見た目の良し悪しを判断する物差しは人それぞれで異なるけれど、誰が見ても「これはイっちゃってるよね~」と思わずにはいられないデザインを採用したクルマは数多存在する。個性的といえば聞こえはいいけれど、ちょっと凝りすぎかも!? そんな5台をここではピックアップしてみた。今回紹介する5台は一部を除いてタマ数はきわめて少ないものの、比較的手が出しやすい価格で購入できるだけに、脱・没個性を計りたいなら購入を検討してみてはいかが?
文/FK、写真/スズキ、トヨタ、日産、ホンダ、三菱自動車、FavCars.com
トヨタのチャレンジングスピリットを感じざるを得ないトヨタ・WiLL Vi
異業種による合同プロジェクトで若者への新しいマーケティング手法を探ったトヨタの社内プロジェクト「ヴァーチャル・ベンチャー・カンパニー(VVC)」が誕生の起源となっているWiLL Vi。第33回東京モーターショーに参考出品車として出展し、若い女性を中心に好評を博したモデルを一部リファインして2000年1月に発売を開始した。
初代ヴィッツのプラットフォームにシンデレラの馬車をイメージした弓なりに反ったベルトラインと後傾したリアウィンドウ、シンプルなパネル面をシャープに組み合わせた造形が個性的すぎるスタイルを創出していることは、写真を見れば一目瞭然。
また、自分の感性やこだわりを大切にした商品選びをするニュージェネレーション層のイメージリーダーとなるクルマを目指すべく、“4ドアパーソナルカプセル”という提案が行われた。4ドアパーソナルカプセルを具体的に説明するならば、愛着感のあるスタイリングと乗る人をリラックスさせる室内空間を徹底追求したもの。
基本性能はヴィッツと同等のクラストップレベルを確保していたことから、“遊びゴコロと本物感”を体現した一台でもあった。2年にも満たなかった販売期間にもかかわらず、極少とはいえ後述するX-90やミニカトッポに比べればタマ数は多く、価格も平均50万円前後と比較的手が出しやすい一台だ。
不細工なのか? それとも個性なのか? 日産・ジュークに対するアナタの評価は?
2010年6月にデビューしたジュークはそれまでにないコンパクトカーの新しいスタイルを提案するべくグローバル市場をターゲットに開発された一台だが、強烈なインパクトを放ったのはタフさと俊敏さを融合したエクステリアデザインにほかならない。
例えば先鋭的な表情を演出する大きな丸型ヘッドランプ、高い位置に配したフロントコンビランプ、筋肉質なボディサイド、リアに向かってスロープするルーフライン、リアピラーに埋め込んだリアドアハンドル、フェアレディZと共通イメージとなるブーメラン型リアコンビランプなどが個性を主張。
これに加え、デュアルインジェクターを量産エンジンとして世界で初めて採用するなど大幅改良した1.5リッターのHR15DEエンジンや副変速機付きの新世代エクストロニックCVT、高剛性サスペンションなどの採用で優れた運動性能と高い走行安定性も高いレベルで両立されていた。
そんなジュークは2020年6月に発売が開始されたキックスと入れ替わるように日本での販売を終了。ジュークは発売後1週間を経過した時点で月販目標の4倍を超える好調な滑り出しを記録した人気モデルだったこともあり、中古車市場ではタマ数豊富で価格も平均80万円前後とお買い得感が強い一台となっている。
方向転換が仇となったホンダ・CR-Xデルソルはいまや希少な人気モデルに!
1992年2月のフルモデルチェンジで車名変更も行われたCR-Xデルソル。
170psの最高出力を発生する1600ccのB16A型VTECエンジンを搭載した最上位グレードのSiRは、スポーティな味付けがなされた新世代の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションや徹底したコンピュータ解析で軽量・高剛性を確保したモノコック製オープンボディとの組み合わせで、爽快感あるしっかりとした走り味を実現した。
とはいえ、CR-Xデルソルの最大の見どころは躍動感あふれる個性的なデザインを目指したエクステリア。クーペとオープンのふたつのボディスタイルを手軽に楽しめるように電動オープンルーフ“トランストップ”とマニュアル式オープンルーフが選べるなど、最新の技術が導入された。
また、オープンスカイ・カフェテラスをキーワードに自由でのびやかな空間づくりを目指したインテリアもゴーグルをイメージしたメーターパネルやスポーティなカラーストライプを配した一体成型のバケットシートなど魅力的な装備が満載だったが……先代が築いた走りのイメージを180°変えてしまったことが仇となって、ブレイクを果たすことなく生産が終了。
しかし、現在の中古車市場ではその個性が人気を博し、平均価格が150万円前後と高値で推移している。
アウトドアブームに沸く今こそ復活希望! 小型SUVの雄、スズキ・X-90
1995年10月に登場したX-90は、スズキが1993年の第30回東京モーターショーに参考出品したコンセプトカーをベースに量産化された小型SUV。
オンロードでは伸びやかに、オフロードでは粘り強く、といったように多彩なシーンでバランスよく使いこなせる1.6リッター直列4気筒SOHC 16バルブエンジンを採用するとともに、オールアルミ製とすることで軽量化も実現。
また、スポーティな操縦感覚が楽しめるFRをベースとしながらも、悪路走破性に有利なトランスファー機構(副変速機)付きの4輪駆動を採用したことにより乗り手の自由を妨げることなく、さまざまなシーンで走りを味わい尽くす歓びも提供した。
それ以上に注目したいのは3BOXボディとオープン2シーターレイアウトや脱着可能なガラスルーフをもつTバールーフ構造など見る楽しさ、乗る楽しさ、運転する楽しさを追求したエクステリア。昔のクルマは個性的だったとはいえ、そのなかでも抜群の存在感を放った。
しかし……個性際立ちまくりの異端児は、それが逆に仇となってセールスが伸び悩み、1998年12月をもって生産が終了。現在の中古車市場における平均価格は80万円前後と決して高くはないものの、タマ数は全国見渡しても一桁台と圧倒的に少ないのが実情だ。
トールワゴン軽自動車のパイオニア!? 早熟だった三菱・ミニカトッポ
1990年1月に排気量が550ccから660ccへ、全長も3.2mから3.3mへ拡大された軽自動車の規格。それに合わせるかのように、三菱からまったく新しいコンセプトのクルマが登場した。それが、1990年3月に登場したトールワゴン軽自動車の先駆けともいえるミニカトッポ。
“DIY感覚あふれるFUN BOX”が開発テーマとなったミニカトッポは、ボンネットタイプならではの運転のしやすさや快適性とワンボックスなみの積載性、さらには運転席側のドアが助手席側より小さい左右非対称ドアを採用した優れた乗降性など、それまでにはなかった使う楽しさを具現化。
広々とした室内には天井に小物が収納可能なオーバーヘッドシェルフを装備するなど、ユニークな装備も充実していた。また、横開きタイプのバックドアの採用でルーフキャリアへの長尺物の搭載や開閉式のガラスハッチで小物の出し入れも容易に。加えて、宅配バン&クールバンなどの商用タイプやお母さんと赤ちゃんのための装備を充実させたマーブルなど、使い勝手を高める特装車も用意された。
1993年9月にはフルモデルチェンジが行われ、軽自動車規格が改正された1998年10月に販売を終了した。中古車市場ではX-90と同様に平均価格は数十万円とお手頃ながらタマ数はきわめて少ない。
今回紹介した5台のなかに、あなたのお眼鏡にかなう1台はあっただろうか? これを機に「他にもあんなクルマやこんなクルマがあったな~」と昔を振り返るもヨシ、本気で購入を検討するもヨシ! 現役時代はデザインに凝りすぎたがゆえにブレイクを果たすことなく車生を終えたものの、逆にそれが奏功して後世まで語り継がれることになった希少なモデルたちに、あらためて乾杯!
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投稿 いなくなったら欲しくなる!? 凝りすぎたデザインのクルマたち は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。