2022年11月17日に発表され、2023年4月21日に発売されるホンダのミドルクラスSUV、新型ZR-Vの公道試乗会が開催されたので試乗してきました!
はたして、群雄割拠のSUV戦国時代のなかにあって、どんなキャラを持ったSUVなのか、忖度なしの正直試乗!
文/ベストカーWeb編集部
写真/平野 学
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■データを見るとデカいが実際に見た印象はわりとコンパクト
試乗車のZR-Vを初めて見た印象は、ボンネットの位置が低く、全高が低くてワイド、全体的にスポーティさを感じます。垂直のバーチカルグリルも個性を主張していてなかなかカッコいい。
北米仕様の横長ハニカムグリルよりも押し出しが強く、SUVらしさは日本仕様のほうが上かも。ルーフラインからリアにかけてはなだらかなルーフラインで、リア周りはワイドトレッドを強調したデザインになっています。
ZR-Vのボディサイズは、全長4570×全幅1840×全高1620mmと、全長4330×全幅1790×全高1580mmのヴェゼルと、全長4605×全幅1855×全高1680mmのCR-Vのちょうど中間のサイズ。サイズ的に一番近いのは、全長4575×全幅1845×全高1690mmのCX-5。
試乗する前に、サイズだけ確認した時に全幅の1840mmが気になりましたが、いざ実車を目の前にすると、想像以上にコンパクトに感じました。
それは最初に試乗した「ZR-V e:HEV」の走り出しの時から感じました。エンジンをかけてスイッチ式シフトをDに入れ、駐車場から走り出すと操舵感もアクセルも軽く、思わず「コンパクトで軽い!」と声を挙げてしまったほどです。
スピードを挙げて低速から中速域に変わってもその印象は変わりません。高速域でレーンチェンジをするために、触り心地のいい艶消しの本革ステアリングを右に切って、アクセルを踏み込んでいくと、エンジンの力で走るエンジンドライブモードになり、エンジンフィールは爽快そのもの。
ZR-Vのe:HEVはシビックe:HEVと同じ新開発の2L直噴エンジン+2モーターの「スポーツe:HEV」を搭載しています。
このスポーツe:HEVは走行用と発電用にモーターを2基搭載しており、「EVドライブモード」、「ハイブリッドドライブモード」、「エンジンドライブモード」が走行シーンに合わせてスムーズに切り替える。
発進や市街地での低速走行は、モーターのみで走る「EVドライブモード」、大きくアクセルを踏み込んだ時や登坂ではエンジンの出力で発電用モーターを回して発電した電力でモーターで走る「ハイブリッドモード」、そして、エンジンの力で走る「エンジンドライブモード」があり、いずれも切り替えがスムーズなことに感心しました。通常走行はエンジンを使わず、走りたいと思った時にエンジンの出番というワケです。
ではヴェゼルe:HEVと比べてどうなの? ということですが、ヴェゼルe:HEVは1.5L(106ps/13.0kgm+モーター131ps/25.8kgm)に対し、ZR-Vのe:HEVは2Lで141ps/18.6kgm+モーター184ps/32.1kgmとかなり違います。街中での常用域での静粛性、アクセルを強く踏んでいった時の加速フィール、高速道路での巡行速度域での静粛性など、2ランク以上の差を感じます。
全幅1840mmもあるミドルクラスSUVという先入観があって試乗したわけですから、驚いたのは無理もありません。
■これは和製マカンだと言ったワケ
走り出してすぐにステアリングの軽さを感じますし、アクセルをひと踏みすると、アクセルを踏んだ足にリニアに対応するレスポンスのよさと、エンジンを最大限回して、それにモーターの力を2割上乗せしたフィーリングです。
しかも大柄なSUVにありがちなコーナーでのフワフワ感=ロールが少ないです。アクセルにリニアに反応する加速フィールは3Lエンジンかと思うほどですし、コーナーでステアリングを切っていくと、トレースしていくこの感じは、ポルシェマカンに近いかも……と思いました。もちろん絶対的な速さやボディ剛性感は違いますが……。
走りをスポーツ優先に振った場合、乗り心地が気になるのですが、ZR-Vの乗り心地は上質です。試乗した川崎の産業道路には路面の悪いところもあり、そんな路面の時はさすがにコツコツ来ますが、胃がまさぐられるほどではなく、許容範囲内でした。
一方、1.5Lターボ(178ps/24.5kgm)のガソリン車のXは、e:HEVの後に乗ると、非力に感じます。アクセルは軽く反応しますが、踏み込んでいくとやや遅い。ステップ変速とされているCVTに関しては、それでも辛口に言わせていただければターボのラグなのか、半テンポほど少し遅いかなと思います。
1L、3気筒ターボのような騒がしさやガサツな回り方はあまり感じなかったですが、それでもちょっと物足りない感があります。受注割合がe:HEV9割は納得です。ただし、1460kgとe:HEV Xに比べ、100kgも軽いので軽快さはこちらほうが上です。
■試乗後にZR-Vの開発者たちにぶつけてみました
では、新型ZR-Vはどのような想いで開発したのか? 読者のみなさんにぜひ、これは言いたい、ということをZR-Vの開発責任者である小野修一さん(本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター開発責任者)に直撃した!
新型ZR-Vのグランドコンセプトは、実用性や最新の先進安全性能を持ったうえで、2つの言葉がキーワードとなっている。
●異彩解放:スポーティなスタイリングと塊感のある力強さを、艶やかに融合したエクステリア。先進感と一体感を感じさせる格上のインテリア
●神経直結:意のままの走りを実現するパワートレインラインナップ。路面に吸いつき一体感のあるダイナミクスと車格を超えた快適性の両立。
この2つのキーワードを踏まえて語っていただこう。
「デザインと走りを融合させ、ホンダらしい神経に直結する、意のままに操る走りに対するこだわりを感じていただければと思います。異彩解放、神経直結に加えて、ZR-Vに乗れば一張羅(勝負服)のように羽織って、しなやかに軽やかに走る、そんなSUVを目指しました。
接地感にこだわり、コーナーでのロールやリバウンドを抑え、ハンドルをスパッと切ったところへスーッとノーズが入っていき、車重の重いSUVにありがちなリアがフワフワしてロールする嫌な感じはないと思います。特に接地感に関しては、スポーツカー好きの方だけでなく、むしろ女性のほうがいいかもしれません。安心感のある走りを感じていただけると思うからです。
接地感がいい=路面をわしづかみにするために、単にボディ剛性は固く方向にもっていくのではなく、しなやかにいなすボディ、シャーシに仕上げています。
e:HEVは和製マカン(ポルシェ)だと言っていただけましたが、ちょっとビックリしました。テスト車にマカンを用意し参考にさせていただきましたので。マカンはボディ剛性が高くスポーツ性に大きく振っていますが、ZR-Vにはホンダらしいハンドリングの軽快さ、しなやかさがあります。
各社さん、ミドルクラスのSUVを出されていますが、ZR-Vは、走りのよさと、デザイン性を融合させた個性を試乗していただいて、感じていただければと思います」。
■こんな人にZR-Vをおススメしたい
メルセデスAMGやマセラティを感じさせるパンチのある顔、ダッシュ力のよさ、キレのあるハンドリング、コットン100%のシャツを羽織ったような人とクルマが一体になる感覚……。ZR-Vはデザインと走りのよさ、これに尽きると思います。
ネガティブポイントかと思われた後席の居住性やラゲッジスペースですが、身長175㎝の担当が、前席で最適なシートポジションに設定しても、後席の頭上空間はこぶし1つ、膝前空間はこぶし2つ入るので「窮屈」とはあまり感じないでしょう。
フルフラットになりますし、車中泊やロードバイク(ハンドルを外し、前輪を外して2台搭載)もイケます。走りのために居住性はそれほど犠牲にはなっていないのです。
背が高く実用性の高いSUVは有り余るほどあります。そんななかにあってZR-Vは、スポーツカーの走りを忘れていない40代以上のクルマ好きの方、そして意外かもしれませんが、安心して運転できるので、オシャレな女性にもいいのではないでしょうか。
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