禁止することはマシンの本質を変え、ひいてはF1のチャンピオンシップ自体も変わる可能性があると主張した。
「風洞実験がほとんど行われていない速いレーシングカーがあるが、それはF1ではない。我々はシリーズがどうありたいのか心に留めておかなければならない」
「これらのマシンは非常に洗練されており、この洗練されたマシンから相当なラップタイムが生み出される。今と同じように完璧にするには、レギュレーションを変えなければならないだろう」