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 昨年7月に登場したUDトラックスの大型トラック「クオン」の2022年モデルは、主力の11Lエンジン搭載車が2025年度を目標とする新重量車燃費基準にいち早く対応! 燃費を向上させるとともに走行性能を高め、装備の充実も図られたクオン2022年モデルを、多賀まりお氏が試す!

文/多賀まりお
写真/UDトラックス、トラックマガジン「フルロード」編集部
※2022年12月12日「フルロード」第47号より

改良の背景にある新燃費基準とは?

UDトラックスが2022年7月に発表した「クオン」2022年モデル
UDトラックスが2022年7月に発表した「クオン」2022年モデル

 車両総重量3.5トン超のディーゼルトラック・バスを対象とする新重量車燃費基準は2019年3月に施行された。新基準は現行の2015年度燃費基準に対してトラック等で平均13.4%の強化となる。車両総重量20〜25トン級単車の場合、4.04km/Lから4.42km/Lという内容だ。

 審査方法はこれまでと同じで、実際に走らせて燃料消費量を計測するのではなく、重量車の走行モード(都市内走行のJE05モードと車速80km/h定速モードの組み合わせ)をエンジン回転数とトルクに換算。燃費マップ上で走行状態をシミュレートする。

 新基準ではより走行実態を反映させるべく、演算に用いるデータが精緻化され、自動車メーカーにとっては達成の難易度が高まった。とりわけ重量が重く、エンジンの負荷率が高い大型車には、エンジン本体の改良抜きでの対応が厳しい内容となっている。

最大出力と最大トルクがアップしてECO+モードも新設定

 今回発表されたクオンのGH11型エンジンは、基本構造部品を含む抜本的な見直しを行ない、内部フリクション低減とともに燃焼効率の向上が図られた。具体的には、より高い筒内圧に対応するべくシリンダーブロック、ヘッド、クランクシャフトやコンロッドといったエンジンの基幹パーツを強化。これをもとに圧縮比は17から18:1に高められた。

 ユニットインジェクタにコモンレールの蓄圧機能を持たせた独自の燃料噴射系もインジェクタを新世代化し、さらなる噴射圧の高圧化に対応。また、フリクションの低減策では低コンプレッションハイトピストンとピストンリングを採用し、潤滑系も可変油圧オイルポンプを導入。エンジンオイルの低粘度化(10W-30のVDS-4から5W-30のVDS-5へ)も行なった。

 AMT仕様は出力アップとともにフラットトルク化が図られ、現行の最高出力360PSと390PS、最大トルク178.5kgm仕様と、420PS、193kgm仕様はそれぞれ最高出力を10PS高め、最大トルクを203.9kgmにアップ。トラクタ用も増強された(マニュアル仕様は据え置き)。

 また、エンジンの改良に合わせて駆動系も見直され、ギアリングの変更とともにフリクションの低減が図られた。駆動輪に19.5インチ小径タイヤを履くCGとCX系のAMT仕様は、これまでスプリッタのハイ側の減速比が1よりも小さいオーバードライブ型のギアボックスを搭載していたが、新型はハイ側が直結のダイレクトドライブ型に変更された。

 AMT「ESCOT-VI」のハード面に変更の発表はないが、GH11型エンジンの変速制御には、より低回転高トルク型となった出力特性に対応して現行の「ECO」以上に低回転を維持する「ECO+」モードが追加。変速モードはECO+、ECO、オフの3段階になった。

省燃費性能を高めながら走りの「余裕」も向上

試乗車にはUDアクティブステアリングが搭載されていた。低車速域での操舵力の軽さもありがたいが、個人的に一番うれしいのは走行中の直進性に優れ、外乱の影響を受けにくいことだ
試乗車にはUDアクティブステアリングが搭載されていた。低車速域での操舵力の軽さもありがたいが、個人的に一番うれしいのは走行中の直進性に優れ、外乱の影響を受けにくいことだ

 今回の試乗は茨城県下の常磐自動車道を中心に行なった。試乗車は最量販モデルであるCG系4軸低床長尺カーゴの車両総重量25トン車。キャブはハイルーフ仕様で、日本フルハーフ製のドライウイングを架装したメーカー完成車「パーフェクト・クオン」だった。

 パワートレーンは400PSと204kgmを発揮する改良型GH11TB2型エンジンにDD型12段のESCOT-VIと1.950のファイナルギアの組み合わせ。タイヤはオールシーズンの低転がり抵抗タイプ、ブリヂストン「エコピアM801II」を総輪に履く。

 外観に意匠の変更は見られないが、2022年モデルから排出ガス後処理装置の仕様が一本化され、一回りコンパクトなユニットを用いていたCG系などはその他の車型と共用の大きな躯体を搭載。そのぶん車体右側のホイールベース間は床下スペースが狭くなった。このほかにも排気管カバー、燃料タンク、リアバンパーなど、床下機器の変更は多岐にわたる。

 室内は艤装品に変更は見られないが、AMT仕様はECO+モードの追加に伴い、ステアリング左手側スポークにある操作スイッチとメータークラスター中央のディスプレイ表示部が変更された。エンジンを始動すると自動的にECO+モードが選択されるので、他のモードを選ぶためには始動のたびにスイッチを操作する必要がある。おのずと同モードで走行する機会が増えそうだ。

 ECO+モードで走り出し、軽くアクセルを踏み込むと1300rpmぐらいでシフトアップされていく。試乗時の車両総重量は20トンと、まずまずの重さ。アクセルを深く踏み込んでも回転数は1600rpmぐらいまでに抑えられるが、AMTの変速時間が短いこともあって交通の流れに遅れを感じることはない。

 GH11TB2の最高出力は400PS/1600rpmで現行型に対し10PSのアップだが、最大トルクは178kgmから204kgmへと大幅に引き上げられた。ECO+の変速制御は、このトルク特性を活かして、駆動力を確保しながら回転数を低く抑えることで、省燃費性能の向上を狙ったものだ。

 全開加速ではアクセラレーションリミッタも効くのでフルパワーを体感するにはオフモードを選ぶ必要があるが、ECO+のまま部分負荷で走っていても低回転域での粘りやアクセル操作に対する応答性など、現行車よりも豊かなトルクは随所で感じられる。

 最上段の12速に入る車速も現行車より低く(60km/h以下)、高速道路の勾配に対しても現行車より余裕とスムーズさが印象的だった。

●試乗車主要スペック
車両型式:
2RG-CG5FAYWHPA
全長×全幅×全高:11980×2490×3790mm
ホイールベース:7520mm
車両重量:11120kg
最大積載量:13700kg
車両総重量:24930kg
エンジン型式:GH11TB2
排気量:10836cc
最高出力:400PS/1600rpm
最大トルク:204kgm/950〜1350rpm
変速機:ESCOT-VI(AT2612F)12段AMT
最終減速比:1.950
主ブレーキ:空気式・前後ディスク
燃料タンク容量:200+300=500L
タイヤサイズ:245/70R19.5(総輪)

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