<p>「精神的被害、露はより深刻」 ウクライナ軍の女性中尉証言</p><p>「精神的被害、露はより深刻」 ウクライナ軍の女性中尉証言 ロシアとの戦闘で精神に打撃を受ける前線の兵士が増えているとし、「外来患者を診察するような態度ではなく、共に歩む仲間として寄り添うよう努めている」などと、メンタルケアの実情を語った。</p><p>【キーウ=佐藤貴生】ロシアが侵攻したウクライナで、兵士の精神衛生に携わる軍の女性中尉が産経新聞のオンライン取材に応じた。来月で侵攻から1年となるなか、ロシアと…</p><p>【キーウ=佐藤貴生】ロシアが侵攻したウクライナで、兵士の精神衛生に携わる軍の女性中尉が産経新聞のオンライン取材に応じた。来月で侵攻から1年となるなか、ロシアとの戦闘で精神に打撃を受ける前線の兵士が増えているとし、「外来患者を診察するような態度ではなく、共に歩む仲間として寄り添うよう努めている」などと、メンタルケアの実情を語った。 取材に応じたのはオレーナ・ナゴルナ中尉(52)。大学で心理学を専攻して2017年に入隊し、軍では精神衛生に関する専門教育を受けた。 中尉によると、ロシアが支援する親露派武装勢力が東部ドンバス地域の「独立」を宣言した14年当時のウクライナ軍は25万人の規模で、「前線で戦った兵士の15~20%にPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状がみられた」という。 一方、ウクライナ軍には現在、約70万人が所属し、国境警備隊や憲兵隊を含め総勢百万人が戦争に関与しているとされる。恒常的な戦闘状態にある前線に長期間とどまる兵士も多く、中尉は「精神的問題を抱える兵士は間違いなく増えている」との見方を示した。 中尉によると、精神面の打撃は不眠や食欲減退、不安や混乱、感情の高ぶりなどの症状として表れ、新兵に限らずベテランの軍人が発症することもある。 「前線で爆発音を聞いた後に平静を保っていたとしても、ストレスは蓄積され続けており、前線から解放された後に症状が出るケースがある」とし、上官や衛生兵のほか、前線を巡回して祝福を授ける東方正教会の神父など、「多くの人の目で一人ひとりの兵士の精神状況を見守る体制づくりを心掛けている」という。 「精神の傷は身体の傷と同じだ」という中尉は、症状が深刻化した兵士を前線からデスクワークに異動させることもあるとした。ただ、「定期的に前線から離れて休むようなローテーションは組めない。刻々と情勢が変わるので計画を立てるのは難しい」と述べた。 中尉は、人間の精神が打撃を受ける原因の一つは、個人が「価値観の対立」を抱え込むことだと話した。その上で、「ウクライナは他国に不法に侵攻したわけではない。兵士と市民は正義を実現するために戦っており、大半はそれを理解している」とし、精神的被害の問題が将来のウクライナ社会に影響を及ぼすとは思わないとの考えを示した。 一方で、プーチン露大統領が主導するウクライナ侵攻に、本心では反対でも公に反戦を訴えられないロシアの兵士や市民の精神的な被害は相当なものだとし、大義のない戦争は「将来のロシアの人々の精神、さらには社会に深刻な影響を及ぼす」と予測した。 特集・連載:</p>