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 FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、FIAをドライバーの個人的な信念を表明する場として使うことは、スポーツから逸脱してしまうためできないと述べている。

 先月、FIAは国際スポーツ法典を改正し、FIAによる事前の承認なしにドライバーが「政治的、宗教的、個人的声明」を表明または掲示することを禁じる条項を追加した。FIAによるこの決定は、数年間にわたりF1において政治や環境に関する活動が行われたことを受けてのことだ。ルイス・ハミルトンやセバスチャン・ベッテルらは、レースデーに社会的不公平や不平等、また、環境変化の問題について非難を表明することがしばしばあった。

ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2020年F1第9戦トスカーナGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2022年F1第11戦オーストリアGP セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)
ベッテルはオーストリアで『SAVE THE BEES』と書かれたTシャツを着用し、ミツバチの保護を訴えた

 FIAは以前の運営体制ではそうした表現の自由を容認していたが、新会長は今後は中立性が優先されるべきであり、ショーのスターであるドライバーは、彼らが一番秀でているドライビングに専念すべきだと考えている。

「私はこのスポーツを心から信じている」とビン・スライエムは今週、サウジアラビアで開催されているダカールラリーを訪れた際にメディアに語った。

「我々は橋を架けることに関心がある。スポーツは平和的な理由などのために使うことができる」

「だが我々が望んでいないことのひとつは、FIAを個人的信念を表明する場とすることだ。我々はスポーツから逸脱してしまうだろう」

「ドライバーが秀でていることは何か? それはドライビングだ。彼らはドライビングに非常に秀でており、ビジネスを生み出し、ショーを作り、スターになる。誰も彼らを止める者はいない」

「彼らが求めていることを表明する場は他にある。誰もがそうした場所を持っているし、FIAの手続きを通して行うことは大歓迎だ」

 ビン・スライエムは、FIAは「スポーツをクリーンにしたいだけだ」と述べ、ドライバーたちを黙らせようとしているのではないと否定した。

「私には個人的な信念があるが、だからといってそれを表明するためにFIAを使うことはない。FIAは中立であるべきだと考えているし、スポーツを作り上げるためにはスーパースターが必要だ。そしてドライバーたちは、我々全員が楽しんでいるレースに関しては、非常に素晴らしい仕事をしている」

2022年F1第2回プレシーズンテスト(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
バーレーンテスト前日、ドライバーが集まって『NO WAR』と書かれたTシャツを着用しバナーを掲げた

 ビン・スライエムは、ドライバーによる国際スポーツ法典の違反は、レースウイーク中の競技上の違反を律する際の明確さとプロセスをもって、スチュワードのレベルで対処されることを明らかにした。

「常に明確さとプロセスがある。何かあれば許可を取ることだ。そうしなかった場合、ドライバーが他のミスをしたら、それはピットレーンでスピード違反をしているようなものだ。そうしたらどうなるかは非常にはっきりしている」

「ペナルティのなかには明確さを追求できないものもある。たとえばトラックリミットに関しての主張は非常に難しいものだ。そのためには、スチュワードが確認して再度調査する必要がある。全権を持っているのはスチュワードであって、FIA会長ではない」