ケーニグセグは2022年8月、米国で新型スーパーカーのCC850を初公開した。CC850は、ケーニグセグの最初の量産車となるCC8Sの生誕20周年と、創業者であるクリスティアン・フォン・ケーニグセグCEOの50歳の誕生日を祝うモデルとして、世界限定50台を生産する。
CC850のデザインにはCC8Sのモチーフが取り入れられており、そのエクステリアデザインはCC8Sにインスピレーションを得ている。
パワートレーンは5L、V8ツインターボで、最大出力は1185hp、E85燃料使用時には1385hpというとてつもないパワーを発生し、最大トルクは141.2kgmを誇る。同社のモンスターマシンをドライブ経験豊富な武井寛史氏が斬る!
文/武井寛史、写真/ケーニグセグ
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■世界一の速さを追い求めるケーニグセグ
ケーニグセグがまた凄いモデルを発表した。1385psのモンスターマシン「CC850」を限定発売するというのだ。馬力だけみるとEVモデルかと思うほど高出力だが、搭載するのはICE(内燃機)。
ケーニグセグ・オートモティブ社は1994年にスウェーデンで設立された。現在は従業員が約500名在籍している自動車メーカーへと成長を遂げている。ケーニグセグを世界的にメジャーにしたのは2005年。初めて製造したプロトタイプモデル“CC”を熟成させた“CCR”が市販車最高記録を樹立したことが大きい。
F1コンストラクターのマクラーレンが初めて市販化したマクラーレンF1が、9年間保持し続けていた記録を塗り替えたのがスイスの小規模自動車メーカーだったことに世界中から注目が集まった。CCRが叩き出した388km/hはワールドレコードとして正式にギネスに登録。
それ以降、現在に至るまでクルマという分野において最高速と加速競争では必ず名前が挙がり、常に“世界一の速さ”を目指すチャレンジスピリットあふれる孤高の自動車メーカーだ。
■創設者のクリスチャン・フォン・ケーニグセグ生誕50年+同社初の市販車CC8S生誕20年=限定70台!!
今回、デビューするCC850は、ケーニグセグ創設者であるCEOのクリスチャン・フォン・ケーニグセグ生誕50年と同社が初めて市販化した「CC8S」の20周年が重なったことで実現した。
クリスチャンの年齢にちなんで製造台数は50台を予定していたが、すでに完売してしまっている。そこでCC8S生誕20年ということでプラス20台を追加。合計70台をデリバリーすることになった。
CC850のボディデザインは8Sの流れを色濃く投影。ボディサイズは拡大していて全長は174mm延長、全幅が34mm、ホイールベースは40mm広くなった。また、空力性能もさらにブラッシュアップ。250km/h走行時でのトータルダウンフォースは207kg、Cd値0.34、Ci値0.367を実現している。
■EVもビックリの1000psオーバー!!
CC850で特に目を引くがESS(エンゲージ・シフト・システム)だ。3ペダルにもかかわらずAT9速ギアとMT6速が融合。走行するシチュエーションでMTとATが選択できる。ちなみにATモードはクラッチペダルの操作は不要のようだ。
もうひとつ注目すべき点はガソリンとE85燃料の両方が使えるのも新しい。ガソリンでは1185psに留まるが、E85燃料を積むと最高出力1385psを発揮。
ちなみにE85燃料というのはトウモロコシが主原料のエタノール燃料で北米では2012年からインディカーシリーズで採用されている。ガソリンよりも価格が安いので、今北米ではガソリンに代わる燃料として注目されている。
しかし、エタノールは燃えても炎が肉眼で見ることができないから厄介。インディーカーでもメカニックが何かから逃れようと必死にもがく姿を何度となく見たことがある。
炎が見えないから何が起こっているかがわかりづらいのはとても危険。自然由来なので環境にも優しいが火災が起きた際に問題があるのと、燃料に適応したエンジンを搭載している車種がかぎられていることでなかなか普及はしないのが現状だ。
個人的にはCCXとアゲーラRSRをインプレッションした経験を持っている。また、2015年5月23日に鈴鹿サーキットで開催されたアゲーラONE:1の発表会にもお邪魔していて、クリスチャンにもインタビューしているので少なからず縁を感じている。
ケーニグセグに共通していえるのはエンジンパワーが尋常でないこと。アクセルを踏み込めば車体全体が浮遊するような挙動で加速する感覚はケーニグセグ独特の乗り味だ。また、エキゾーストノートとともに力強い加速感はガソリンエンジンならではの魅力でもある。
■EVにいまだ付きまとう不安要素
近年、日本でもEV化の動きを推進しているが、個人的な見解としては時期早々だと考えている。確かにEVの加速感は魅力だ。しかし、環境や電力確保の問題が山積しているのと、世界的に電力時給がひっ迫しているのにEV化を推し進める思考が理解できない。
充電スポットも少なくインフラも整備されていない。現状、ガソリン車やHVと比較すると普及率は1%に満たない。仮にEVが50%以上普及したら電力が足りないのは明白だ。
東京都はこれから新築する家に太陽光パネルを義務化して電力を賄うつもりのようだが、太陽が照っている昼間にしか使えない不安定な電力では不充分。
しかも意外と知られていないが、EVは対応年数が過ぎた際の処分方法がまだ決まっていない。太陽光パネルは有害物質で構成されているから燃やすこともできない。また、EVに搭載されている電池パックも同様でバッテリーに充電できなくなったらただのゴミ。再利用できないから捨てるしかない。
さらに厄介なのがEVで火災が発生した際、水をかけて消火もできない現実もある。その指針もまとまっていないのにEVに補助金をジャブジャブ投入する東京都と国は無責任だ。
EVで遠出したことがある人ならわかるが、途中で急速充電しないと目的地まで行って帰ってくることができない。急速充電といっても30分は待たなくてはいけない。
PAやSAなら時間もつぶせるが、何もないところにある充電スポットだとただひたすら待つしかない。しかも30分受電しても走行できる距離は道路状況によっては充分ではない。
■日本円で約4億7600万円!! しかし日本からの購入希望者も
個人の結論としては「ガソリンエンジンが最高!」。環境問題にうるさいヨーロッパにおいて、ケーニグセグが頑なにICEでパワーを追求しているというのは評価に値する。ガソリンエンジンにはまだまだ可能性が残っていて、エンジンパワーが2000psを超えることも可能だ。
特に日本の技術は高く燃焼効率はとても優れている。また、ICEはリサイクル可能な素材を多く使っているので意外と環境に優しい。やはりEVがICEを超えるのはまだまだ先だ。
ケーニグセグSS850は日本でも5台ほど購入希望者がいるそうだ。価格は35,000,000SKE(スウェーデンクローナ)。日本円で約4億7600万円と価格も含めて超絶スペシャルモデルだ。下世話だが、買った瞬間からプレミアが約束された特別なスーパースポーツカーがEVではなく、ICEだということに安堵した。
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