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株式会社ターンアラウンド研究所
西村健(代表取締役社長)

ますます「人的資本」の可視化の重要性が高まっています。「人的資本」に関連する情報の開示の中で、KPIを設定し、企業の情報を可視化することが求められ、企業も様々な対応を進めています。

我々も研究会を今月に結成するなど、取組を進めています(詳細はこちら)が、今回から連続してKPI指標を選びつつ、KPI専門家として筆者が考えていきます。

metamorworks /iStock

最近、よく聞かれるのがダイバーシティについてです。ダイバーシティの重要性についてまだ腑に落ちないビジネスパーソンがいらっしゃるようです。

改めてダイバーシティとは何か。人種や性別など外見的な違いから価値観や嗜好など内面的な違いまで、人々の持つ様々な背景の違いのことと定義されます。

さて、ダイバーシティはなぜ必要なのか?
採用のための対象を大きく拡げる等、色々とメリットがありますが、一番は、ダイバーシティはイノベーションを生むことです。

出典:「ダイバーシティはイノベーションを生む」筆者作成

ダイバーシティに富んだ組織は、創造性を生むための条件です。つまり、阿吽の呼吸で物事が進まないですし、一時的に非効率な面もありますが、ダイバーシティ組織はその代わりに、多様なアイデアを生み、やり方についても忌憚なき議論、議論を深めてサービスに新たな改善や付加価値を生みます。

今までのように「欧米に追い付け追い越せ」の高度成長時代、その後の「品質を高くする!価格を安くする!納期で早くする!」といった答えがあった時代が終わった今だからこそ、ダイバーシティの組織が必要になってくるのです。

とっても低い女性活躍指標

日本の女性議員率(女性議員が占める割合)は、13.7%という驚愕の低さが話題になりましたが、スウェーデンの43.7%には遠く及ばず、中国の24.2%、アメリカの19.7%よりも下。なんと世界で160位です。

ビジネス上ではどうでしょうか?
著名な女性社長…と言われても思い浮かばない人は多いでしょう。外部取締役に目立ちはしますが、広報担当部長、人事担当部長はそれなりにいるものの、経営陣には…それが現実です。

諸外国と比較したデータでみると、女性人口に占める女性就業者の割合は51.8%程度で、同程度ではあります。しかし、管理的職業従事者に占める女性の割合は13.3%、上場企業の女性役員の割合は10.7%となっており、圧倒的に低いのです。

女性活躍の意味

男性は男性の良さがありますが、現状だとあまりにも男性中心に偏ってしまっていることも事実でしょう。だからこそ、女性が多様性のかぎになるのです。議論や意思決定のプロセスに女性が増えることで、今までにはない女性の視点を提起したり、男性では気づかなかったことに焦点をあてたり、議論・対話が活性化するのではないかと思うのです。

肩書、立場、権威、権力、人を上か下かでしか見れないという上下関係……そういった企業社会の「権威主義」「男性優先社会」を引きずってしまいがちな企業内風土を少しでも風通しよく、人間の尊厳を尊重しながら、いい「職場環境」を作っていくためには女性の存在が不可欠でしょう。愛情をもって、対等で、人と人を尊重しあえる、そんな存在は組織内に新たな創造性を生み出すのではないでしょうか。

どうしても組織は価値観を共有できる、一緒に仕事をしたい、能力的にもある程度近い感じで、そういった思惑で人を採用しがちです。高度成長時代は特に、組織の和を乱さない、個を抑制して我慢できる、そんな人材像が求められました。しかし、そういった人材構成で新しい商品、画期的なサービスはこの日本社会に生まれたでしょうか?

個人の違いが強みとなる。人的資本経営で問われるのはそういったところなのです。