トヨタのもっとも安いモデルはパッソである(OEM除く)が、今やヤリス人気に押されて風前の灯状態に。初代モデルはレーシーなるモデルもあったが、今やそんなホットなモデルもない……今のパッソの役割は!?
文/佐々木 亘
■今や厳しい戦いのパッソ……唯一の魅力はバカ早い納期だけ!?
新車の納期長期化で、新車販売台数から「人気のクルマ」を判断することは難しくなった。人気があっても、生産が追いつかず、販売ランキングで下位に沈むクルマも多いからだ。
ただ、トヨタ車の中でも、ダイハツから供給を受けるOEMや共同開発車の納期は比較的短い。そのため、ルーミーやライズは人気もさることながら、高い生産供給能力で、販売台数ランキングでも上位に並ぶ。
その中でパッソは、2022年10月単月では、国産全メーカー対象の販売台数順位で20位に入っている。販売台数は2,608台だった。この数字を見れば、検討しているように見えなくもいないが、ライズやルーミーの販売台数は9,000台に迫る勢いだ。ヤリスも7,000台近く(ヤリスクロスを含まず)を販売しているから、パッソの売り上げがパッとしないのが分かってくる。
反面、メーカー公表の工場出荷時期目途は非常に早い。ヤリスが半年かかるのに対し、パッソは3~4か月となっている。今、パッソを選ぶ理由は、「納期が早い」という以外、無いように見えてくるのだが、販売現場では、どのように売られているのだろうか。
■1年以上放置状態のパッソ……販売現場は販売継続を切望
現行型のパッソが登場したのは2016年、全グレードが1.0Lエンジンを搭載。先代からの可愛らしさを引き継ぐ一方で、モダンな印象を与えるグレードのMODAが追加され、エモさを感じられるクルマとなった。
2020年4月には特別仕様車MODA‘Charm‘を発売、2021年には一部改良が施されたが、以降現在までの1年半以上、変化はない。
初代から2代目、そして3代目へは、約6年間でフルモデルチェンジをしているのだが、現行型は既に6年の歳月が経過。トヨタディーラーでも、「販売の軸にできるほどの力は無い」という声が聞かれ、パッソを積極的に売るということは、ほとんどないという。
それでも、最近パッソを販売したという営業マンからは、「存在感は無くても、パッソはラインナップに残ってほしい」という前向きな声も出てきている。
■法人人気は絶大!! その理由は時代錯誤も甚だしかった
現在、パッソを購入するユーザー層のほとんどは、65歳以上の年齢層だという。加えて、法人需要がパッソの販売台数を下支えする。法人ユースになる理由は2つだ。1つは価格の安さ、もう1つは登録車という点にある。
最新の軽自動車は価格も車格も装備も十分な存在だが、黄色いナンバーを付ける軽自動車ということが、まだまだイメージを損ねるらしい。最近では減っているものの、実際に外回りの営業をする中で、「あそこの会社は軽自動車で営業に来る」というマイナスイメージを持たれることが、令和の今でも残っているというのだ。
■パッソ復権は軽自動車との違いをアピールすべき!?
こうした見方は個人ユーザーの中でも多い。まだまだ「軽自動車は、危ないし貧相だ」という誤解がある。
パッソは登録車だからこそ、前述の偏見を持たれることは少ない。また、人気の軽スーパーハイトワゴン等よりも大幅に車両本体価格が安いのが魅力の一つだ。こうしたポイントが、か細くも需要を維持し続け、販売を続けられる理由なのであろう。
これまで、コンパクトカーと軽自動車の板挟みに合い、パッソの人気が上がらないという見方も多かったと思う。筆者もそのように見ていたうちの一人だ。
しかし、既に軽自動車需要にも、コンパクトカー需要にも、今のパッソが自信をもって応えられるという状況ではないと思う。モデル末期を迎え、次なるステージを考えなければならない時期となった今、筆者がパッソに進んでほしいと思う領域は、ビジネスカーだ。
カローラアクシオやフィールダーがビジネスカーとして存続し、その上で個人ユーザーから一定数の支持を受けていることは周知の事実。パッソは今後、ビジネスコンパクトカーと軽バンの間に位置するクルマとして存在し続けるのが良いと思う。
外見には凝らず、シンプルな使いやすさと価格を維持する。明確な支持層が分かっている今だからこそ、パッソが変われる時なのではないだろうか。初代モデルのように、「ヴィッツよりも小さいが室内は広い」というような、機能性を全面に押し出し、プチトヨタの新時代を築き上げていってほしい。
【画像ギャラリー】改めてコスパいいゾ!! パッソの全貌を写真で(5枚)画像ギャラリー投稿 バカ売れヤリスもあるし……パッソはいる!? ビジネスカー専売にするのもアリか は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。