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これからクルマのハンドルは長方形が流行!? D型があたり前になって丸型の時代は終わりなのか?

 進化していいものと、あまり進化しすぎちゃっても困るんだよなって思ってしまう、クルマのメカニズムや装備ってありませんか?

 オートブレーキホールドやACC、バックカメラなどは、一度使ってしまうと、装備されていないクルマに乗ると装備ロス(喪失感)を感じてしまいます。

 そんななか、ハンドル(ステアリング)は、いつのまにか進化を続け、下部がフラットになったいわゆる、D型や上下がフラットになった長方形のハンドルも出てきました。

 D型ハンドルはまだしも、飛行機の操縦桿のような四角いハンドルで、駐車場やUターンなどで切り増しせずに曲がり切れるのか心配になってしまいます。

 そもそもハンドルは丸形じゃダメなのでしょうか? 不安を解決するべく解説していきましょう。

文/ベストカーWeb編集部
写真/トヨタ、日産、ホンダ、フェラーリ、ベストカーWeb編集部

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■思えば乗り降りの際に膝の引っ掛かりが邪魔だった?

トヨタ bZ4Xも非円形のステアリングを選択できる

 筆者が純正ハンドルからアフターパーツのハンドル、MOMOやイタルボランテ、ナルディに替えていた1980年代から1990年代にかけてステアリング交換が流行した頃は、小径ハンドルはありましたがD型ハンドルはなかったように思います。

 その後、F1やレーシングカー、フェラーリなどのスーパースポーツには、円の下半分や上下をつぶしフラットにしたハンドルが登場してきました。上下をフラットにしたのは、前方の視野をよくし、腿に当たらないようにしたわけですが一般車には採用されませんでした。

 そもそもF1やレーシングカーはステアリングギア比が小さいため、持ち替えることのなくカウンターを当てることができるで、円形である必要もなかったわけです。

 その後、2代目プリウスやラウムの時代には、楕円形のユニバーサルデザインのステアリングが登場しました。

 いまでは、ノートやアリアなど、一般的な車種でも円形の下がフラットになったタイプが採用され、珍しいものではなくなりました。上下がフラットになったタイプはラ・フェラーリやAMG ONEといったスーパースポーツにも装着されています。

■ステアリングの「ギア比」とは?

 そもそもステアリングギア比が大きい、小さいとでは何が変わるのでしょうか? 

 ステアリングギア比が大きいとハンドル操作を軽く行えますが、そのぶん、ハンドルを多く回す必要が出てきます。

 いっぽう、ギア比が小さいとハンドル操作は重くなりますが、そのぶん、少ないハンドル操作で済むことになります。スポーツカーはステアリングギア比が小さいことが多く、クイックで操作に対する応答も素早いので、スポーツカーを運転した後に、ミニバンに乗ると、ダルさを感じます。

 こうしたステアリングギア比が大きい、小さいという設定は、ステアリングとタイヤまでメカニカルでつながって、車種に応じて設定していましたが、「ステア・バイ・ワイヤ」という、ステアリングの動きを電子信号に変えて操舵をコントロールする電子制御システムが登場してから一気に風向きが変わりました。

 簡単に言えば、リサーキュレーティングボールやラックアンドピニオンといった、昭和のクルマ好きなら聞いたことのあるメカニカルなステアリング機構を取っ払って、電動パワステおよびシステム自体を電子制御にしたというわけです。

■ステア・バイ・ワイヤとステアリングの関係

トヨタ bZ4Xのワンモーショングリップ。ステア・バイ・ワイヤシステムとして開発され、電子制御によってギア比が可変する

 では、ステア・バイ・ワイヤと、ハンドルの形と何が関係あるのかって? そうなんです、このシステムを使ったことにより、少々大袈裟になりますが、なんでもできちゃうんです。

 例えば、トヨタが自社初のステア・バイ・ワイヤシステムとして開発した「ワンモーショングリップ」は、まるで航空機の操縦桿を思わせる四角いハンドルを組み合わせた、電子制御のステアリングシステムです。

 なんと、ステアリングの回転角度が約±150度に設定され、ハンドルを持ち替える必要がないんです。だからハンドルを切り増しといった状況にならないので、円形である必要もないんです。

 写真をみるとわかりますが、ハンドルの上部がフラットのため、メーターが見やすく、前方視界が格段によくなっています。当然、下部もフラットなので、腿があたることもなく、乗り降りがしやすい。

 少しハンドルを回しただけで進行方向が大きく変わる設定にできるほか、低速域ではステアリングの切れ角が大きく回頭性が良くなる一方、高速域ではステアリング入力が鈍感になることで直進安定性が向上します。

 電子制御でギア比も変えることができるので、駐車場ではハンドルが軽く大きく切れ、高速道路ではハンドルが重く安定する制御ができるのはもちろん、操舵感などステアリング特性が設定できるという利点もあります。

 このワンモーショングリップは、まずbz4Xの中国市場向けに設定され、そのほかの市場でも順次装着車を設定していく予定とのこと。そのほか、レクサスではBEVのRZ450eをはじめ、BEVのスポーツカー、エレクトリファイドスポーツにも投入される予定です。

 さらに、このステア・バイ・ワイヤと異形ステアリングは、自動運転にも密接に関わっており、ステアリングを格納するといった状況にも対応します。

 こうした長方形のハンドルは未来感たっぷりで、新しもの好きにはたまらないでしょう。そのほか、最近では11月5日に中国で世界初公開した、ホンダのBEV、「e:N」シリーズ第二弾のコンセプトモデル、「e:N2コンセプト」も長方形のハンドルを採用しています。

 2030年~2035年にかけて、純ガソリン車&ディーゼル車の新車販売が禁止となっていくなか、今後、ステア・バイ・ワイヤ技術を組み合わせた、異形ハンドル採用車が増えていくでしょう。

 でも筆者は、あのカーブや交差点を曲がった後のハンドルがスルスルと戻ってくる感じがなくなってしまうのは寂しく感じます。そう思うのは私だけでしょうか。

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