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コロナ禍の影響でディーラーに変化あり?? 新車販売以外の商品&サービスで利益が一番大きいのは?

 昨今の自動車ディーラーでは、新車販売以外でさまざまなサービスを行っている。変化しつつある自動車ディーラーの経営状況について解説。さらに、売れ筋商品の変移について紹介していく。

文/佐々木亘、写真/HONDA、ホンダアクセス、Adobe Stock

■なぜ新車販売以外に力を入れるディーラーが多いのか

代車はあればありがたいけど……ディーラーにとって代車の用意は果たして負担になっているのか?
自動車ディーラーは、新車の利益だけでなく中古車やサービス関連の売り上げを伸ばすことに力を入れている(Artinun – stock.adobe.com)

 2000年代に入り、自動車ディーラーの営業体制は変革し続けている。以前は当たり前だった、営業マンが顧客の自宅へ商談や納車、点検の引き取り等を行う外訪は廃止され、今では多くのお店で「顧客来店型営業」が板についてきた。

 営業マンは、各店舗で顧客の来店を待ち、お店の中で最大限の接遇と営業活動を行って、成果につなげるというものだ。こうした営業変革と同時に、利益構造にも変化が見え始めている。

 新車の販売利益が最重要視されていた1990年代とは違い、2000年代は中古車やサービス関連の売り上げを気にする販売店が増えている。これに伴い、ディーラーが取り扱う商品やサービスの種類も大幅に増えた格好だ。

 そこで本稿では、令和の今、自動車ディーラーで売れているモノを探る。売れ筋の商品は何なのか、意外にも売れ行きが悪いモノ、収益が良くディーラーが売りたいものまで、自動車ディーラーにおける、新車販売以外の顔を紹介していく。

 既に十数年前から、日本国内における自動車販売台数は頭打ちの状態が続いている。人口減少が最大の要因だが、生活の中で「クルマ」を必要とするシチュエーションが大きく減っているというのも、新車販売を鈍らせる原因だ。

 この状況で、会社の利益を新車売り上げに頼っていては、会社が傾くばかり。そこで、新車の利益に頼らずに、ディーラー経営を行っていく販売店が、昨今では非常に多くなっている。

 新車販売以外の利益で、会社の一般管理費(簡単言えば従業員の人件費と店舗の維持管理費用)を賄うというのが、時代を先取りしている自動車ディーラーで、目標に掲げられていることが多い。

 自分の会社の体力となる部分は、売り上げの波が起きにくいサービスや手数料収入で賄い、新車の利益を純粋な会社の利益としていくのが、現在主流になりつつある自動車ディーラーの経営方法である。

 この体力の源となる商品を紹介していこう。

■自動車ディーラーが扱う、新車以外の商品は意外なほどに多い

 基本的なクルマの整備はもちろん商品の一つだ。細かな消耗部品から、追加オプション、一般カー用品でも多く扱われるタイヤやナビ、ETCにドライブレコーダーなど、商品群は多岐にわたる。

 また、ボディやシートのコーティング、エンジン・ガソリン添加剤や車内清掃・消臭・除菌など時代に合わせたサービスもラインナップしてきた。

 一昔前のディーラーでは「それはカー用品店でやってください」と断っていたサービスが、今はディーラーではほとんど行える。ワンコイン、短時間で終えるサービスを数多くラインナップするお店もあり、店舗ごとの個性が見える部分でもあるのだ。

●意外と利益の少ないメンテナンスパック、利益の大きなボディコーティング

 点検整備の中で、利益の核となるのが「車検」だ。車検をいかにして自分のお店で受けてもらえるようにするかが、ディーラーの利益を大きく左右する。

 また、点検のためにユーザーが店舗へ来訪する時間は、営業活動を行うための重要な機会になる。この「機会」を作り出すためにも、管理車両の入庫促進活動は非常に重要な役割を果たすのだ。

 そこで、多くのディーラーで販売しているのが「メンテナンスパック」と呼ばれる、前払い制の点検数回と消耗部品交換のセット販売。ディーラーで、最も売れているサービスの一つに挙げられる。

 主流は、メンテナンスパックに車検時の整備費用までを含めて販売するというもの。すると、メンテナンスパック加入者は、加入店舗で車検を自然に受けるという流れが出来上がる。

 いっぽうで、販売機会創出のため、利益をあまり生み出さないのもメンテナンスパックの特徴だ。来店時にメンテナンスパック+αの提案を行い、利益を積み上げていく。

 利益率の高さ(原価率の低さ)で言えば、ボディコーティングが最たる例になると思う。契約時のプレゼントや無料サービスに選ばれることが多く、獲得した営業マンに支払われる報酬も比較的多い商品の一つだ。

■コロナ禍、盗難など時代を映し出す売れ筋の商品とは?

コロナ禍で需要が高まったウイルス対策商品。写真はホンダアクセスから発売されているエアクリーンフィルター用抗ウイルス用品「くるますく」
コロナ禍で需要が高まったウイルス対策商品。写真はホンダアクセスから発売されているエアクリーンフィルター用抗ウイルス用品「くるますく」

 コロナ禍で爆発的に売り上げを伸ばしているのが、除菌・消臭系のケミカルと、清掃系のサービスだ。さらに窓を閉め切ってエアコンを作動させることが多くなり、エアコンの脱臭・清掃に対する注目度も高まった。高機能で割高な、高級エアコンフィルターを選ぶユーザーが増え、30分程度で行えるエバポレータークリーニングも、2020年以降に人気が高まった商品の一つだ。

 そして、悲しいことだが、自動車パーツ盗難が増えている昨今、ホイールロックナットやナンバープレートのロックボルトといった、盗難対策用品の人気も高い。

 いっぽうで、クルマ屋さんなのに人気の出ない、以外な商品もある。それはタイヤとドライブレコーダーだ。タイヤの不人気は、一昔前のディーラーでは割高というイメージが、現在も払拭しきれないのが理由だろう。取り扱いのラインナップも少なく、輸入タイヤなどを専門に扱うお店と比べると、価格の面では大きく劣ってしまう。

 しかし、有名メーカーのタイヤに関しては、カー用品店と大差はない。ディーラーのタイヤが高いというのは、過去のイメージに過ぎないはずだ。

 ドライブレコーダーは、取り付けにかかる時間がネックになっている。常に点検整備で一杯になっているディーラーのサービス工場で、ドライブレコーダーを購入当日に取り付けるのは至難の業だ。いっぽう、カー用品店などでは、当日取付をするのが当たり前。一刻も早く取り付けてほしいユーザーも心理を考えると、ドラレコがディーラーでは売れない理由も分かってくる。

 新車の納期が延び続け、売れても納車できないという日々が続く自動車ディーラー。この危機的状況を支えているのが、中古車の販売とサービス部門の売り上げだ。

 今後、新車売り上げに頼る自動車ディーラーは、経営そのものが成立しなくなる。バリューチェーンを意識し、付加価値をどう生かすかが、ディーラーが生き残るカギとなるだろう。

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