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 2022年WTCR世界ツーリングカー・カップ第7戦を前に、ディフェンディングチャンピオンとしてシーズンを戦いながら「コントロールタイヤに関する安全性の懸念が継続している」として「WTCRプログラムの即時中止」と電撃的な撤退をアナウンスしていたリンク&コー・シアン・レーシングが、WTCR後継として今季2023年より創設されるTCRワールドツアーへの参戦を正式に表明。スウェーデンを拠点とする強豪チームは、ここまでBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)に苦しんできたリンク&コー03 TCRの4台体制で挑むことを明らかにした。

 2022年5月に開催されたドイツ・ニュルブルクリンクでの第2戦に端を発した同問題は、ノルドシュライフェで走行を開始したホンダやリンク&コー陣営を中心に、タイヤの予期せぬパンクや層間剥離のような症状が頻発し、予選までを実施した段階でレース開催自体がキャンセルされる緊急事態となった。

 さらにイタリア・バレルンガで7月23~24日に開催された第6戦では、ふたたび同じ症状が複数のマニュファクチャラーで発生。グリッド上で最多ウエイトを搭載するリンク&コー・シアン・レーシングは「ドライバーの身の安全を守る上で、迅速かつ必要な措置」を求めたが、予選後になっても満足な回答が得られなかったとして同戦からの撤退を決断する事態に発展していた。

 そして、シーズン終盤に振り返って“直接的なWTCR終焉の引き金”になったとも言える8月のフランス、アノー・デュ・ハンで初開催された第7戦を前に、チームマネージャーであるフレデリック・ウォーレンはコメントを発表し、主にタイヤの安全性改善に対する施策の不備を念頭に「進行中の話し合いにより、チームの懸念に対する解決策を見つけることができなかった」として、WTCRでのすべての活動を即座に停止する決定が下されていた。

 その流れを経て、突如として幕を閉じたWTCRに代わり“立ち位置を引き継ぐ”ことになったTCRワールドツアーは、世界中で開催されるTCR認可シリーズの主要イベントを活用したグローバル・チャンピオンシップとなり、さまざまな国や地域のレースが組み込まれる。

2022年のLynk&Co Cyan Racingは、マ・キンファを含む5台体制でWTCRに参戦した
「コントロールタイヤに関する安全性の懸念が継続している」として「WTCRプログラムの即時中止と電撃的な撤退」をアナウンスしていた

■アウディ陣営のコムトゥユーに続く2チーム目

 まだ全戦のカレンダーが確定しているわけではないものの、すでにポルティマオ(ポルトガル)、スパ・フランコルシャン(ベルギー)、ハンガロリンク(ハンガリー)を含むTCRヨーロッパ・シリーズ併催のレースは確定しており、TCRオーストラリアを象徴する“聖地”バサースト、マウント・パノラマでのイベントも予定されている。

 この後、4月下旬のシーズン開幕を迎える前の数カ月以内に、南アメリカとアジアでの開催地が承認される計画となっている。

 そのTCRワールドツアーに向け、アウディ陣営のコムトゥユー・レーシングに続いて参戦計画を正式に発表した2番目のチームとなったリンク&コー・シアン・レーシングだが、前出のウォーレンは「これはツーリングカーレースの最高レベルであり、WTCRと比較して新しいスポーティングレギュレーションと、新しいタイヤがあるため、競争が非常に厳しいものになることは間違いない」との観測を示した。

「我々は2023年以降の新しくエキサイティングなTCRワールドツアーを楽しみにしているし、これまで世界的なツーリングカー・シーンでボルボやリンク&コー、そしてジーリー・グループ・モータースポーツ(吉利汽車グループ)との長期的な成功と協力を継続できることを光栄に思っている」

 その両ブランドで7つのタイトルを獲得したジーリー・グループ・モータースポーツの責任者、アレクサンダー・ムルドゼフスキー・シェドビンは「2018年に始まったチームとリンク&コーの大成功の旅の新たな章を開くべく、TCRワールドツアーに参加する決定において、彼らシアン・レーシングを全面的に支持する」とのエールを贈った。

「リンク&コー・シアン・レーシングがTCRワールドツアーに参加するという決定は、比類のない製品マーケティング・プラットフォームとしてのツーリングカーレースに対し、我々のコミットメントをさらに強調するものだ。その4台体制を担うドライバーも順次発表される見込みだ」

「WTCRと比較して新しい競技規則と、新しいタイヤがあるため、競争が非常に厳しいものになることは間違いない」と、チームマネージャーのフレデリック・ウォーレン
4台体制を担うドライバー陣容も、順次発表される見込みとなっている