高校バスケ最大の戦い、ウインターカップ。
今年2022年も12月23日(金)~29日(木)に「SoftBank ウインターカップ2022」(令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会)として開催される同大会。
その優勝候補筆頭は、今年の夏のインターハイを制し、“バスケ王国”福岡県の県予選を1位で勝ち上がった福岡第一高校だ。
城戸賢心チームキャプテンと轟琉維ゲームキャプテンが率い、インターハイ決勝で“残り5秒”での劇的な逆転3ポイントを決めた2年生エースの崎濱秀斗選手の活躍も期待される福岡第一だが、中村千颯選手と川端悠稀選手による“ディフェンス”にも大いに注目したい。
◆2人の武器は「忍者ディフェンス」
中村選手と川端選手は、セカンドユニットといわれる、スターティングメンバー5人を除いたベンチプレイヤーの中から選ばれる選手のうちの“2人”。試合の中盤などで投入され大きな役割を果たす。
“2人”とわざわざ括ったのは、この中村選手と川端選手は、必ず“ニコイチ”で試合に出てくるのだ。
身長165cmの中村千颯選手と、162cmの川端悠稀選手。高校バスケ界でもかなり小柄といえる2人の武器は、「忍者ディフェンス」と呼ばれるディフェンスだ。
もともと、「日本一になりたい!第一なら日本一になれるんじゃないか」という強い思いで福岡第一のバスケ部に入部した中村選手。「入学した頃、自分より小さい選手がいてびっくりした」というが、それが川端選手だ。
部員100人を超える強豪校、福岡第一。その中でAチームに残るため、2人は練習中、誰よりも走りに走ったという。そんな一瞬たりとも手を抜かない姿勢と努力が井手口孝コーチの目にとまる。
コーチは彼らをAチームに残し続け、その結果生み出されたのが、2人の体力・走りを最大限に活かすローテーションディフェンス「忍者ディフェンス」だ。
「(出場しているのは)5人なのに、6人も7人もいるように見えるくらい動く」といわれる、この2人のとにかく走り回るディフェンス。
川端選手が守っていたかと思えば、すぐに中村選手がいる。中村選手が目の前にいたと思ったら、川端選手がいる。そうして、相手チームからはまるで“分身の術”に見える。
24秒一瞬たりとも止まることなくコートを走り続けるほどの運動量。それが「6人も7人もいるように見える」を可能にしているというわけだ。
そして、小柄であることを活かして相手の足元にまで入っていき、攻めるようなディフェンス。
通常バスケットボールにおけるディフェンスは、“1アーム”といわれる、腕を伸ばしたぶんで手が届く距離でつくのが理想といわれているが、彼らのディフェンスは“ハーフアーム”、つまり肘から肩ほどの距離でピッタリつくことも特徴。
さらに、2人の息のあったローテーションにより、オフェンス側はあっという間にスティールされてしまう。
ライバル校の選手たちは彼らのディフェンスについて、一様に「本当にあのディフェンスは嫌だ」「ごちゃごちゃくる。しつこい…」と嫌がりながら“絶賛”している。
◆「小さい選手でも、大きい選手たちに対抗できる」
そんな「忍者ディフェンス」を武器にしている2人は、試合中だけでなく、普段からも常に行動をともにしているという。「いつも一緒にいるので、何を考えてるかお互いに目を見ただけでわかります」とまで話す。
そして、中村選手が「自分がボールにプレッシャーをかけて抜かれたとしても、絶対に川端がヘルプにいてくれているという安心感もある。すごく信頼できる存在」と言えば、川端選手は「やっぱりあのディフェンスは、千颯としかできない」と断言。
また、そんな自分たちの武器については次のように話す。
川端選手;「自分は、この自分たちのディフェンスがあるから、ちっちゃいけれど試合に出られていると思う。このディフェンスがなければこんなに試合に出させてもらっていないので、最高の武器だと思います」
中村選手:「自分たちのような小さい選手でも大きい選手たちに対抗できる1番の武器のディフェンスかなって思っています」
近年、高校バスケでも、強豪校の選手たちの身長はプロに引けを取らないほど大きくなってきており、それ自体驚くべきこととも捉えられていないが、そんな状況において輝きを放ち、ウインターカップ優勝候補筆頭の高校を支えている160cm台の選手2人によるディフェンス。
「ウインターカップでは、大きいから有利だと思われがちですけれど、そこを小さくても勝てるっていうのを見てもらえたらなと思います」(川端選手)――。大柄の選手たちにも恐怖を与える、2人の鉄壁のディフェンスに注目だ。
(取材:青木美詠子)