カーボンニュートラルを目指す世界的な動きの中で、どんどん姿を消していくスポーツモデル。それでも長いボンネットに2枚ドアを持ったスポーツクーペの魅力が色あせることはない!
今回は日本を代表する貴重な2台のスポーツモデル、日産の新型フェアレディZとトヨタのGRスープラの持つデザインの魅力について掘り下げてみよう!
文/清水草一、写真/ベストカー編集部
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■意外と競合しない!? フェアレディZとGRスープラ
フェアレディZとGRスープラは、今や貴重となった6気筒のスポーツモデル。「今や貴重」というよりも、どちらも「奇跡の復活を遂げた6気筒スポーツモデル」と言ったほうがいいだろう。
フェアレディZはV6ツインターボ、GRスープラは直6ターボ(BMW製)だが、排気量はともに3リッター。ボディサイズは非常に近く、全長はともに4380mm。
最高出力も、Zの405馬力に対して、スープラは387馬力と拮抗している。車両重量はスープラのほうが100kgほど軽いので、動力性能はウルトラ僅差だ。
つまりフェアレディZとGRスープラは、見事なほどガチのライバルなわけだが、我々が抱く漠然としたイメージでは、ライバル感は薄い。「Zとスープラ、どっちにしようかな」という話も聞いたことがない。
まぁZのほうは受注停止で、どっちにしようもなにもないのだが、ともかくこの2台、宿敵のはずなのに、購入層はほとんど被っていない印象だ。
その原因は、主にスタイリングにあるだろう。Zは初代S30を髣髴とさせる復古調で、全体にシンプルなのに対して、スープラは現代的な筋肉モリモリのマッチョ系。こちらもかつてのスープラのモチーフを取り入れているが、筋肉に埋まってしまっていて、どこがそうなのか判別が難しい。
Zのデザインについては、あえて細かく指摘するまでもなく、初代のイメージをモダン化して、現代に蘇らせている。
ベースとなった先代Zのプロポーションを根本から変えることはできなかったが、フロントオーバーハングを伸ばすことでロングノーズ感をぐっと増し、ルーフラインは初代そのままに近いイメージだ。
テールランプなどリヤ周りは4代目のZ32をモチーフにしているが、全体のフォルムがロングノーズ系なので、Z32のキャブフォワードルックとは明らかに異なり、モチーフはあくまで部分的なものにとどまっている。
Zのスタイリングについては、発表当時、「フロントフェイスが単純すぎる」という不満も一部で聞かれたが、復古調であることに関しては、ほぼ全面的に支持されている。
世界的に見ても、スポーツカーのスタイリングはレトロモダンが主流。スポーツカーというカテゴリー自体、絶滅寸前の恐竜に近いこともあって、一種のノルタルジーとなっている。
Zのスタイリングは、初代や2代目をリアルタイムで知る中高年世代にとっては、トム・クルーズ的な古典的なカッコ良さに満ちていて、実にセクシー。若い世代にとっては、そこが逆に新鮮に映る。
■清楚系のZとマッチョ系のスープラ!?
一方のスープラの超マッチョなデザインは、少なくとも日本では、あまりウケてはいない。それほど否定的な意見は聞かないが、「大好き!」という意見も聞かない。
盛り上がりすぎるほど盛り上がった筋肉は、まるでボディビルダーだ。フロントフェイスは、ヘッドライトの造形をはじめとして極めて複雑で、リオのカーニバルの化粧のよう。清楚か、さもなくば直線基調の兵器系を好む日本人の肌には、あまり合わないようだ。
もちろん、好みは人それぞれ千差万別であり、「どっちがセクシーか?」という問いに正解はないが、日本人には清楚系のZのほうが、奥の深いセクシーさがあると感じられるのではないだろうか。
Zのスタイリングは、復古調の王道であり、疑問も抱く余地はないが、スープラのデザインは、なぜあれほどマッチョになったのか?
もともと先代スープラ(80系)もマッチョだったので、それを進化させたということだろうが、海外では、マッチョ系を好む層が日本より多いのも確かだ。
日本では、スープラ人気はそれほどでもないが、販売の中心である北米では、好調に売れている。2022年1月~9月の販売台数を見れば、それがわかる。
●コンパクトスポーツカー部門
1位 ダッジ チャレンジャー 42,094台
2位 フォード マスタング 36,598台
3位 シボレー カマロ 19,177台
4位 トヨタ 86 9,691台
5位 マツダ MX-5ミアータ 4,572台
6位 トヨタ スープラ 3,855台
スープラの姉妹車であるBMW Z4は、1,203台で第10位。スープラの圧勝だ。ちなみにZは、まだ本格的なデリバリーが始まっておらず、わずか80台(12位)。今後大幅に増えることは確実だが、スープラを上回るかどうかは未知数だ。
北米では、ワイルドスピード第1作で主人公の愛車が先代スープラだったこともあり、スープラ人気はかなり高い。
ちなみに日本では、同じく今年1月~9月の販売台数は、GR86が11,336台でトップ。ロードスターが7,797台、スープラは大きく水を開けられ580台にとどまっている。
世界最大のスポーツカー市場は北米だ。スープラは、その北米で売ることを主眼に開発されている。Zもほぼ北米向けに作られているが、北米ではZよりむしろスープラのマッチョなデザインが「Oh! Sexy!」となるのかもしれない。
「セクシー」の定義は人それぞれだが、国によっても大きく異なるということですね。
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