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 トラックにはそれぞれ最大積載量が定められており、その積載量を超えて荷物を積むと過積載となります。

 過積載は、制動力の低下や車両のバランスの悪化を招き重大事故の誘因となるし、道路にダメージを与え、環境にもよくありません。

 しかし、ダンプなど最大積載量の何倍も積んで走るトラックがざらに見られた昔に比べれば、だいぶ影を潜めたというものの、それでも過積載がなかなか減らないのはなぜでしょう?

 まずはズルをしても稼ぎを上げたいという理由が思い浮かびますが、荷主から頼まれて断れない、定積では決められたノルマを達成できない、競争が厳しいので過積載をして運賃ダンピングをせざるを得ない、土砂など輸送単価が低い荷物を運んでいるので多く積まないと割に合わないなど、さまざまな理由があると思います。

 だからといって過積載をしてもいいという理由にはなりませんし、実際、過積載が発覚すれば、運転者、事業者のみならず荷主にも処罰が及びます。

 定積を守ることは、運送業界のコンプライアンスを守ること。ここでは、運送業界の公正で健全な商取引きを守る一つの手段であるトラックスケールについて見ていきましょう。

文/フルロード編集部、写真・イラスト/フルロード編集部・鎌長製衡


トラックスケールとは?

東名東京インターでの過積載の取締シーン。広いICでは流入量を絞って、車体の沈んだトラックを目視で判断しトラックスケールによる計量を行なう

 トラックスケール、カンカン、台貫などと呼ばれるトラックの車両重量計は、トラックごと量りに載せて車両の重さやバランス、積載重量などが計測できる装置のこと。

 トラックスケール自体は一般的に馴染みがないかもしれないが、高速道路の出口などで中・大型トラックだけ交通機動隊に呼び止められ脇へ誘導されている場面を目撃したことがある人もいるのではないだろうか。あれはトラックが積載量を守っているかをトラックスケールで計量して、過積載を取り締まっているシーンなのである。

 最近は過積載に起因する重大事故が表面化したことで、罰則が厳しくなり(運転手・雇用主・荷主に罰則がある)、過積載防止対策として運送事業者側がトラックスケールを導入するケースや、海上コンテナヤードでは船舶の過積載防止対策として、海コントラックの計量が義務付けらられるようになっている。

海上コンテナヤードのトラックスケール。トレーラ横転防止のための偏荷重・高重心を測定する三次元重心測定装置付きトラックスケールの施工事例だ(海上コンテナは開封できない)

 いっぽう産業廃棄物などの一つひとつを数えることが困難な積載物の受け入れ施設では、トラックスケールを用いた取引量の計量が古くから行なわれている。

 こうした取引量の管理として導入する施設には、リサイクル・ごみ処理施設、古紙・金属回収業、砂利・砕石業、化学工場などがある。

徐々に進化を遂げてきたトラックスケール

 トラックスケールの種類には埋込型や地上設置型、簡易設置型、ポータブル型があり、基本的な構造は車両が載る計量台、ロードセルと呼ばれる荷重センサー、指示計で構成される。

 トラックが載るため規模は大掛かりで基礎工事が必要になるものもあるが、仕組みは家庭で使われている体重計と同じである。

 現在のトラックスケールのシステムはさまざまな進化を遂げ、トラックの横転防止ための偏荷重計測機能や重心位置解析機能付きのもの、ETCによる車両認識システム、モニター監視による無人計量システムなども登場する。

 また最新システムとしては、トラックスケール最大手の鎌長製衡から、無人計量システムをさらに進化させた「トラックスケールリモート計量管理システム」の提供も始まっている。

トラックスケール最大手メーカーの鎌長製衡のリモート計量管理システムのイメージ。一元化することで人件費削減に貢献

 同システムは、WEBカメラを使用して遠隔で一元管理が行なえるというもので、トラックスケールを設置する施設ごとに必要だったオペレーター人員を削減でき、WEBサーバー用パソコンにアクセスできるどの端末からも遠隔でデータ閲覧・編集を可能にしたものだ。

 今は、商取引の上でもトラックの積載量を厳密に管理しなければいけない時代となり、産業廃棄物業者をはじめ精確なトラックの「体重測定」が必要不可欠になりつつある。

 つまり過積載は時代遅れの過去の遺物。運送業界のコンプライアンスを守り、公正で精確な商取引のため、さまざまな業種でトラックスケールの活用が期待されている。

投稿 過積載を「しない」「させない」ためのクルマの体重計? 地味に進化しているトラックスケールの話自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。