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<p>【阪神大震災28年】5割が大阪に集中、「著しく危険な密集市街地」 遅れる解消</p><p>5割が大阪に集中、「著しく危険な密集市街地」 遅れる解消 南海トラフ巨大地震などに備え、対策は急務だ。リスクは阪神大震災だけでなく、100年前の関東大震災から顕在化しているが、複雑な権利関係や合意形成の難しさなどが障壁となっている。</p><p>地震で大規模火災が起きる可能性があり、住民の避難も難しい「著しく危険な密集市街地」の解消が遅れている。政府は令和2年度末までにおおむね解消する計画だったが達成…</p><p>地震で大規模火災が起きる可能性があり、住民の避難も難しい「著しく危険な密集市街地」の解消が遅れている。政府は令和2年度末までにおおむね解消する計画だったが達成できず、目標を12年度末に再設定した。未解消エリアが最も広いのが大阪府。南海トラフ巨大地震などに備え、対策は急務だ。リスクは阪神大震災だけでなく、100年前の関東大震災から顕在化しているが、複雑な権利関係や合意形成の難しさなどが障壁となっている。 こうしたエリアでは建物の老朽化が進んでおり、大規模な地震で次々と倒壊したり、一気に延焼が広がったりする恐れがある。 国土交通省は平成24年、過去の災害を教訓に「著しく危険な密集市街地」が17都府県に計5745ヘクタールあると公表。令和2年度末までに対策をおおむね完了させるとしたが、3年度末時点で12都府県の計1989ヘクタールが残ったままだ。都道府県別では大阪府の982ヘクタールが最大で、うち大阪市が641ヘクタールを占めた。 大阪市によると生野区や阿倍野区など6区に残り、大半は先の大戦で空襲被害を免れ、戦前の街並みが残った地域に広がっている。 市は、狭い道に面した古い木造住宅の解体費用の補助制度を設けるなどして、危険エリアの解消を後押ししてきた。しかし住民の多くが現地に長く居住する高齢者。建て替えや解体を提案しても「住み慣れた家を手放したくない」と難航するケースが珍しくないという。このほか不動産の権利関係が入り組み、住民間の合意形成に時間がかかるパターンもある。 地域ならではの事情もある。220ヘクタールの未解消エリアが残る京都府。特に古くからの町並みが残る京都市では、解体や整備には住民からの反発もある。市は地域の有志に協力を求め、住民間でリスクのある建物を認識・共有してもらい、避難路や防災広場などの確保を要請している。市の担当者は「歴史都市の魅力と地域の安全性の両立を目指している」と話す。 密集市街地の解消が著しいのが東京都だ。平成24年時には1683ヘクタールあったが、令和3年度末に103ヘクタールにまで減少。古い住宅の解体費の助成や、建て替え後の税の減免措置などを柱とした政策が功を奏したとの見方がある。ただ別の自治体関係者は、民間による土地開発が比較的活発な首都特有の事情も影響したとみている。 神戸大学都市安全研究センターの北後(ほくご)明彦名誉教授(防火避難計画)は、具体策として、密集市街地に高齢者が集まるグループホームを建設するほか、利用予定がない土地を自治体が無償で借り受け、公園として活用する代わりに所有者の固定資産税を非課税とする対応を例示。こうした対策で「土地のポテンシャル(潜在能力)を引き出し、地域を火災に強くすることができる。(災害に)対応できる人を増やすことにもなり、地震・火災の危険性も低減できる」と述べた。(土屋宏剛、細田裕也) 特集・連載:</p>