「あのクルマ、まだ発売されてないの?」。最近、発表・公開と、発売開始の時期が離れている新型車が多い。
目当てのクルマはいつ買えるのかと、ユーザーは混乱するばかり。こんなことではイカン! と、自動車評論家 渡辺陽一郎氏がもの申す!
※本稿は2022年12月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 ほか
初出/ベストカー2023年1月26日号
■発表から発売まで半年も空くことも
はい。イカンと思う。
例えばマツダ CX-60。販売店では予約受注を2022年4月に開始したが、正式発売は9月。しかもXDハイブリッドに限られ、そのほかは12月以降だった。
また、日産アリアは2020年7月に公開され、2021年には特別仕様車のリミテッドシリーズを段階的に発表、発売。
その後、B6グレードのみを2022年5月に発売したが、ほかはいまだ未発売。「なんじゃ、それ!」という感じだ。
その2台を含め、最近の国産新型車に多い傾向はこうだ。まず試作車の外観などが「公開」され、次に販売店は、来店客に価格を示して「予約受注」を開始する。
その後、正式に「発表」され、価格などの詳細がメーカーや販売会社のホームページに掲載。その後、納車を伴う「発売」に至る。……という具合。
この経過を辿る理由は、生産と販売の合理化だ。
今は大半のメーカーが世界販売台数の80%以上を海外で売り、国内の市場洞察力が低下した。
そこで発表前に予約受注を行い、販売台数や売れ筋グレードを把握。そうすれば生産計画を誤らずにすむし、生産開始後、納車も迅速に行える。
その代わりユーザーと販売店は、実車のない状態で商談と契約を強いられる。
CX-60の予約受注を2022年4月に開始した時、販売店からは「CX-60は新開発の直6、ディーゼルを搭載して、駆動方式も後輪駆動だ。
運転感覚を想像できず、自信を持って販売できない。販売スタッフにも試作車を運転させてほしい」という話が聞かれた。
この予約受注開始の前倒し、コロナの影響だけでなく、実はコロナ禍前から傾向はあった。発端は2009年5月18日に発売の3代目プリウスだ。
同年2月に2代目インサイトが低価格で発売され、3代目プリウスは、価格を安く抑えて販売店をトヨタの全店に拡大。そして予約受注を4月1日に開始している。
その結果、3代目プリウスは発売後1カ月の受注台数が18万台と大々的に公表され、話題となった。
「その手があったか」と、他社も追従して予約受注を行い、発売後1カ月の受注台数を宣伝するようになった。次第に「発表と発売が同時」でなくなっていく……。
■解決策は「国内市場の重視」にアリ!?
新車の「発表と発売の時期の乖離」は迷惑といえる受注開始の前倒しに起因している。防ぐ対策は2つあると思う。
まずメーカーは今以上に国内市場に重きを置くべき。そうすれば生産体制が整い、今のような予約受注を早期に開始する必要もなくなる。
また、予約受注の台数を誇らしげに公表するのも間違いだ。
公表するなら生産して納車した実績を示す登録台数(軽自動車は届け出台数)にすべき。実にわかりやすい。
ユーザーのことを思うならできなくはない、はず。
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投稿 離れすぎじゃない…? 新型車の発表と発売の乖離のなぜ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。