日本車の納期遅延の影響は未だに大きく、特に人気車は年度内の納車が難しいモデルが多い。その一方で輸入車に関しては状況が異なるようだ。本国での半導体不足は日本より状況が好転していて納期が短いというが……。
文/小林敦志、写真/BMW、メルセデスベンツ、ベストカー編集部
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■納期遅延が当たり前となってしまった日本車……輸入車の状況は?
新型エクストレイルをはじめ、本稿執筆時点ではカローラクロスやハリアーの一部仕様など人気モデルでは新規受注停止中というのも珍しくなくなってきたのが日本車を取り巻く状況だ。
つまり、“納車まで長い期間待つ”のはまだいいほうで、“注文できない”クルマまでが増えてきている。また注文することができたとしても、登場間もない新型車や人気モデルなどでは、納車が2023年を通り越して2024年に入ってからという車種も出始めている。
こうなってくると、深刻な納期遅延や新規受注停止の理由が、単純にサプライチェーンの混乱や半導体不足だけなのかと疑いたくもなる。
供給不足気味な半導体の購買に関して日本メーカーが、諸外国の完成車メーカーに“買い負け”しているとか、最近までロックダウンを連発して暴動まで起きた中国生産の部品が多く、中国の工場稼働の停滞により部品供給が混乱をきたしているなど、さまざまなこともいわれはじめている。
そこで気になるのが、「日本における輸入車も状況は同じなのだろうか?」ということだ。日本国内では断トツで人気の高いドイツ系ブランドをいくつかピックアップして販売現場で様子を探った。
まずはメルセデスベンツ。AクラスもしくはCクラスあたりで検討している旨を伝えて話を聞くと、「両方とも、売れ筋仕様に関しても今月(12月)入荷予定のストックのなかからお選びいただくことが可能ですよ」とのこと。
Gクラスは世界的にも納期がかなり混乱しているものの、クロスオーバーSUVの一部で多少納期がかかることもあるようだが、日本メーカーほど事態は深刻ではないとのこと。
続いてはBMWで話を聞いた。「お選びいただく仕様によって異なりますが、一般的な売れ筋仕様で良ければ、おしなべてすぐにご納車できる車両があります」と説明してくれた。
試しに2シリーズグランクーペについて聞くと、「ボディカラーも結構お選びできるなかで、早期にご納車可能となっております」とのこと。
また、「BMWでは生産を遅延させる部品の含まれる装備で、省いても大きな影響のない装備を省いて生産し供給しておりますので、車両供給スケジュールも大きく乱れることはありません」とも話してくれた。
同じように大きな影響のない装備を減らして、供給遅延の影響を緩和しようとしているのは、メルセデスベンツCクラスでも行われているようである。
さらにVW(フォルクスワーゲン)ディーラーで話を聞くと、「ご希望の仕様がなくとも半年ほどお待ちいただければ、ほぼ間違いなくご納車できます。
ゴルフはウクライナで生産している部品がありまして、一時生産を停めた関係もあり、いまも若干お時間をいただくことはありますが、日本車ほど深刻ではありません。クロスオーバーSUVでしたら、さらに早期納車可能なストック車両に余裕があります」と様子を教えてくれた。
話を聞いた限りでは、日本車の現状に比べればはるかに供給状況は良いように見える。
ジープラングラーなど、生産遅延傾向にありながら人気が極端に高いモデルなどは、輸入車とはいえ納車まで日本車並みかそれ以上待つことになるようだが、各ブランドの普及モデルで仕様やボディカラーにそれほどこだわらなければ、納期をそれほど心配する必要はないようだ。
■遅延しにくい輸入車の販売方法
日本車では、ディーラーがお客さんと注文書を交わしてから、ディーラーがメーカーへ生産を発注する、“受注販売方式”が大原則となっているが、輸入車の場合は日本から欲しい車種のリクエストが出せるぐらいで、どのクルマを船に積むかは各ブランドのヘッドクォーターの判断で決まると聞く。
さらに前述したように、生産を滞らせるような部品で大勢に影響のない装備を除いて完成車生産を行うという流れは欧米ブランドでは珍しくない。その点ではもともと、輸入車のほうが納期遅延になりにくい供給体制になっていたともいえよう。
自分の希望する日本車が新規受注停止や長期の納車待ちとなっていたら、輸入車に目を向けてみるのも一考といえるだろう。ただ、そこで気になるのは価格改定の頻発である。ウクライナ紛争などの影響で、原油価格だけでなく、さまざまな資源の高騰が相次いでいる。
欧州などで生産し、船に乗せて日本まで運んでくる輸入車は、物流コストもハンパではなく高騰している。そのため多くのブランドで車両価格の改定、つまり値上げが目立っている。
少し前に某欧州ブランドで、旧価格で注文書を交わしたのに、納車を待っている間に価格改定があり、新価格での支払いを請求され揉めているという話を聞いたことがある。そのケースでは、注文書の裏などに書いてある細かく書かれた約款に、“契約成立は当該車両の新規登録が完了した時点”と書いてあったそうだ。
世界的に平時ではなく非常事態となっている現状では、車両価格の値上げもやむを得ないことともいえる。前述した問題では、セールスマンが注文書を交わす時に一言値上げについて話していれば揉めることもなかったかもしれない。
いまどきの輸入車ディーラーのセールスマンなら、注文書をもらう時に「納車をお待ちしている間に価格改定があった場合ですが…」と口頭で説明し、トラブル回避をはかるのが一般的と考える。
ただ何も説明がなかった時には、「納車を待っている間に価格が変わると、それは支払いに反映されるのか」といった質問をして“自衛”することをおすすめする。
ある意味非常事態のなか新車を購入するわけだから、起こりうるリスクについては輸入車ではなく日本車を購入する時にもセールスマンとしっかり確認しておくことは是非おすすめしたい。
とはいっても、納車まで時間がかかるどころか、いつになるのかもわからない日本車の購入を決めてジリジリするぐらいならば、いっそのこといままで日本車しか乗ったことがなかった人にとっては、輸入車を購入して乗ってみるいいチャンスともいえるかもしれない。
※文中の納期時期ににつきましては、取材時時点のものとなっています。
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投稿 まさかの年明け納車も?? 国産車とは販売面が違う?? 意外に短い輸入車の納期のナゼ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。