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 その年の人気No.1レースクイーンを決める「Adam byGMO日本レースクイーン大賞2022」。2022年11月に行われたスーパーGT第8戦での現地投票を皮切りに、ファーストステージ、ファイナルステージを合わせて約2カ月間にわたるレースクイーンたちのレースが繰り広げられた。

 1月14日に東京オートサロン2023のイベントステージで行われた表彰式で、織田真実那さん、名取くるみさん、藤井マリーさん、益田アンナさん、宮瀬七海さんが大賞を初受賞した。

 その中で、栄えある第12代のグランプリの座を手にし、ステージ上で最高の笑顔を見せたのは、Pacific Fairiesとして活動した名取くるみさんだった。

■名前を呼ばれた瞬間は……頭が真っ白に

「私は、あまりポジティブな人間ではないので、正直自分の名前が呼ばれることが想像できていなかったです。発表される前、時間が経つのが長く感じて、(名前を呼ばれた時も)夢の中にいるような、現実じゃない感じで……正直あまり実感がなかったです。『頭が真っ白になる』って、こういうことなんだと思いました」と名取さん。

「でも、(プレゼンターの川瀬)もえちゃんからトロフィーを受け取った時に『グランプリになれたんだ』と感じました。“青から青へ”ということで、(Pacific Fairies同士でグランプリを)つなぐことができて、安心しました」と、川瀬さんからトロフィーを受け取り、それまで胸の内に留めておいた想いが溢れ出すかのように、涙がこぼれていた。

 昨年は、同じPacific Fairiesの川瀬もえさんがグランプリを獲得し、今回名取さんが受賞したことで、同一レースクイーンユニットが2年連続で大賞のグランプリに輝くという史上初の快挙となった。

 グランプリの発表とトロフィーのプレゼンターを務めた川瀬さんは、チームカラーでもある青のドレスを身にまとって登場。今回も投票期間中は、彼女たちを応援するファンの間で“青から青へ”という合言葉がSNS上で多数投稿されていたのだが、まさにそれを体現する瞬間だった。

 しかし、名取さんにとっては“青から青へ”というキーワードが、プレッシャーとして大きくのしかかっていたようだ。

■初めての大賞挑戦に不安とプレッシャーの連続

 2021年度は新人部門と大賞ともに川瀬さんがダブル受賞をする快挙を達成。さらに6、7月に行われた2022年度の新人部門では七瀬ななさんが頂点に輝き、Pacific Fairiesから連続してグランプリが誕生していた。

「2021年はもえちゃん、2022年の新人部門では七瀬ななちゃんと、Pacific Fairiesがずっとグランプリをいただいていたので、『ここで止めるにはいかない!』というプレッシャーはもちろんありました」

「あと、私はレースクイーンだけではなくて、他のジャンルでも活動しているので、そういう部分でファンの方やSNSのフォロワーの数は、他の人より多いと言われてきていました」

「そのぶん、見せかけだけの人気ではないということを証明したいなと思って頑張ってきて……、それがグランプリという形になって良かったです。とりあえず安心しています」

 名取さんは、2021年度に新人賞を獲得し、大賞への挑戦は今回が初めてだった。挑むからにはグランプリ獲得を見据えて、毎日のライブ配信やSNSなどで投票の呼びかけに力を入れてきたが、新人部門とは違った雰囲気に最初は圧倒されていたようだ。

「新人部門は、初めて挑戦するレースクイーンだけで、みんな同じスタートラインだったので、気持ち的にも前向きに『挑戦しよう!』という感じでした。大賞となると、トップレースクイーンの方々がたくさんいらっしゃる中で挑んでいくので、重みが全然違いました。何と言っても、もえちゃんが獲っているから、次も獲らないといけないとか……プレッシャーも一緒に付いてきていたので、挑み方は明らかに違いましたね」

 投票期間中はプレッシャーや不安との闘い続けていた名取さん。ファイナルステージの期間中には、こんなこともあったという。

「私はあまり体調を崩さないタイプなんですけど、年末に一気にガタがきてしまいました。普段はストレスとか感じないタイプなんですけど、知らぬ間にプレッシャーとかを感じていたのかなというのはありますね。本来、年末年始というのは楽しい時期だと思うんですけど、今回は引きこもっていました(苦笑)」

「本当に(投票期間中は)夢にも出てくるくらいで、寝られないこともありました。表彰式の前日もずっと上の空で『早く表彰式当日が来てほしい……』という感じでした。これで、ようやく熟睡できます」

 そう語った名取さんは、表彰式終了後も、多数の関係者から祝福の言葉をかけられていたが、どこか力が抜けた様子で、安堵の表情を浮かべていたのが印象的だった。

2021年グランプリの川瀬もえさんからトロフィーを受け取り涙をこぼす名取くるみさん
2021年グランプリの川瀬もえさんからトロフィーを受け取り涙をこぼす名取くるみさん

グランプリ獲得の想いを語る名取くるみさん
グランプリ獲得の想いを語る名取くるみさん
グランプリ獲得の想いを語る名取くるみさん
グランプリ獲得の想いを語る名取くるみさん

■自身の経験、周囲のサポート、チームメイトへの想いを糧に突き進む

 たくさんのプレッシャーと闘いながら、投票期間を過ごしていた名取さん。そんな彼女の力になったが、応援するファンはもちろんのこと、所属事務所のマネージャーをはじめとした周囲のサポートだ。

 名取さんは2021年1月にグラビアアイドルたちの賞レース「ミスFLASH」のグランプリを受賞。一度“頂点に立つ”という経験はしていたものの、日本レースクイーン大賞では、グランプリに選ばれるのは“ひとり”だけ。その難しさを理解した上で、2カ月に渡るレースクイーン大賞の投票期間に臨んでいた。

「2021年にミスFLASHを頂いているのですが、その時はグランプリは3名選ばれたので『3人の中に入ればいい』という感じでした。でも、今回の大賞ではグランプリはひとりしかいないです。そのひとりになるのは本当に難しいことだし、軽い気持ちで挑んだらいけないというのは、まわりの方からもすごく言われてきました」

「かなり念には念をいれて、マネージャーさんと打ち合わせもしました。本当に私だけじゃなくて、まわりの方の協力がなかったら、絶対に獲れていなかったと思います」

 また名取さんは、レースクイーンとしての活動以外でも、グラビアモデルや格闘技Krushのラウンドガール、最近ではポーカーイベントにも出演するなど、モータースポーツ界のみならず各方面で活躍の場を広げている。

「もともとはグラビアから活動が始まって、そこでのファンの方が、私がレースクイーンを始めるのをきっかけにレースを好きになってくれて、遠いサーキットまで足を運んでくれるようになって……また違うファン層の方をレース界隈に呼べるようになったのではないかなと思います」と振り返る名取さん。こういったところも、少なからず投票ではプラスになった部分はあるはずだ。

 そして何より、不安とプレッシャーがかかった投票期間中で“グランプリを獲りたい”という気持ちにさせてくれたのは、同じPacific Fairiesではチームメイトであり、1年前の新人部門ではグランプリを争うライバルでもあった川瀬さんの存在なのかもしれない。

 実はファイナルステージが始まる前のインタビューで、名取さんはこのような想いを語っていた。

「今回はもえちゃんがプレゼンターなので、もえちゃんから名前を呼ばれてトロフィーを受け取りたいという気持ちも人一倍強いです。やっぱり一緒に2年間、同じチームで活動してきましたからね……」

「もちろんグランプリを獲ることは簡単ではないです。まわりからの期待もあって、プレッシャーはありますけど、同時に『絶対にグランプリを獲りたい!』という気持ちにも繋がっています」

 最初は“青から青へ”がプレッシャーとなっていながらも、最後は“青から青へ”の想いを力に変えて投票最終日まで駆け抜けた名取さん。こうした強い想いが、グランプリ獲得のきっかけに繋がっていった。

■グランプリを獲得した今、彼女が抱く次の目標

 2022年も長年サーキットで経験を積んでいるレースクイーンたちではなく、キャリア2年目の名取さんが、グランプリを手にする結果となった。

 念願のグランプリトロフィーを手にし、改めてステージ上で感謝の想いを伝えた名取さんだが、そこで「このグランプリ受賞に、賛否両論あるのは当然だと思いますし、それはひとつの貴重な意見だと思って、しっかりと受け止めていきます」

「そして、この大きな喜びが、他の誰かの痛みの上にあってのものだということを忘れずに、自身の活動に精進していきたいです」と、悔しい思いをしているであろうライバルたち、そして彼女たちを応援するファンのことも考えている様子が印象的だった。

「私は他の方と比べると、レースクイーンとしての歴は浅い部分があります。もちろんグランプリは獲りたかったし、狙っていたし、受賞できて嬉しいのですが、レースクイーン歴が浅い自分が獲ったということで……いろいろ意見があると思いますし、周りの目も気になるところはあります」

「そこを自分自身がどう変えていくか。見方をどう変えてもらうかが、今後の課題にもなるのかなと思っています」と名取さん。“グランプリ受賞者”として、今後も成長していきたいと、決意を固めている様子だった。

「正直、投票期間中もキツい言葉をいただくこともありました。やっぱり、自分が応援している子がいちばんになってほしいと思うのは当然で、(様々な意見があることは)仕方のないことだと思います」

「そういう意味でも『やっぱり、この子がグランプリで間違いないな』と思ってもらうには、もっと自分が変わっていかないといけないですし、これからもモータースポーツの業界に貢献できるように、自分の考え方、行動を変えていきたいなと思います」

「レースクイーン大賞という名をマイナスな方向ではなくて、もっとプラスな方向に持っていきたいので、グランプリを受賞したことで改めて……身が引き締まる思いでいます」

 また、今後の目標のひとつとして名取さんは「ファンとの交流」を挙げた。彼女がレースクイーンデビューをした2021年は、コロナ禍でイベントが制限されていた時期。

 昨シーズンの終盤から、制限も緩和されつつあり「これから、どんどんサーキットに行ける機会が増えてくると思うので、そういう時も写真対応だけじゃなくて、ファンの皆さんと、もっとコミュニケーションをとりたいです」

「以前からサーキットに通っている方が、『レースクイーンの子と、話ができたりとか、差し入れを渡せたりとか、そういうコミュニケーションがとれるのがレース観戦の醍醐味だ』とおっしゃっていて、そういう機会が今後増えていければなと思います」と、名取さんもコロナ前のような雰囲気が戻ってくるのではないかという期待感を持っていた。

 今後は“人気No.1レースクイーン”として、さらなる活躍が期待される名取さん。改めて、2023年の抱負をこのように語ってくれた。

「みんなから認めてもらえるレースクイーンになりたいなと思います。やっぱり、まだ2年目なので、私に対する見方も色々とあると思いますが……そこを自分で変えていって、実りのある1年にしたいです

「そして、もっとたくさんの人に(自分のことを)知ってもらうためには、これだけではなくて、他の活動もしていかないといけないなと思うので、レースクイーンはもちろんですが、それと同じくらい色んな活動に力を入れて、どの界隈でも『この子がんばっているね』と言ってもらえるようにしていきたいと思います」

 2021年の日本レースクイーン大賞新人部門でグランプリに届かなかった名取さんだが、その時に「やっぱり“上には上がいる”という現実をみせられたので……。この結果を受けて『もっと頑張ろう!』という気になりました」と、この経験を糧に、さらに精進していこうという決意を固めていた。いつも現状に満足することなく、常に高みを目指している名取さん。そうした“表には出さない努力”が、今回の結果につながったのだろう。

 それでも、グランプリ受賞に満足することなく「みんなから認めてもらえるレースクイーンになりたいです」と謙虚に語る名取さん。その理想に近づいていくための新たな挑戦が、すでにこの瞬間から始まっている。

これからの活躍を誓う名取くるみさん
これからの活躍を誓う名取くるみさん