レース用ベース車である911Tの本領を存分に発揮
「世界一のポルシェ911コレクター」として知られるマグナス・ウォーカー氏。そのコレクションは決して、希少性やヒストリーを重視したものではない。あくまで走らせることを重視し、独自の改造を施した車両ばかり。古いポルシェを愛好するマニアたちの間では、むしろ改造はご法度という傾向が強いが、そうした不文律を無視し、あくまで自分流を貫くウォーカー氏のスタンスは、自ら”Urban Outlow”――「都会の無法者」を標榜するほどなのである。
【画像45枚】細部まで再現された”277″と、その制作工程を見る!
そんなウォーカー氏の数十台に及ぶコレクションの中でも、その年来の相棒である1971年型911T、”277”のゼッケンを掲げた車両は代表的な存在であり、ウォーカー氏自身も「最も愛着がある」であると述べている。氏にとっては2番目に購入したポルシェであるとのこと、それ以来様々に改造を施してきたが、あくまでそれはレースへの出場・そこでの走行を眼目としたチューニングだという。レースとはポルシェ・オーナーズクラブ主催のもので、”277″という番号も、そのために交付されたゼッケンなのだそうだ。
また、白地に赤と青の塗り分けは、かつてIMSAなどで活躍したレーシングチーム、ブルモス・レーシングへのオマージュであるという。同チームは1973年のデイトナ24時間において911カレラRSRで出場、ピーター・グレッグとハーレイ・ヘイウッドのドライブにより優勝を飾っている。”277”は、直接的にはこの車両に影響を受けたものと思っても間違いではないかもしれない。現在のような、無数のスリットを設けたエンジンフード(ウィングなし)を装着する前は、大型のリアウィングを取り付けていたりと、その姿はかなりの変遷を辿ってきたという。
さて、この車両のベースとなった911Tとは、912(911のボディに356の4気筒エンジンを搭載)に代わって追加された廉価版モデルで、1967年に発売されている。エンジンは110psにデチューンされたものを搭載していたが、これはただの廉価版ではなく、レース出場のためのベース車両という含みも持たされていた。1968年には911のホイールベースは40mm延長されている(全長は変わらない)ため、911Tにも2種類のホイールベースのモデルが存在することになる。
1971年式の911Tには2.4Lのエンジン(130ps)が搭載されていたが、前述のようにレース用のベース車となれば、そのまま残っている個体は数少ないだろう。実際、ウォーカー氏の車両も購入時のエンジンはすでにオリジナルのままではなかったとのこと。またウォーカー氏も、「ダメになったエンジンはすぐ載せ替える」というポリシーのようなので、”277”のまさに今現在の仕様は不明である。
シャシーはシャフト式に置き換えつつ、ステアは可能に!
さて、ここでご覧いただいているのは、この”277”を1/24スケールのプラモデルで再現した作品だ。前編(下の「関連記事」参照)で述べた通り、フジミ製の73カレラRSをベースに内外装をアレンジして制作。また、73カレラはかつてのエンスージャスト・モデルの一作として生まれたキットであり、エンジンまで細かなパーツ割りでフル再現されたものであるが、その分組み立てにくさも多分に持ち合わせた製品であることは否めない。
そこで、作例ではシャフト式車軸の簡易版シャシー(かつてのリアルスポーツカー・シリーズ版ビッグバンパー911用のもの)に入れ替えている。これにより足周りは組み立てが確実なものとなったが、そのままでは前輪のステアが不可能となってしまう。そのため、作者はステア機構を自作することでこの問題を解決しているが、この点などについては、工作中の写真に添えた解説で詳しく述べているので、よくお読みいただきたい。
投稿 無法者の年来の相棒、唯一無二のポルシェがこれだ!フジミ製プラモ「911カレラRS」を熱く改造する!後編【モデルカーズ】 は CARSMEET WEB に最初に表示されました。