読売新聞が今月11日から3日間、「防衛の視座 提言」と題した連載で、曲がり角に直面する安全保障の打開策を模索してみせた。
「防衛の視座」シリーズは政治部を中心に今年9月から定期的に掲載し続け、敵基地攻撃能力や衰退する防衛産業など、問題点のリポートから開始。10月には自民党の小野寺五典安全保障会長ら有識者インタビューを5日連続で載せた後、今回の11月の連載は「提言」という形で集大成を見せた。
この連載が示した問題認識は保守発の世論形成をリードしてきた読売の面目躍如と言えるもので、反権力で無責任な朝日より「まともさ」は言うまでもない。ただ、良くも悪くも「正統派」のために欠けている視座もある。特に防衛費倍増の財源について、読売は増税路線の地ならしをしている。
「国債より税」で地ならし
NATO基準の目標で、GDP2%にまで防衛費を倍増するなら10兆円。現状からあと5兆円も増やさないとならない。消費税で言えば最低でも2%分のインパクトがある。
11日付の記事では「厳しい現下の経済情勢や物価高に苦しむ国民の暮らしを踏まえれば、まずは無駄な支出の徹底削減や効率化といった財政構造改革の視点を忘れてはならない」とエクスキューズを入れているものの、10月の有識者インタビューの折には、一橋大学の佐藤主光教授(財政学)に言ってもらう形でタイトルもずばり「持続的な財源 国債より税」を掲げている。
「戦うにはカネがいる」のは佐藤氏も言う通りだ。しかし、日本は先進国で類を見ない長期の低成長で、日本人の稼ぎが低落し続けてきた。昭和末期の「余力」がある時代ならまだしも、この30年で可処分所得の落ち込みは目も当てられず、さらに消費税2%分の負担を強いようというのはあまりに国民感覚からずれているのではないか。
それでも本当に増税しか選択肢がないのか。