2022年11月10日、欧州議会からとうとう『ユーロ7』が発表された。「規制内容を緩くするのでは?」という予測もあったが、公表された内容をみると、かなりの確率で純エンジン車を淘汰することになると思わせるものになっている。ガソリン車は本当にもう駄目なのか!? 日本車への影響を国沢光宏氏が解説する。
※本稿は2022年12月のものです
文/国沢光宏、写真/AdobeStock、TESLA
初出/ベストカー2023年1月10日号連載『クルマの達人になる』より
■一部の予想を覆し厳しく設定されたユーロ7
相当の確率で純エンジン車を完全に淘汰することになる『ユーロ7』が欧州議会で決まった。
施行日は新型車についていえば2025年7月。継続生産車について言及をしていないものの、今までの例からすれば猶予期間2年の2027年7月ということ。
これ以降、ユーロ7をクリアしていない車両はEUで販売できなくなる。
ちなみにユーロ7の内容、これまで「緩くなるのでは?」と言われていた。というのもユーロ7の規制内容たるや非常に厳しく、事実上のエンジン廃絶になるためだ。
ちなみにユーロ7の目標値発表は1年くらい遅れた。
そんなことから日本のメディアには「欧州が熱心に進めている電気自動車の普及なんか絶対にできない。困ったメーカーは欧州議会のロビー活動を行い、ユーロ7の規制内容を緩くする」みたいな意見を伝える人も多かった。
続けて「最も可能性あるのはハイブリッドだ」。確かに燃費2倍になるハイブリッドの環境性能たるや非常に高く、無理して電気自動車を普及させるより現実的なように思う。
しかし! 発表されたユーロ7の規制値を見ると、1年前と同じ内容。むしろ回生ブレーキ機能を持たない純エンジン車を意識したのだろう。ブレーキダスト飛散量まで規制対象に加えるなど一段と厳しくなっている。
もう少し詳しくユーロ7の規制内容を紹介したい。大きな柱になっているのが排気ガスに含まれる大気汚染物質の厳しい数値。
エンジン始動から停止までの間、どんな使い方をしても大気汚染物質を出すことは許さないというもの。
御存知のとおりエンジン始動直後は濃いめの空燃比で安定した燃焼を行う。加えて触媒が暖まらないため、燃え残りのカーボンなどを出す。
はたまたアクセル全開になることも多いトレーラーを引っ張ってのキツい登坂路ではパワーを出すため、これまた濃いめの燃料を燃やす。当然ながら触媒の能力を超えてしまう。
現在販売されている最新の排気ガス基準も、排気管の内側にススが付く。これらすべてユーロ7だとアウト!
こいつをクリアするのは、最低でもハイブリッドじゃなくちゃだめ。
実際、日本勢はハイブリッドでユーロ7対応を目指しており、ホンダなどシビックのハイブリッドをほとんどユーロ7レベルのパワーユニットにしている。そんなホンダでも純エンジン車のユーロ7対応は「100%無理だと思います」。
当然ながら高効率のハイブリッド技術を持っていない欧州メーカーすべて「アウト!」だと思う。つまり日本勢だけになる。
そんなこと欧州が許すだろうか? おそらく「いいえ」。
次なるエンジン搭載車潰しの規制である騒音規制『フェーズ3』の施行をキッチリ決めてくると予想しておく。
フェーズ3は厳しすぎるため、内容的に甘く変更するという意見の人が多い。ところが現状だと日本車はフェーズ3対応のハイブリッド車を作れそうな状況。これを潰すために一段と厳しい内容にすると思う。
既販車への施行は2026年。この時点でエンジン搭載車は絶滅になる可能性出てきました。
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