初詣は行かれただろうか。都市部の鉄道終夜運転はめっきり少なくなり、最終で行って年明けを待つというスタイルだろうか。そして神社に初詣と言えば「神宮」だ。押し寄せる参拝客をどのようにしてさばいたのか。三重交通の奮闘ぶりを取材した。エルガデュオやキュービックもフル稼働だったので、それらは画像ギャラリーでご覧いただきたい。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
神宮の深夜・早朝ならそれほど人は多くない
東海地方では屈指の初詣スポットである三重県伊勢市の伊勢神宮。今年は正月三が日で37万5379人が訪れ、2022年より増えたということであったが、その各所を結んでいるのが臨時便を含む路線バスだ。
伊勢志摩地域はもちろん、この時期はマイカーの混雑緩和のためパーク&ライドも実施されている。元日の三重交通の波動輸送をレポートする。
2023年1月1日の午前5時30分。伊勢神宮の外宮最寄り駅である伊勢市駅に到着した。伊勢神宮と言っても1つの神社が存在するわけではなく、伊勢市にある「外宮」「内宮」の ほか別宮など計125社の社宮を総称して「神宮」と呼ぶ。
正式名称は伊勢の地名を冠しない「神宮」であり、他の神宮と区別するために伊勢神宮と通称される。伊勢市駅を出ると大きな鳥居が立っていて、この先を進むと外宮に辿り着く、いわば参道になっている。
その外宮前の交差点横にあるのが外宮前バス停である。普段はバス停が道路沿いにあるのだが、ここから内宮に向かう人が多い。
一般的には外宮から内宮へ参拝するのが順序とされているので、臨時のきっぷ売場や改札、行列を整理するためのスペースが設けられている。この時間帯は夜明け前で、それほど人も多くないが日中はこのスペースがほぼ埋まるくらい参拝客で混雑する。
参拝は外宮から内宮の順に
筆者も先例に従い、先に外宮の参拝を済ませバスに乗車して内宮へと向かう。まず手前にきっぷ売り場があるので、現金で支払する人は窓口へICカードなどで乗車する人は直接改札口の方へ向かう。
なお筆者は今回は三重交通が販売している1日乗車券「伊勢鳥羽みちくさきっぷ」を利用した。伊勢二見鳥羽地区の主要観光エリアを路線バスで何度でも乗り降り自由となっていて、一部観光施設の割引などもある。
さらにこのきっぷはアプリから購入することも可能で、電子決済して画面を提示すれば利用可能となるので、遠方からの来訪でも窓口できっぷを購入する必要なく、すぐに利用できるのも便利だ。
外宮前バス停から乗車すること約10分で内宮前バス停に到着した。なお内宮も通常のバス停とは違い、観光バスを待機させている場所を利用して臨時バスターミナルが設置されている。各方面からやってきたバスの降車と周辺各駅やパーク&ライドの駐車場へ向かうバスの乗降を行っている。
まだ夜明け前で参拝に向かう人が多い一方通行的な時間帯なので乗り場の人はまばらだ。内宮にかかる宇治橋で夜明けの時刻、つまり初日の出を見る人に混じって待つこととした。
路線バス以外にも全国から貸切バスがやってくる内宮
宇治橋の向こう側の神宮の森から朝日が昇った。2023年1月1日の初日の出である。この時期を含め冬至は宇治橋の上から日の出を見ることができる。筆者もこの場所で初日の出を見るのは初めてであったが、何か今年もいい1年を迎えることができそうな気がするのがパワースポットたるゆえんか。
初日の出を満喫したあとは、内宮にやってくるバスを観察する。主に臨時バスとして増発されている外宮と内宮を結ぶバスが多いが、他の場所からやってくる路線もあるのでひっきりなしにやってくる。
しかも伊勢地区にあるバスだけでは到底足りないので、県内各地から応援でやってくるバスを見ることができる。
また路線バス以外にも全国各地から参拝団体客を乗せた貸切バスがやってくるので、非常に様々な塗色のバスを見ることができ、バス好きは飽きることなく眺め続けることができる。
パーク&ライドが結果的にスムーズ?
しばらく内宮前に滞在したあと、年末年始の交通規制の特長であるパーク&ライドの様子を見に行くこととした。伊勢神宮のパーク&ライドは特にマイカーによる参拝客が集中する日に設定されており、2023年は1月1日~4日と8日に実施された。今回は車ではないので近くのバス停から徒歩で向かうこととした。
伊勢市にある三重県営サンアリーナは、通常はイベントやコンサートなどが開催される多目的ホールと、スポーツ施設が屋外に併設された施設である。ここの駐車場をパーク&ライドとして使用する。来場したマイカーはまず入口で駐車整理料として1000円を支払う。
指示された場所に駐車後にバス乗り場に向かい、駐車整理料を支払った際に受け取った領収書を係員に見せて行きたい場所へと向かう流れだ。ちなみ外宮と内宮の2ヶ所の行き先が選択できる。
またパーク&ライド利用者のうち高齢者(75歳以上)や身体が不自由な方にはこのバスと別に「おもいやりシャトル」というバスが用意されており、より安心して目的地へ向かえる体制がとられている。
三重交通専用の貸切道路……ではないのだが?
元日ということで混雑しているのではないかと気になっていたが、乗り場もとてもスムーズで長い行列もなく、またバスの待機場には多くのバスが配置され、途切れることなくバスがやってきた。これだと乗車するまでストレスを感じることなく外宮や内宮へ向かうことができそうだ。
再び内宮近くのエリアに戻りパーク&ライドの様子を観察する。ここは内宮へ向かう経路の途中にある交差点で、近くにはおはらい町や猿田彦神社がある。この交差点から先は規制されていて、許可車両以外は通行禁止だ。
東側には市営駐車場があるのだが、このパーク&ライド実施日はシャトルバスの乗降場となっているため利用することができない。よってさらに横の市営駐車場などに向かう車で例年激しく渋滞する箇所であるが、バスは専用レーンをスムーズに通行していく。
これはどういうことかというと、国道23号線上はシャトルバスの専用レーンが設置されており、シャトルバスは渋滞にかかることなく内宮まで向かうことができる。
ちなみに三重県営サンアリーナから内宮前バス停までは通常は15分くらいの所要だが、筆者が近くにあるバス停から乗車した際は、ほぼ15分で着くことができた。
また専用レーンにはシャトルバスのほか、路線バスやタクシー、緊急車両も通行可能だ。各交差点には係員が立ちバスなどの通過に合わせてカラーコーンを動かして通していたので、誤ってマイカーが入り込む余地はない。
本格的な混雑が始まる!
時間もお昼頃となり明るくなってきてから参拝に訪れる人も多くなってきた。おはらい町なども歩くのが大変なほどで有名なお土産屋には長い列ができていた。朝はまだそれほどではなかった内宮前の臨時バス停にも各駅に戻るため帰りのバスに乗る人の列ができあがっていた。
筆者も帰るため並んでいたが、次々とやってくるバスとその行列を見ながら配車の手配で走り回る係員など見ていて、とてもありがたい気持ちになった。
主に貸切バスタイプのハイデッカー車が中心であるため、やや乗車に時間がかかるが、手際よくカウンターを使い乗車できる人数の把握と次に乗車させるバスをどんどん入線させていくため、それほど待たずにバスに乗ることができた。
自分が乗車する予定のバスは新しいタイプや古いものなどランダムでやってくるため、どんな形式のものになるかは分からないのだが、ここはバスファン的運試しとしてお目当てのバスが来ることを祈りたい。
三重交通の波動輸送はノウハウの蓄積!
以上が元日の伊勢神宮周辺の様子だ。コロナで一時は参拝客も減っていたが、2023年はかなり回復したようだった。当然だが周辺道路の混雑も激しくなり、渋滞の長さや時間もより増す結果となっていた。
伊勢神宮の参拝やおはらい町での買い物、食べ歩きをゆっくりと楽しむためには、より時間を有効に使えるように積極的にパーク&ライドを利用、しての来場をお薦めしたい。そして楽しいお伊勢参りと思い出に残る旅をしていただければ幸いである。
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